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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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動きだす戦況

2021/3/14

修正しました。


「ネクロ・ロード……」


 その名を聞いた瞬間、三人は息を飲むことすら忘れその場で硬直した。

ただ、それも一瞬ですぐに我に返りそれぞれが口を開く。


「ちょ、ちょっと待て、それはおかしいじゃろ!ネクロロードはワシらが三百年前に倒して完全に消滅したはずじゃ。」

「そうよ、でないと()()()が、報われないわ。」

「詳しくは俺にもわからん、だが奴は死の王と呼ばれていた奴じゃ。やりようによっては復活する可能性など十分にあり得るしもしかしたら同じ類の別の魔物の可能性もありうる、どっちにしろ今こうやって死霊(アンデット)の軍勢が来ているのは事実だ。」

「こういう時にセナスがいてくれれば、色々教えてもらえるんだけど、とりあえずこれはリリアナに連絡しておかないといけないねぇ」


 そう言うと、テトラが近くにいた妖精にこの事実をリリアナに伝言として伝えると、四人は目の前の死霊の軍勢に向け戦闘態勢をとる。


「とりあえずワシ等は目の前の奴等討伐をする、行くぞ!」

「「「おう!」」」


 トルクの号令に伴い四人が一斉に動き出す。


――


「三人共遅いわね、一体なんの話をしてるのかしら?」


 ネロとエレナが母リリアナとどこかへ移動してから十分ほどが経過していた。

 その間エーテルは久々の再会となったフローラと姉妹水入らずで話していたが、状況が状況だけにあまり話が弾むことはなかった。

 特にフローラの方がなにやら落ち着かない様子で、終始話に集中できていなかったようで、それを見かねたエーテルが早々に話を切り上げてしまっていた。


「お母様、無事だといいんですが……」


 不安そうな表情で呟いたフローラのその言葉にエーテルが少し苛立ちを見せる。


「なにそれ?フローラはネロ達がお母様に何かすると思ってるの⁉」

「……ないとは言い切れません」

「あんたねぇ!――」


 仲間二人に疑いの目を向けている妹の言葉にヒートアップするエーテル、しかしちょうどそのタイミングでネロ達が戻ってきた。


「ほら、何もなかったじゃない。全く失礼ね。」


 三人が何事もなく帰ってきたことでエーテルはフローラに呆れた様子を見せた後、三人を出迎える。


「三人共おかえりー……ってどうしたの?」


 エーテルが返ってきた三人の元へ歩み寄ると、特に変わった様子を見せないリリアナに対し、何故かネロとエレナは浮かない顔をみせていた。


「別に何でもありませんよ。それより先程迎撃部隊の兵士から連絡が届きました、どうやら向こうは死霊達を操って進軍をしているようです」

「死霊を?」

「ええ、死のオーラを纏い、意思を持たない死霊たちは妖精の幻術が一切通用しない、まさに我ら妖精族の天敵。そしてその数はおよそ数千、到底我々でどうにかできる相手ではございません。」


 リリアナがネロとエレナを見る。


「という訳でネロさん、そしてエレナさん、私達に力を貸してください。」

「「……」」


 その言葉に対し二人は返答を拒むように黙り込む。

 だがその態度にエーテルが不安な顔を見せ、リリアナがジッとネロに(まなざし)を向け続けると、ネロは何か決意した様に一度目を閉じた後、わかった。という言葉共にゆっくりと頷いた。


「ネロ……」

「有難うございます。ではお二人はここから結界を出てまっすぐ進み、先に向かった他の協力者と合流してください。エーテルとフローラは私と共に来てください、手伝ってもらいたいことがあります。」

「はい!」

「わかりました。」


 エーテルとフローラが返事をしネロ達も頷くとそれぞれがリリアナの指示に従い動き出す。



――


「……」


 味方の最前線が死霊の軍勢で埋め尽くされたのをバオスはただ、無言で眺めていた。

 死霊の中に獣人族が混じるその光景は極めて異質で、その意思は自分達の下を離れており、最早ガゼルの誇りというものは到底感じられなかった。

 これに対してバオスは何も思わない事はなかったが、この事に対して何か言うこともない。


 この魔物たちは参謀メビウスが自分の持つ魔法を駆使して契約した、死の王と呼ばれるネクロロードという古のモンスターの力を借りて召喚したモンスターである。


 山羊の獣人族であるメビウスが使える禁忌の魔法『悪魔召喚』は生贄を捧げることによって、悪魔と契約を交わせると言うもので、メビウスはあらかじめ用意していた人間の奴隷を生贄に捧げネクロロードを呼び出し、そして自らの命と引き換えに契約を行なっていた。


 ――自らの民を思い、誇りを捨て禁忌に触れた仲間を誰が責められようか。


 そう何度も自分に言い聞かせようとするが目の前の他の者たちを見て、割り切れずにいた。

 

「戦況はドんな感じダ?」


――ノートン……


「ドウやら妖精族のきょうりょくシャと思われル者達ガ迎撃してるようで思ったヨリススメテイナイナ」


――ガビス……


「そのナカにミーアノヤツをヤッタ人間がいるかもな。」


――ライガー……


 情緒不安定な話し方をする配下にバオスの拳が震える。

 三人はネクロロードから力を受けた事により強力な力を得ていた。しかしそれと引き換えに精神は汚染され始め肉体にもそれぞれ影響が出始めていた。

 そしておそらく彼らは元の姿にもう戻ることないだろう。


 本当ならバオスも同じようになる予定だったが、この三人とギンベルグの説得によりバオスは三人とこの軍勢がやられた後という事になっていた。


「王、そろそろ号令を。」

「……うむ」


 側に控えるギンベルクに号令をせがまれると、バオスは既に意識がなくなりつつある三人の配下に向けて号令をかける。


 「ガビス、ライガー、ノートン我の誇りである忠実な配下であり、友人である三人の戦士達よ!我ら獣人族の安息の地を手に入れるため、手に入れた力を存分に奮い、目の前の敵を殲滅してまいれ!」

「ハッ!全ては王の心のままに!」


 バオスの号令に、意識がなくなりつつあった三人がハッキリとした言葉で応えると、その言葉にバオスは肩を震わせていた。


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