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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
 

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油断①

 街に来てから半年が過ぎ、季節が秋から冬へと移り変わる頃。

 シュウゼルは十度目の誕生日を迎えた。


「……また増えてるな。」


 朝食のブレットを食べながらシュウゼルは自分のステータスを確認して呟く。

 オーマ族のみが使える暗黒魔法は、他の剣術や通常の魔法とは違い、指導や鍛錬で習得するのではなく年を重ねるごとに自然と増えていく。

 今回増えていた魔法は二つ、『デモンズゲート』と『インフェルノランス』という魔法だ。

 一体どういう魔法かは使ってみないとわからないが、暗黒魔法が罪に問われる今の環境では使うのは難しい。

 せめて人が来ることのないでもあれば試せるのだが、今のところそんな場所はない。


 以前いた村よりも倍以上の人口がいるこの街にはあちこちに人の眼がある。

 街の外にある周辺の森などなら確認できそうだが街は防壁に囲まれており、外に出るには十八歳以上の大人の人間が一人、もしくは冒険者登録の済んでいる十二歳以上の人間が二人以上同行する必要がある。

 しかし現在暗黒魔法が使える事を知る大人は父であるアシュレン以外おらず、他の人間には暗黒魔法のことを伝えることもできない、そして事情を説明したところでアシュレンは承諾してくれることはないだろう。


 ――ま、使う機会なんて当分ないだろうし、すぐに確認する必要もないか。


 そもそも今は暗黒魔法を使わずに戦えるように鍛錬しているところだ。

 そして今日もこれからいつもの広場となった空き地で皆と鍛錬の予定が入っている。

 シュウゼルは朝食を食べ終えると、傍に置いてある木剣を腰につけ家の扉へと歩き出す。


「今日も皆と鍛錬してくる。」

「ああ、怪我には気をつけろよ。」

「わかってる。」


 武器の手入れをしているアシュレンに行き先を告げ、いってきますと挨拶をしてシュウゼルは家を出ていく。


「……フッ、歳の割には少し大人びいたところがあると思ったが、やっぱり子供だな。」


 友達と遊びに出かけるシュウゼルの後ろ姿をアシュレンは優しい笑みで見送った。


 ――


 シュウゼルが空き地に着くと、既にいつものメンバーが集まっていた。

 ラルク、セピア、ステイル、ディクソン、コリンズ……そしてフローラ、街に引っ越してきてからシュウゼルが懇意にしているメンバーで、フローラ以外は皆冒険者や騎士を目指しており、シュウゼルはこのメンバーと空き地で鍛錬をするのが日課となっていた。


「お、やっと来たな。」

「これで全員揃ったな、じゃあ早速始めるか。」


 最年長のラルクがその場を仕切り、鍛錬が始まる。

 やることは一対一の決闘方式が基本で、そこから相手の実力に合わせて魔法や剣術縛りや、複数相手などのハンデをつけて戦っていく。

 シュウゼルは魔法に関しては何が起こるのかわからないので通常魔法も含めて使わないようにしており、基本ラルク以外とは剣術か獣拳のどちらか片方で戦い、ラルクの時は剣術と獣拳を使って戦う。


 普段は総当たりで戦うのだがラルクはもうすぐ騎士団試験が控えているため、実力の均衡しているシュウゼルのみと戦うことになっている、

 ちなみにフローラは審判のみで鍛錬には参加しない。


 あれから半年たったことで皆随分と成長していた、学校で剣術と魔法の基礎を学び放課後の空き地で戦いお互いの長所や修正点を指摘し、また実践を繰り返して自分の戦闘スタイルを身に付けていく。

 シュウゼルはこの半年間で使える獣拳を確認し、剣術を一から学びなおした。

 おかげで剣術は初級程度なら使えるようになったが、元々使える獣拳は強力な技を使用すると、自分のステータスが追い付いていないため本来の力を発揮できなかった。

 未だ色んな事に試行錯誤はしているが、一歩一歩成長できている、シュウゼルはそう実感していた。

 そして、今日もいつもの様に夕日が沈みかける頃まで鍛錬に励んだ。


「なあ、悪いんだけど。明日、森に行ってくれないか?」


 鍛錬が終わり一息ついた頃、ラルクが皆に呼び掛ける。


「どうしたの?急に。」

「みんな知ってると思うが、俺は来月騎士団学校の入学試験に受けに行く。だが、試験内容にはモンスターの討伐もあるって話で試験の前に経験を積んでおきたくてな。」

「それはいいけど、大人は誰が来るの?」

「……いや、大人は誰も来ない。」

「え?でも、外に出るには大人が同伴しないと駄目なんじゃ?」


 街のルール上はそうなっていることは、ラルクもそれは知っているはずだ。


「ああ、でも父さんは今遠征に行ってて暫く帰って来ないし、母さんは戦えないから連れていけない。他の大人に事情を話したけど誰もついてきてくれる人がいなかった。」

 ――まあそりゃそうだろうな。


 親の居ぬ間に子供を勝手に危険がある森に連れて行くなんて大人として頷けるわけがない。


「じゃあ、どうするんだよ?」

「だから俺達だけでいくんだ。」

「そんなことできるわけないじゃない、門には常に門兵さんがいるんだから。」

「そこは大丈夫だ、ちゃんと抜け道を見つけておいた。」


 そう言ってラルクはニヤッと笑う。


「大人の許可なしで僕たちだけで外に出るってこと?それってバレたら大変なことになるんじゃ――」

「バレなきゃいいんだよ、それに幸いここら辺のモンスターは低級が多いと聞いている。今の俺達ならそう簡単に負けたりしないだろう。」


 ――まあ確かに実力的に言えば問題ないだろうな


 前世で何度もモンスターと戦ったことのあるシュウゼルから見てもこのメンバーなら低級ならまず負けないだろう。特にフローラがいれば上級にだって負けないかもしれない。


 ――それに今後に役立つかもしれないし、抜け道は知っておいた方がいいかもな。


「俺はいいぜ。」

「私も、いずれは冒険者になるんだから経験を積んでおくのも悪くないしね」


 シュウゼルが賛成すると、それに続いて他の4人も続き最後にはフローラも渋々承諾した。


「皆、ありがとう。じゃあ次に休日の朝この場所に集合な、言っておくけど大人たちには内緒だからな!」


 ラルクはそう告げるとその日はその場で解散することになった。

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