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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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ゲルマ

ダルタリアンの街通りから少し離れた場所にある巨大な屋敷の一室。


 その部屋は城を意識したのか、玉座の間のような配置をした部屋であった。

 部屋の中心に高価な椅子が置かれ、床には紅色の絨毯がその椅子から部屋の扉まで敷かれており、後ろ側の壁際には大量の金貨が入った袋が山積みにされていた。


 そしてそんな部屋で一人、椅子に座りながらボイスカードを手に取り会話をしている男がいた。


 王が着るような赤いガウンを着、手には五本の指に別々の宝石の指輪を付け、ダイヤモンドで出来た歯を付け輝かせている小太りの初老の男。


 オープス・ゲルマ

 帝国二大貴族の一人であり、この街の領主のでもある男だ。


「例の計画は順調か?」


 ゲルマが、カードを通して相手に尋ねる。

 すると、カードからは枯れているような低い男の声が返ってくる。


『ああ、必要なアイテムはすべて揃った。』


 会話の相手はゲルマと同じく帝国二大貴族ブルーノ公爵家当主、レゴール・ブルーノ。

 ゲルマはレゴールの返答を聞くと薄っすらとした不気味な笑みを浮かべる。


「という事は――」

『ああ、封印場所を見つけ次第、バルオルグスを復活させる。』


 レゴールの言葉にゲルマが不気味笑みを浮かべたまま、フヒヒと声を出して笑う、今、ゲルマの手元にはアルカナと王者の牙、そして賢者の石があり、ブルーノの元には白竜の卵と竜神王の心臓があった。


『しかしながら、よくすべての素材を揃えられたものだ。』

「なあに、金と力と権力を持つ我らが組めば、世の中の大抵の物は手に入るものだ、そなたのおかげで大量のアルカナも手に入ったからな。」


 ゲルマは手を上に掲げると、付けている指輪の一つであるアルカナの指輪をシャンデリアの光に照らし輝かせる。

元々は小さな小粒程度だったアルカナはホーセントドラゴンに食べさせたことで、その特性によってドラゴンと一体となり巨大な鉱石へと変化した。

竜一頭分の大きさとなったアルカナは、大半を帝国に売りつけてもまだそれなりの量が残っていた。


『フッ、と言うことはホーセントドラゴンのアルカナ化には無事成功したことになるな、今後、これでアルカナの量産が可能となる。……しかしこちらのキメラで倒そうと思っていたアルカナのホーセントドラゴンを倒した奴がいるとはな。』


 その話題がくると、ゲルマは少し不機嫌になる、その件に関してはゲルマもオルグスの担当をしていたバルボスに聞いてみたが、通りすがりの旅人が退治をしたという話のみで詳細を知らず、また、町の奴らに聞いてくるよう命令するも何故か頑なに拒み、結局か聞き出すことはできなかった。


「まあ良いではないか、いずれにせよバルオルグスが手に入れば関係ない事だ。」

『……それもそうだな、それより一つ聞きたいのだが、王者の牙はどうやって手に入れたのだ?』

「ん?ああ、理由は知らんが、王者の牙を探しにタイタン大陸に兵を送り込んだ際に、獣人族の輩が取引を持ちかけてきてな、千体の奴隷と交換をしたのだよ。奴隷の千体や二千体、渡したところで痛くも痒くもないからな。」


レゴールの唐突な質問にゲルマは疑問を感じながらも答えると、カードのからはフム、と何か納得した声が聞こえてきた。


『貴公もか……こちらも一匹の獣人族から、龍神王の心臓を、実験体として捕まえていた妖精との交換の条件で手に入れた。妖精は少し惜しかったがバルオルグスが復活できればどうとでもなるからな。』

