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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
 

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入寮、そして乱闘

 オルダ王国王立騎士団学校『オルバース学園』

 オルダ王国に古くから続く由緒正しき学校で『オルダのヴァルキリア』こと、ミーファス・テッサロッサを始め、今まで数多くの名の知れた騎士や傭兵、冒険者を輩出している名門軍事学校である。


 戦士、魔法、治癒術師、弓の四つの学科があり、毎年各科に三十名、計百二十名がこの学園の門を叩き、座学や実技を最大六年間学んでいく。

 そしてこの学園で成績を残したものには、貴族、平民の身分問わず、国や有力者からお声がかかるという。

 そんな完全実力主義の世界に、シュウゼルは魔法科の最下位の生徒として入学することとなる。

 そして……


「「「調子こいてすんませんでした!」」」」

「よし。」


 シュウゼルは自分の寮部屋を掌握していた。


 ――時は少し遡る


 シュウゼルは学園に到着すると、合格通知と一緒に来ていた入学案内に従い男子寮へと向かっていた。

 寮はそれぞれの学科の中で貴族寮と一般寮で別れており、平民のシュウゼルが入るのは魔法科の一般寮となる。

 案内に同封されていた学園の地図に従って進んでいくと、少し大きめの宿屋と言った三階建ての建物が並ぶ場所が見えてきた。

 地図を見るにこの建物が学生寮らしく、寮の前にはそれぞれの学科のシンボルが描かれており、シュウゼルは魔法科を示す六芒星の描かれた寮へと入っていく。

 寮の中には既に何人か新入生らしき生徒たちが集まっており、掲示板の前で屯ったり、テーブルに座り雑談していたが、シュウゼルが入ってくると一斉に注目する。


 眼帯が珍しいのか、他に理由があるのかわからないが、他の生徒たちはシュウゼルを見て、こそこそと話し始める。

 注目される事に慣れているシュウゼルは特に気にすることなく、掲示板の前に立つ生徒たちの間を通り、貼られてある部屋分けの案内表を見て、自分の名前の書かれた部屋番号を探す。


 どうやら部屋は五人部屋のようで、学年によって一つの階に五部屋ずつ用意されているようだ。

 基本寮が移る高等部までの三年間は部屋が変わることはない。つまり、この部屋で三年間同じメンバーで過ごすことになる。

 なので、同部屋のメンバーとの仲は、今後の学園生活にとって非常に重要である。


 シュウゼルは案内表に書かれた部屋に行くと、自分の名前が書かれた札を確認し、ドアノブに手をかける。初めてとなる集団生活に、シュウゼルは少し緊張しながら部屋の扉を開ける、すると中には既に他四人が揃っており、男子三人が一人の男子を囲み頭を踏みつける構図となっていた。


「……何してんだ?」

「なにって決まってんだろ?この部屋での上下関係を教えてやってんだよ。」


 ――聞いても分からん、なんで部屋で上下関係があるんだ。


 頭を踏んずけてる生徒が当たり前のように答えると、他二人も同調するように笑うが、シュウゼルは顔をしかめる。状況は分からないがとても仲がいいとは思えない。

 一瞬、貴族寮と間違えたかと思ったが、部屋の中を見ると一般寮なのは確かである。


「なんの上下関係だ?」

「そんなもん成績の上下に決まってるだろ?この学園は完全実力主義だからな、だから魔法科成績五位の俺、バダック様が、二十八位のこいつに立場を教えてやってんだよ。」


 バダックと名乗った男子が自慢を兼ねた自己紹介をする、だがそれよりシュウゼルは踏みつけられている男子生徒の方を見る。

 小柄で気弱そうな男子生徒は制服が何故か濡れており、その眼には涙が浮かんでいた。


―― 一日目からこんな状態とは先が思いやられる。


「なんでもいいから、さっさと退いてやれ、ここでこれから三年間過ごすんだ、仲良くするべきだろ?」

「違うな、三年間過ごすから部屋での序列を決めるんだよ。」

「大体お前は何位だよ?」

「ちなみに俺は十二位でこいつは十五位だぜ?」

「知らん。」

「名前は?」

「シュウゼル・クラウス。」


 名前を名乗ると、バダックは学園のしおりの様なものを取り出し何か調べ始めたかと思うと、突如大声で笑い始める。


「ハハハハハ!シュウゼル・クラウスってお前、魔法科最下位じゃねえか!」

「あ、そう、わかったならさっさとどけよ、こっちはまだ荷物も置けてねえんだ。」


 嘲笑する三人への怒りを抑え、シュウゼルがそう言うと、意外にも三人はすんなり道を開ける。

 そしてシュウゼルが一番端のベッドの横に荷物を置こうとすると、突如水が飛んできてシュウゼルの持つ荷物を吹き飛ばす、

 振り返れば男子の一人がウォーターレーザーを放っていた。


「へへへ、どうだ、この制度これが五位の実力だぜ。」

「……何のつもりだ?」

「最下位の分際で、生意気だからな、お前にも立場をわからせてやるよ。」


 そう言うとバダックは呪文を唱え始める。


「おい、こんな狭いとこで魔法使うなんて正気か⁉」

「安心しろ、この建物には防御のには魔法を半減する結界が張られている、俺達程度の魔法じゃ当たったところで部屋も壊れないし大怪我もしないからな。」


 そう言って、バダッグが風の刃を一つ飛ばしてくると、シュウゼルは舌打ちしながら防御魔法で難なく防ぐ。

 そして標的が自分に代わったのだと察すると、シュウゼルの中で何かが切れる音がした。


「へえ、最下位でも防御魔法くらいはできるんだな、じゃあ次は俺が――ブヘっ!」


 バタックに続いて、他二人も魔法に取りかかろうとしたところで、シュウゼルはすかさず魔法を唱える男子の一人に鞄を投げつけると、もう一人の方は距離を詰めて蹴り飛ばす。

 勢いよく吹っ飛んだ二人を見て、バダックが茫然としていた。


「い、いきなり何を……」

「実力主義なんだろ?だったら俺を倒してみろよ。」

「いや、それは魔法の事であって、暴力は、ちょっ、まっ――」


 バタックの制止を無視してシュウゼルはバタックに突っ込むと、そのまま押し倒す。

 そして馬乗りになると、泣いて謝るまで追い打ちをかけ続けた。

 そして、この乱闘騒ぎは、シュウゼルが学園で巻き起こす事件の第一号となった。

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