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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
 

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出会い①

「シュウゼル、今帰ったぞー」


 仕事に出ていたアシュレンが、上機嫌な声と共に帰ってきたのは翌日、昼の鐘が鳴る前の事だった。


「ほら、これ土産だ。」


 そう言ってアシュレンはテーブルの上に袋いっぱいに入った何かの肉を置く。


「これは?」

「仕事先で手に入れた、ウォールベアの肉だ。シュウゼルは食べたことなかったな?普通のベアの肉よりも脂がのってて美味いぞ。」


 ――ウォールベア……


 今世では確かに食べたことはないが、前世ではある。

 貴族の料理でも使われている上質な肉で平民ではなかなかありつけない類の肉である。


「ていうか、これを仕事先で手に入れたって……」

「ああ、実は父さん、冒険者業を再開したんだ。」


 アシュレンがそう言ってギルドカードを誇らしげに見せびらかす。


「まあ、でもこの足の事もあるしお前もいるから遠出の依頼はできないし大した依頼は受けられないけどな。今回は他に依頼者がいなかったっていうのもあって討伐の依頼を受けたが、基本は街の周辺での薬草採取みたいな小さな依頼をしていくつもりだ。だから悪いけど、稼ぎはあまり期待するなよ?」

「ふーん、そっか。」


 だが、それも時間の問題だろう、とシュウゼルは察した。

 シュウゼルの考える限り、アシュレンの実力は相当なものだろう。

 アシュレンのステータスを見ようとしても見ることはできない。


 シュウゼルが覚えている相手のステータスを見ることができる魔法、サーチは能力者の実力に見合った相手しか見ることができなく、前世の自分は規格外のレベルで見れないステータスはなかったが、今は見れない相手も多く、アシュレンに限ってはステータスどころか名前や年齢すら見ることができない。それだけ圧倒的な差があるという事だ。


 ――血縁者くらい見せてくれてもいいだろうに。


 とは思うものの見れないものは仕方がない、とにかくアシュレンはそれだけの実力がある。

 今は来たばかりだがそのうち実力も知られ始めれば、他の者が受けられないような依頼が回ってきたりするだろう。そして、お人よしのアシュレンはそれを断れなくなる。


 ――まあ、俺としてはそっちのほうがいいけどな。


 年齢はまだ九歳だが精神年齢は十五歳だ、自分なんかは放っておいて、たくさん稼いでいい生活をさせてほしい。


 ――ていうか、それなら門兵にでもなればいいのに。


 まあ、貴族を嫌い領主仕えたがらない人間も少なくないのでアシュレンにも何か理由があるかもしれない。だがそれは自分が知るところでもないだろうと、シュウゼルは深く考えなかった。


 昼の鐘が鳴った後、二人で昼食を済ませると、午後からアシュレンはギルドに向かい、シュウゼルは木剣を腰につけ昨日見つけた空地へと向かった。


 空き地に着くとシュウゼルは木剣を取り出して構えるとそのまま素振りを始める。

 この町ではオーマ族とばれるのはマズいらしく暗黒魔法は基本使うことができない。

 勿論、いざとなれば使うつもりだが、やはり自分自身魔法以外の武器を持っていたいところだ。

 幸い前世の経験もあってか剣術についての技術や知識は身に付いているのであとはそれを使いこなすための肉体が必要となる。


 シュウゼルは一時間ほど素振りを続けた。


「ハァ、ハァ……あれ?」


 シュウゼルが自分の体の異変に気付き一度手を止める、気が付けばシュウゼルは息を切らし体は全身汗まみれになっていた。

 前世の規格外の身体能力が身に付いていで気づかなかったがどうやら自分の体は既に限界を超えていたようだ。


「ハァ、ハァ、よし、少し休憩するか。」


 シュウゼルがその場で腰を降ろし、軽く息を整える。


「……ふう、しかし、こうやって。剣を振るのは懐かしいな。」


 前世はレベル上げをメインにしていたので剣の練習は殆どしていおらず、こうやって素振りをするのは

 前々世ぶりになる。


 ――と言っても、殆ど覚えていないけどな。


 前世の記憶はわずかに残っているが、前々世となると殆ど記憶がない、それが普通なんだろうけど

 こういう剣を振る動きなどは微かに覚えているのが少し気持ち悪く感じていた。


 それからしばらく休憩した後、シュウゼルは再開するために再び立ち上がる。


「ん?誰かあそこにいるぞ?」


 背すると後から声が聞こえ、ふと振り返る。するとこの空き地に自分と同じくらいの年齢の少年少女がこちらに向かって歩いてきていた。


 向こうはこちらと目が合うとピタリと足を止める。


「お前誰だ?こんなところで何してんの?」

「そんなもん、俺の勝手だろ?」


 その答えに質問した少年はは少しムッとした顔を見せる。


「ここ、私たちの秘密の特訓所なんだけど?」

「あっそう、なら俺に伝えないでちゃんと秘密にしとけよ。」


 顔をしかめた少女に嫌味ったらしく言い返すと、少女の後ろから少しガタイのいい少年が喧嘩腰で入ってくる。


「ここは俺たちの特訓の場だから出て行けって言ってんの!」

「特訓ねえ、お前ら騎士にでも何の?」

「俺は騎士だけどこいつは冒険者、みんな目標のためにここで特訓してるんだ。」

「ふーん。」

「もしかしてお前も?」

「いや、暇つぶしだけど?」

「じゃあいいだろ?場所譲れよ!」


 向こうの言葉にシュウゼルは少し考える、正直譲っても問題ないがただで譲るのはなんか嫌だ。


「そうだ、せっかくなら勝負しようぜ?」

「なに?」

「俺に勝てたら、譲ってやる。どうだ?」


 子供相手に本気出すのは大人げないが、今の自分が魔法無しで同年代だとどのくらい戦えるのかが気になっている。


「でも、君、大分疲れてるんじゃないの?」

「別にお前ら倒すくらいわけもねえよ」

「おもしれえ、なら俺が代表で勝負する。」

「代表なんて別にいい、全員まとめてかかって来いよ」

「随分自信があるようだな、だけど流石に全員まとめては卑怯だからここにいる五人連続で戦うってのはどうだ?」


 ――正直どちらでもいいが騎士を目指してるならそこはこだわるか。


「それでいいぜ。じゃあ来いよ。」


 シュウゼルが手で挑発すると一人目として、一番後ろにいた少年が剣を持って前に出る。


「よし、じゃあ初めは僕だ!」


 そう言って剣を構えるとそれに合わせてシュウゼルも構えた、そしてそれを合図にするかのように少年がシュウゼルに襲い掛かっていった。



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