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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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トリンドルの森

 ピエトロが帝国へと戻ってから二日が経ち、ネロ達も次なる目的地であるトリンドルの森へ行くため、森があるというルイン王国へと船を出発させた。

 旅の準備は昨日のうちに済ませており、準備を万端にして旅立ったネロとエレナだったが、今の二人の格好にエーテルは眉を顰めていた。


 ネロ達の格好は、今まで旅をしてきた時の軽装とは違い、まるで王族のパーティーにでも行くのかと思えるほど煌びやかな格好をしていた。

 自分達が貴族であることをアピールするようで旅に似つかわない服装だが、これこそが今から向かうルイン王国に入るのに最も適した格好なのである。


 ルイン王国は平民と貴族の格差社会が激しく、平民を中心として作られた反乱軍と長年に渡り、争いをしている。

 現在は互いに牽制する形で少し落ち着きつつあるが、それでも内乱中なことに変わりはなく、王国側は他国からの入国は貴族限定としていた。


 そんな事情を船の上でエレナに聞かされたエーテルはなんとも不愉快そうな表情を見せる。


「まあ、文化は国それぞれだしね。」


 と、エレナがフォローを入れるが、エーテルはあまり納得をしていない様子だ。


「元々はここまで酷くはなかったんだけど、やっぱ変わったのは十年近く前からかな。」


 そんな二人の会話を聞いていた男が横から話に割って入ってくる。


 数年前にルイン王国からミディールに亡命してきた平民の男で、王国にいた頃はモールズ領内の町で暮らしており、今回のトリンドルの森までの案内役を引き受けた人物である。


 男の言葉にエーテルとエレナは、すぐに以前聞いた話を思い出していた。


「十年くらい前って確か……」

「ブランさんが追い出された時ね。」

「と言うことは、やっぱりあいつが原因ね、前に話に出てきた貴族、小さき暴君のカイン・ホームズ!」

「カイル・モールズね。」

 

 勢いよくいい間違えをしたエーテルのに出した名前をエレナが苦笑しながら訂正する。


「ハハハ、まあ、間違ってもいないが、その頃にはカイル・モールズはすでに死んでいて、実際はその部下だった者が原因だな。」

「確か、双子の兄妹で、今は互いに王国の将軍と大臣を務めているベルモンド兄妹でしたっけ?」


 エレナが思い出しながら呟くように答えると、案内人の男は今度はハッキリと肯定する。


「ああ、若いのによく知っているね。」

「前に一度そんな話を聞いたことがあったので。」

「それでも、よく覚えていたわね?」


 話を聞いたのはブランが自分の過去を話したときの一度だけ、そんな数ヶ月前の話をすらすらと答えたエレナにエーテルが感心するが、それに罪悪感を感じたのか、エレナはすぐに白状する。


「あはは、実は言うと私、一度旅立つ前にルイン王国について一度調べてみたの。」


 調べられたのは世間的にも知られているような有名な話だけだったが、それでもカイル・モールズの腹心としてベルモンド兄妹の事は有名で、王国の事を調べれば調べるほど二人の事も知っていくようになっていった。


「へぇー流石ねぇ……他には何かわかったの?」

「うーん、めぼしい事は特に。」

「そっか……」

「まあ、ルイン王国がどう言う国なのかは直接自分の目で見てくるといい。」

「はい!」

「……ねえ、ところでさ、ネロはどうしたのかしら?」


 話に区切りがついたところで、エーテルの興味は島を出発して以降口数の少ないネロへと変わる。


――


 エレナ達がそんな話をしている中、ネロは一人考え事をしていた。

 ルイン王国はネロの前世、カイルの国であり、なんの因果か目的地であるトリンドルの森がある場所もカイルの実家の所有する土地であったモールズ領にあるということだ。


 モールズ領は広く、当時屋敷から出ることの少なかったネロ、もといカイルは自分の屋敷の周囲以外はあまり知ってはいなかった。

 なので場所を聞いた際には酷く驚いていた。

 転生してから初めて訪れる前世の場所にネロの頭にはいろんな思考が巡っていた。


――……そういえば、あの糞親父たちは元気でやっているのだろうか?


