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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
 

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入学試験②

 

「ふざけるな!どうしてそこの平民風情が合格で、貴族である僕が不合格なんだ!僕はシベル侯爵家の長男ゼシアン・シベルだぞ⁉」


 どうやら騒いでいるのは貴族の受験生で、内容を聞くに自分が不合格だったのに対し、平民の受験生が受かったことに抗議をしている様だ。


 ――オルダにもいるんだな、こう言う奴。


 この国はルインや帝国ほど貴族と平民の差別は激しくない、ただその分レミナス教会の力が強く他種族への風当たりは強くなっている。

 だからと言って、やはり貴族と平民では別世界であることはどの国も一緒であり、こういう人間がいないという事はないらしい。


 騒ぐ受験生を白い眼で見つつ、シュウゼルは関わらない様に他の受験者に混じって二人のやり取りを窺う。

 自分の家の爵位を前に出し抗議する受験生だったが、試験官の男は呆れたように溜息を吐く。


「理由?簡単だ、それは君に実力がないからだ。」


 怒る貴族の受験生に対し試験官の男はキッパリと答える。


「こ、この俺に実力がないだと?」

「ああ、剣捌きは雑で、防御(ガード)も脆い、基本剣術の下級すらまともに扱えてないのにここで何を学ぶんだ?そもそもこの一般試験は主に田舎や平民の中にいる埋もれた才ある子供たちを見つけるのが目的だ、本当に実力のある貴族はあらかじめ家庭教師から推薦状をもらって先に試験を受けているはず、つまり名門貴族でありながらここに受けに来てる君は実力がないと言うことだ。」


 貴族の少年の顔が怒りで滲み今にも飛びかかりそうなとこまで来ている。

 しかし、止まっているのは、我慢しているのではなく単純に戦うのが怖いからだろう。


 ――なるほど、貴族が少ないのはそれが理由か。


 となれば試験場でフローラに会う事はないだろう。

 シュウゼルは少し残念がるも、まだ面と向かって会う心の準備ができていないので少しホッとする。


「こ、この話は父上にも言っておくからな」

「……どうぞご自由に」


 貴族の受験生はそう言い残すと、逃げるようにその場を走り去って行った。


「あの、よかったんですか?」

「君が気にすることじゃない、それに実力もないのに入って後々困るのはあの子だ、それより次が控えてるから君も早くどいてくれ。」

「は、はい。」


 試験官に促されると先ほど合格した受験生はすぐに移動する。


「じゃあ気を取り直して……次、受験番号489番、シュウゼル・クラウス」

「はい。」


 名前を呼ばれるとシュウゼルが試験官の前に出る。


「君がクラウス君か。俺はこの戦士科の試験官を任されているブライスだ、君の武器は剣でいいんだな?」


 ブライスがシュウゼルの腰につけた剣を見て尋ねるとシュウゼルは頷く。


「よし、じゃあ早速始めよう、とりあえず打ち込んで来るといい。」

「では……」


 ブライスが受け身の体勢を取るとシュウゼルが剣を構える。


 ――これは戦いではなくあくまで試験、まずは自分の実力を見せよう。


 そう考えると、シュウゼルは試験官に自分の剣捌きを見せつけるかのように軽く打ち合う。


「お、いいねぇ、アピールの仕方が分かってるじゃないか。じゃあ次、防御はどうかな?」


 シュウゼルの攻撃の意図に気づき満足そうに微笑むと、今度はブライスが反撃してくるが、かなり加減のされた振りで、シュウゼルはそれを難なく剣で弾き返す。


「よしよし、独眼でもちゃんと見えてるな。防御も完璧だ、じゃあ次、最後だ。君の使えるもの全てを使って俺を倒しに来い。」

「……倒すつもりで?」

「ああ、スキルや剣技は勿論の事、他の武器も、あと使えるなら魔法も使ってもいい。」

「そうか、なら……」


 ――せっかくだしあれ使ってみるか、雑魚モンスターには試した事はあったけど、人では親父以外で試したことなかったしな。


 シュウゼルは一度距離をとると、剣を前に出し呪文を唱え始める。

 するとシュウゼルの周囲が赤く光出す、そして剣の刃を先から下に指でなぞっていくと、剣の刃が炎に包まれた。


「魔法剣⁈」

「すげぇ、五代剣術じゃん!」


 試験を見学している受験生からざわつきの声が聞こえるが、シュウゼルは気にすることなく燃え盛る剣をブライスに向ける。


「へえ、その歳で魔法剣を使えるとは、今年の子達は優秀だなぁ。」


 魔法剣を見て嬉しそうに笑うブライス。シュウゼルはブライスに向かって突撃すると、そのまま勢いよく振りかぶって剣を縦に振り下ろした。


「おいおい、そんな攻撃は当たらないぞ?」


 シュウゼルの大振りに顔をしかめながらブライスは簡単に避けると、勢いよく振った剣は地面にめり込む。

 しかしその直後、ブライスの足下の地面から炎が飛び出した。


「何⁉」


 これは土竜拳と魔法剣を組み合わせたシュウゼルのオリジナルの魔法剣で、当然ブライスは初めて見る。

 完全に不意を突かれたブライスは、咄嗟に身体を大きくひねると、炎の直撃をかわしそのまま転倒する。


「いつつ……危ねぇ、後一歩で当たるところだった」


 ブライスが土を払いながらすぐに立ち上がり剣をしまった。


「ハハハ、やるじゃないか。まさかその歳でオリジナルまで編み出すとはな。」


 後一歩遅かったら当たっていたとシュウゼルを誉めるがシュウゼルには聞こえてなかった、今頭の中にあるのは避けられたと言う事実だけ。その原因についてシュウゼルは考え込む。


「気をマナに変えた分、バレやすいか、なら少しマナは増えるが炎よりも速い雷の方が……」

「ハハハ、まだまだ改良するつもりかよ、本当に今年は豊作のようだな。よし、じゃあ試験はここまで、当然合格だが、後日改めて家に通知が届くはずだ。」

「あれ?魔物退治があるって聞いたけど……」


以前ラルクが受けようとしたときは、あったはずだ。

 あれがきっかけで森へ行ったんだから間違えることもないだろう。


「ああ、それなら去年廃止になったよ、合否に関係なく怪我人が多く出るからってね、特にお貴族様の声が大きくてね。これも時代かな。」


そう言うと、ブライスは次の受験生を呼び、試験を進めていく。

予定よりも早く終わったシュウゼルはその後、王都の街並みを一日見て回った後、宿に泊まり、翌日にはクラシアへと帰っていった。


 ……そしてそれから一ヶ月後、ブライスの言う通りシュウゼルの家に学園から通知が届いた。

 

 合格通知書

 受験番号489 シュウゼル・クラウス 

 騎士団学校魔法科入学試験 合格


「……魔法科?」

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