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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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才能

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 バオスが大きく息を吸い、そして力強い声と共に吐く。

 その動作によりバオスの体は自身の持つ気とネクロロードの魔力の混じったオーラに包まれる。


「せっかく皆が命をかけて手に入れた力だ、最大限に活用させてもらうとしよう。では行くぞ!」


 バオスが地面が潰れるほど強く踏み込むと、一瞬にしてネロとの距離を詰め、拳を振りかぶる。


「剛の型、ヘビィゴング!」


 筋肉が増幅し巨大化した腕でネロに殴りかかる、ネロはそれを腕で防ぐがバオスはそのままラッシュへと持ちこむ。


「ほらほらどうした?普段の其方なら避けられない攻撃ではないだろ。」


 バオスの言う通り、周りから見れば目にも止まらぬバオスの攻撃もネロなら容易く避けることができる。

しかし、今はネロの中にある迷いが判断を鈍らせ受け止めることしかできないでいる。


「それとも我の攻撃は避けるに値しないのか?」

「そ、それは違――」


 避けることより否定する方に意識してしまったネロの隙をバオスは見逃さず、力いっぱい振りかぶった拳が

ネロの顔面を直撃する。


「クッ」


 遥か彼方まで飛ぶ勢いだった体をネロは強引に体勢を整える、しかし前を見るとバオスの姿はない。


――どこに?


 すぐ周囲を見渡すが見当たらない、ネロは上空を見上げる。

 するとバオスは上空に飛び上がっており、ネロに向かって急降下していた。


「鳥の型、鳳凰烈翔!」


 バオスが脚に黒い炎を纏うと空中を蹴り更に加速して落下してくる。

 それはもはや鳥というよりも、流星に近くネロは間一髪避けるも…バオスの落ちた地面には隕石の落ちたような巨大な穴が空いていた。


――クソ、このままじゃダメだ俺も反撃しないと。


 そう思いネロは、落下した反動で少し動きが鈍っているバオスに突っ込み殴りかかるが、その瞬間バオスとの記憶が甦り、拳を振りぬくのを躊躇わせた。


「あっ……」


 躊躇いが出た分それは中途半端な一撃となったが、ネロの実力なら十分強力でバオスは地面を削りながら後方へと飛んでいく。

 吹き飛ぶバオスを見て一瞬ネロの頭にバオスの死がよぎったが、バオスは勢いが止まるとすぐに起き上がる


「フ、フハハハハハ、情けない、情けない一撃よ。悪いがこんな攻撃では我は倒せないぞ?」


 バオスが口から血を吐き息を切らしながら笑う、見栄を張っているのは見ている者からは明らかだが、それ以上にこの攻撃では倒れないというバオスの執念が伝わってくる。

 しかしそんなバオスの意思とは裏腹に肉体は悲鳴を上げ始め、バオスの身体のあちこちから血が噴出するように流れ始める。


「バオス……」

「……フッ、どうやらこの力が紛いの主を拒み始めた様だな、ならばもう出し惜しむ必要はない。この身体が尽きるまで、あらゆる獣拳を使って貴様を討って見せよう。」


 自身から吹き出る血をマジマジと見たあと、バオスが宣言するとネロも身構える。

 バオスはネロから少し距離を取り、手を尖らせて頭の後ろに構える。


「牛の型、牛鬼槍、これは手を牛種の角に見立てて槍の様に突く奥義、手に気を集中させ硬化させる必要がある。」

「え?」


 バオスは技の説明すると狙いを定め、助走をつけネロ目掛けて猛牛の様に突進し、槍の様に手でネロの身体を突く。

 そしてまたすぐ距離を取ると、今度は先ほどより更に腰を低く、手が地面に触れるほどに構える。


「猫の型、夜猫爪。夜の闇に紛れて相手を襲う猫の如く繰り出す暗殺型の獣拳だ、これはゆったりとした動きで相手を惑わし、その場に溶け込むように気配を消す必要がある。」

「まさか、お前……」


 またもや説明をした後、バオスはその技を実践してみせる、それはまるでネロにその技を伝授しているかのようでその後も同じように説明しては技を繰り出す。

 ネロもそれを悟ったのか体で覚えるかのように全て受けていく。


「ハァ、ハァ、そしてこれが我が獣拳最終奥義、獅子の型 獅子爪爪(ししそうそう)!」

「獅子爪爪……」


 次に繰り出される名前にネロが反応する。それはバオスにもらった奥義書の最後尾に書かれていた最終奥義でネロも幾とどなく練習していた技であった。


「これは我の始祖と言われている聖獣、聖獅子の爪を闘気で具現化し全てを切り裂く究極奥義、今までの技とは違うから覚悟せよ。」


 バオスは目を瞑るとゆっくり手を広げる。

 するとバオスを包んでいた全てのオーラが両手に集まり、まるで翼にも見えるほどの巨大で鋭い五本の爪が具現化される。


「こりゃいかん!もっと遠くへ離れるぞ!」


 危険を察知したトルクが、すぐに皆を率いてその場から離れる。

 バオスはそれを横目で確認したあと、ネロの方へ集中する。

 

「喰らえ、獅子爪爪!」


 ネロのいる方向に向かって引っ掻くような動きをする。

 斬撃、もしくは衝撃波でも飛んでくると身構えていたネロだったが、何かが飛んでくることはなかった。


 不発に終わったのだろうか?そう考えたのも束の間

、ネロはすぐに自分の周りの異変に気づく。

何も飛んでこなかった筈の周囲にはバオスが具現化させた爪と同等の大きさの引っ掻き傷が残っており、そして気づけば自分の体にも同様の傷跡を受けていた。


「これが獅子爪爪」


 ――かまいたちの一種か?いや、斬撃は飛んできた様子はなかった。と言うことは、まさか次元を切り裂いたのか?

 実際に受けてみてネロはその技の分析をする。


 自分の渾身の一撃を受けてそんな様子を見せるネロを見て、バオスは少し悔しそうな表情を見せたあと吹っ切った様に高らかに笑った。


「フハハハハハ!っゴホッ、ゴホッ、……さて、次が最後だ、覚悟はいいな?もう一度この技を使い貴様を討つ!」

「……ああ、いいぜ!」


 もはや立っているのが限界であろうバオスが改め布告をするとネロ覚悟を決め頷く。

 バオスが再び目を瞑って手を広げる。

ネロもそれを真似する様に同じ動作を行い始める。


――実物を見てイメージはできた、あとは実践するだけ。


先程の攻撃を思い出しながらネロも手に気を集める。


――この技を使いこなすことが、命を削って技を教えようとしてくれたバオスへせめてもの手向けだ、だけど俺に短期間で使いこなす才能はない、……悔しいけど。


「「行くぞ、獅子爪爪」」


ほぼ同時に二人が同じ動作を繰り出す。

バオスからは先程と同様に引っ掻く動作をするとネロの周囲ごと切り裂く。

そして、その勢いに耐えきれなくなった腕が千切れ前へと吹き飛ぶ。


 ネロの方も同じ様な動きをして見せるが、それはバオスの攻撃とは形が違った。

 バオスの見えない攻撃とは異なりネロの両手に集めていた気は、目に見えるほどの波動弾となり一気に放たれ、そしてバオスへと直撃する。


「これは……⁉︎」


 攻撃を受けたバオスが目を細めながらその威力を実感していく。

 身体が朽ちていくなか、バオスは薄れゆく意識の中でネロに語りかけるように呟いた。


「フハハ、やっぱりそなたには才能がないな。だが、実にそなたらしい……」


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