「なるほど、獣風情の亜人達も何やら企んでいるようだな。」


 二人は獣人族の動きに、警戒をしつつも、自分達の計画に害なすものではないと判断すると、その話題をそこで終える。

そして、ゲルマがふと思い出したように話し始める、


「そういえば数日前にそなたの息子が訪ねてきたぞ?」

『息子……ピエトロのやつか?』

「そやつだ、なんでもミディールの奴らが我に対し調査をし始めたから。それらを捕まえるために兵を貸して欲しいとな言ってきてな。」

『フム……』


ゲルマの話に今度は何か考え込むように唸る。一度カード越しでの会話が止まると、少しばかりの沈黙が起きる。


「どうする?」

『……何をするつもりかは知らんが、今は泳がしておいて大丈夫だろ。』

「わかった。まあこっちとしてはメリルにさえ手を出さなければどうでもいいからな。」

『そうか、では、今日はここらへんで切らせてもらう、今後の詳細についてはまた連絡をする。』

「ブルーノ、抜け駆けは許さんからな。」

『フン、バルオルグスを制御できる鎖の素材は貴公に託してるのだ、したくてもできんよ。』

「フヒヒ、それもそうだったな。では、また後日。」


その言葉で通話が切れると、ゲルマはそのまま椅子にもたれかかると、一息つく。


「もうすぐで帝国、いや世界が私の物に……フヒヒ」


 ゲルマが今後のことを想像しながらニヤニヤと笑っていると、部屋の外からノックの音が聞こえてきた。


「オープス様、ただ今ピエトロ様が戻りました。」


「ここに通せ。」

「はっ!」


 使用人が大きく返事をすると、扉が開き部屋の中にピエトロが、同じ歳くらいの二人の子供を連れて入ってきた。



――


「ゲルマ様、ただ今戻りました。」


 ピエトロが部屋の椅子でふてぶてしく座る男に跪くと、後ろでエレナとネロは目でコンタクトを取る。


――この人がゲルマ……


街の状況を思い出すとエレナはゲルマに対し怒りと恐怖で体を震わす。


「おおよく戻ったな、ピエトロ。今丁度そちの父親と話をしていたところだ、そちの事をよろしく頼むとな。」

「それはそれは、父に気にかけててもらえるとは嬉しい限りです。」


 ピエトロが心にもない言葉で返事をする。


「ところで例のやつらは見つかったのか?」

「はい、丁度今こちらに。」


 そういうと、ピエトロが後ろで拘束された二人を突き出しゲルマへと紹介した。


「この子供が調査しに来た奴らとな?」

「ええ、ミディールの伯爵であり、最近新しく将軍職に就いたネロ・ティングス・エルドラゴとその婚約者のエレナカーミナル伯爵令嬢です。」

「ほう……」


 ゲルマは椅子から立ち上がると、ネロに微塵の興味も見せず、エレナに近づきマジマジと容姿を観察する。


「ほほう、まだ色々と幼いが、なかなか美しい顔立ちではないか。」


 ゲルマはエレナの身長に合わせ中腰になると、エレナの顔を手で持ち上げ、怯える表情を見ながら舌を舐めずりまわす。

その姿にエレナの背中がひんやりと冷たくなる。


「そちらの少女の処分の方はあなたに任せます。ただ、こちらの男の方は私がもらってもよろしいでしょうか?」

「なんだ?そいつが目的だったか、構わん。好きにしろ。」


 ゲルマがネロに見向きもせずに答えると、ピエトロはすっと立ち上がり、ネロの腕を持ち上げる。


「では、こちらの男はこのまま私が実家に連れて帰りますので、すみませんがデイホースをお借りしても構いませんか?」

「フヒヒ、構わん、好きなの持っていけ。」

「ありがとうございます。では、わたしはこれにて失礼します。」


 そういうと、ピエトロはネロを連れて背を向けると、エレナに向かって小さく頷いた後、部屋を後にした。


そしてこの部屋にはゲルマとエレナ、そして姿を隠したエーテルのみとなる。


「フヒヒ、しかし、これほどの上玉が手に入るとは、少女趣味は興味は持たなかったが、些か悪くないかもしれんのお」


今にも顔が触れ合いそうな距離まで近づかれると、エレナは顔を逸らそうともがく。

そんな様子を見てゲルマはまた不気味な笑みを見せる。


――大丈夫。ここまでは計画通り……


 エレナがいい聞かせるように心の中でつぶやく、

 しかしそれでも醜い顔に見られ続けていくと、抑えていていたエレナの中の恐怖心が目を覚まし始める。


「どれ、一つ味見を……」


ゲルマの舌がエレナの顔に触れるところまで近づくと、エレナは思わず目を瞑る。

しかしそのタイミングで、部屋の外から扉を叩く音がした。


「誰じゃ!今いいところじゃぞ!」

「お父様、私です。メリルです。」

「なに!メリルか!」


 声を聞いた途端、ゲルマはエレナに興味を失い、手を離すと、立ち上がり扉の方へ向かう。


――た、助かった……


 エレナはホッと胸を撫でおろすと、そのまま扉の方へ注目する。


ゲルマが自ら扉を開けて出迎えると、扉からはエレナと同年代くらいの一人の美しい少女が現れた。

綺麗に溶かされた長い黒髪をなびかせ、華麗な立ち振る舞いで部屋に入る少女、しかしその瞬間、エレナは突如吐き気に襲われる。


 原因は少女から放たれている臭いだった。少女からはバラの香りと共に異臭も放っていた。

 それは、旅の途中何度か匂いだことのあるエレナが最も嗅ぎたくない匂い……血の匂いだった。

 そして彼女の右手にはまるで人形のように引きづられている、血まみれの女性の死体があった


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