 かつては犬猿の仲であった実の父と義理の母親の事を思い出す。

 本人達も、決していい人間ではなかったが時間が経ちすぎたせいか今ではもしかしたら自分にも否があったのではないかと考えるようになっていた。


 ただ、今更考えたところでもう自分はカイルではないため、会う機会もないだろうと考えると、ネロは二人について考えるのをやめ、ただこれから向かう場所の方向を見つめていた。


――


 それから五日間の船旅を続けた後、ネロ達はミディールから最寄りの港へ到着すると、ルイン王国へと足を踏み入れる。


「ここが、ルイン王国……」


 港に降りたエレナ達は辺りの様子をキョロキョロしながら伺う。

 話に聞いていた平民差別とかはないか確認するが、幸いこの港には貴族らしい人間はいなかった。


「ここは今は反乱軍の領土だからね。」


 エレナ達動きの意図を察した案内人の男が補足を入れる。


「え?そんな場所でこんな格好をして大丈夫なの?」


 エーテルが貴族の格好をしている二人の心配する。

 しかし、案内役の男は小さく首を振った。


「大丈夫だよ、反乱軍側はそう言う差別はしないし、そもそも反乱軍の中にも貴族はいるからね。」


 その言葉に少女二人は少し安堵を見せる。


「で、ここから、トリンドルの森はどうやっていくんだ?」

「馬車に乗って町を経由しながら早数日といったところかな、馬車に関しては町の商人に言えば貸してもらえるよ。」


 そう告げた男に商人の元へ案内されると、ネロ達は早速馬車を借りてすぐに出発した。


 ネロ達は途中訪れた町で、国の現状について話を聞いていく。

 話の中には、テトラで出会ったオゼットや、かつて兄のように慕っていたロイドの活躍も耳にすることができてネロは時に顔を綻ばせることもあった。

 そして、最近の出来事について聞いた時は、思わず声を上げた。


「モールズ卿が死んだ⁉︎」


 それは前世の実父であるレイン・モールズの死についてだった。


「ああ、モールズ領内での内戦時に家族揃って戦死したと言う話だけど、ただそれに関しては少し妙なところもあるんだけどね。」

「妙なところですか?」


 エレナが尋ねると、話をしてくれている滞在中の宿の女主人が頷く。


「ああ、なにせその件に関してリーダーのロイドさんは勿論のこと、反乱軍幹部の方達も誰も身に覚えがないって話だからね。」

「それはどう言うことですか?」

「さあてねぇ、私にはさっぱり。ただ、それでモールズ領の大半がこっち側に私としてはなんでもいいんだけどね。」


 女主人はそう言って興味なさそうに言うと、カウンターの奥へと戻っていった……


――


 そこから更に日にちが経ち、いよいよトリンドルの森が近づいてくると、ネロはとある事に気づく。


――あれ?ここ……見覚えがある。


 ネロが窓に映る光景を見ながら内心で呟く。

 そこはかつて自分が騎士団学校へ向かう際に毎回見ていた馬車からの光景と一緒だった。

 

――じゃあ、もしかしてトレンドの森って……


――


「さあついたぞ。ここが、トレンドルの森だ。」


 三日間のの馬車の旅が終わり、ネロ達はとうとう目的地へと到着した。


――ここが、トレンドルの森……


 ネロは森の入り口を茫然と見つめる。

 そこは初めてなんかではなく、名前がある事を知らなかっただけで、カイルだった頃によく通っていた森だった。

 

 今いる森の入り口とは反対側の方には恐らくモールズの屋敷が近くにあり、以前はそちら側から入っていた。

 元は覚えた技を試すためにモンスター目当てで入った森だったが、この森にはモンスターどころか動物一匹住んでおらず、そのため木を相手に試し切りをする鍛練の場となっていた。

 

 ……ただ、通っていた理由は鍛錬だけではなく、時にベルモンド兄妹と一緒に遊んでいた、三人の思い出の場所でもある。


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