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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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ネロとバオス

「フハハハ!我が名はバオス!沈められし闇の底から今舞い戻ったぁ!」


 ネクロロードの姿から聞き覚えのある高らかな笑い声が聞こえると、バオスが意識を取り戻したことを宣言する。

 先程の邪悪な雰囲気を壊すような笑い声に、バオスのことを知らないトルクたち四人が呆気を取られている中、ネロは真剣な表情でゆっくりとバオスへと歩み寄る。


「バオス……」

「フハハハハハハハハ!驚いたかネロよ?そう!我こそが獣人族を率いて妖精界へと侵攻してきた新生ガゼル王国の王、バオス・ガゼルよ!フハハハハ!」


 まるで何かを誤魔化すようにバオスはいつも以上に声をあげて笑う。

 そんなバオスをネロは表情を崩さないままただ無言でジッと見つめていた。

 バオスの笑い声は戦闘が止まって静けさが続くこの場に大きく響き渡る。

 そんな状況が続くと、バオスの声は徐々に小さくなり最後には小さなため息へと変わると、バオスも真剣な眼でネロと向き合う。


「……さて、何が聞きたい?」

「聞きたいことは山ほどある。」

「ならば尋ねるがいい、全て答えようぞ。」


 バオスの姿は未だネクロロードのままだが、確かに意識はバオスのものだった。

 ネロはその事を確信すると、遠慮なくバオスを問い詰める。


「いつからだ?」

「いつからとは?」

「この計画に加担したことだ、お前自らこんな計画を一から立てた訳じゃないだろ?。」


 ネロは獣拳を習う際に共にした一ヶ月ではバオスと言う獣人の事を知っていった。

 バオスは強さを求める武人家で、武者修行と獣拳を世界に広める事を目的とした旅をしていた。

 その一方で正義感が強く困っている人がいれば、迷う事なく手を差し伸べる、そんな人柄の人物であった。

 そんなバオスが今回のような妖精界への侵攻の計画を考えるなど、ネロには考えられなかった。


「ふむ、いつからとなればそうだなあ……此奴らが妖精の国へ攻め込もうとした時、獣人族の安息の地を手に入れるために自らの命を悪魔に差し出すという覚悟を聞いたときだ。」

「どうして?どうしてそれにお前が参加する必要があるんだよ!」


 ネロの言葉に怒りがこもる。その声色からは怒りの他に悔しさや悲しさが見え隠れし、それを感じ取ったバオスは少し嬉しそうにする。


「簡単な事だ、それは我が獣王であるからだ。国が滅んだあと、我々ガゼルの民は世界中に散らばった。我の様に旅をするものいれば、人間たちと楽しく暮らしている者もいる。しかし全ての者がそうではない、移住先で差別を受ける者や奴隷として売られる者、割合だけで言えばそのような者達の方が遥かに多い、そんな者達のためにも我らには誰にも踏み入れることができない安住の地が必要なのだ、王族の生き残りである我の意思は国の意思であり、国の意思は国民の意思である、国民や兵士達がガゼルの民として立ち上がった以上、我もまた王子として動かなければならなった。」

「……納得いかねえ。」

「フハハ、其方はそれで()い。」


 怒りに歯軋りを見せるネロにバオスが優しく諭す。


「それに理由はもう一つある、ネロ、それはそなたの存在だ。」

「俺?」


 ネロが自分を指さし確認を取ると、バオスは大きく頷いた。


「うむ、そなた、ヘルン・ミーアと言う獣人族を知っているか?」

「……ああ。」

「やはりな、あ奴は我の忠実な部下であると同時に、我の幼馴染であった、そしてそなたに預けたマーレの兄でもある」

「な⁉」

「ミディールでそなたが妖精といるところを見た時、そなたこそが話に聞いていたヘルンを討った少年だと確信した。そしてヘルンの墓標に誓った、そなたを討つのはヘルンの、そしてそなたの友である我だと。」

「……わからねえよ、なんで、こんな奴の力なんて借りてまでなんで……」


 バオスの言葉を聞くごとにネロの表情は沈んでいく。


「そうだな……、我でも何故こんな話に乗ってしまったのかと思うが、だが答えはきっと簡単な理由だ。純粋に力に頼りたかったんだと思う、ネロの力を目の当たりにして普通では勝てないという思い、欲してしまったのだ、そなたと対等に渡り合える力を……そして、その欲に惑わされた結果がこれなのだろう。」

「……大馬鹿野郎。」

「フハハハハ、全くだな、おかげでギンにも迷惑をかけてしまったようだな。」


 バオスが後ろで控えているギンベルグに目を向ける、身体が黒く変色しているがギンベルグは相変わらずの無表情でネロとバオスのやり取りを見守っている。


「……さあ話はここまでだ、そろそろ最終決戦と行こうではないか!」

「な、おい待て、話はまだ――」


 その瞬間、ネロの言葉を遮るようにバオスがネロに向かって獅子の雄叫びをあげる。

 その勢いに飲まれたネロもすぐさま戦闘態勢に入る。


「これ以上の言葉はそなたを迷わせるだけだ!さあ、行くぞ、ネロ・ティングス・エルドラゴよ!我が名は獣王バオス!ガゼル王国の新たな王にして妖精族を滅ぼし国を築くものなり!さあ、この国を守りたければ我を倒してみせよ!」


 覚悟がまだ決まらないまま、ネロの最終決戦が今始まる。


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