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余命十五年のチート転生 〜クズから始まる異世界成長物語〜  作者: 三太華雄
第二章 ネロエルドラゴ編

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ダルタリアン

周りに大きな歪みが生じ、視界に映る景色が変わっていくと、ネロはいつものように周囲を見渡し移動した場所を確かめる。

目標地点は港であったが、周りはただ平地が広がり、海も船着場も見当たらない。

しかし南方を見ると遠目ながら灯台らしき建物が見えた。


――ここは港から少し北に行ったところか……という事はこのまま北に道なりに進めばダルタリアンか。


ネロが誤差の確認している隣ではエレナが不安げな表情でエーテルに尋ねている。


「ね、ねぇ、どうだったかな?ちゃんと騙せたかな?」


作戦の第一段階目は皇帝ベリアルにエレナへの興味を持たせる事、その確率を上げるためにも先程のエレナがテレポを使ったように見せる演技も重要な事であった。


「大丈夫よ、詠唱も完璧だったし皆んなエレナが魔法を使ったと思ってるに違いないわ。」


 その言葉にエレナが良かったと、安堵の声を漏らす。


「さあ、安心するのはまだ早いぞ、問題はここからなんだからな。」

「あ、うん。」


 ネロ達はそのまま北の方角を見る。

 まだ見えはしないがその目線の先には次の目的地、ダルタリアンがある。


「……ピエトロの話じゃ、中はとてもじゃないが、治安がいいとは言えないらしい、エレナはそばから離れるな、エーテルも絶対姿を見せるなよ。」

「「うん」」


ネロの言葉に二人が息を飲むと、気を引き締めながらダルタリアンへと向かった。


――


北の方角へと進んで三時間、日が沈み始める頃、その街は姿を現した。

外から見た感じでは普通の街だが、ピエトロから話を聞いているせいか、真っ赤な夕日を浴びたその街はいつも立ち寄る街よりも不気味に見える。

 ネロは街の入り口付近まで来ると一度足を止める。


「……エーテル、街に入る前にエレナに幻覚魔法をかけれるか?」

「え?」

「エレナにダルタリアンの街中を見せたくない。」

 

 その言葉にエーテルは言葉を詰まらせる。

 ネロはピエトロからダルタリアンの街中についても詳しく聞かされていた。


 ピエトロの話ではダルタリアンでは普通なら闇市場にしか売られていないような物も露店で売っており、その他にも人の命を弄ぶようなな残虐な見世物もあちこちで行われているという話だ。

そんな光景をエレナに見せられるわけがなかった。


「……そんなに酷いの?」

「話通りならな。」


 ネロが冗談で言ってるのではない事を悟るとエーテルは唾を飲む。

 そしてその提案に頷き、エーテルが魔法をかけようとしたところでエレナが待ったをかける。


「待って!私は大丈夫だから……しっかりと見届けようと思う、ダルタリアンの現状を。」

「……本当に大丈夫か?」


 ネロが念入りに尋ねる。


「私ね……正直言うとまだ怖いの。もし作戦が失敗したらと考えると……怖くて体が震える、でも、今こうしている間にも、苦しんでいる人たちがいると思えば、その人たちを私が救えると思ったら、きっと頑張れると思うから……だから、ちゃんと見ておきたいの。」

「……わかった、なら、行くぞ。」


 エレナが吐露した思いを聞いたネロは、それ以上は何も言わなかった。

 三人が覚悟を決め、ダルタリアンの街へと入る。

 そして入り口である門をくぐった瞬間、三人は街の光景に思わず再び立ち止まった。


 街中を歩く人は皆ボロボロの服を着た奴隷と、その奴隷に首輪をかけ楽し気に歩く不気味な仮面をつけた者達、そんな者達が当たり前の様に通りを歩いている光景はかなり異様であった。


「……行くぞ。」


ネロ達はゆっくりと周りを見回しながら街中を歩いていく。

 街の通りの端には他の街同様たくさんの露店が並んでいる。

その中の一つの露店を横目で見た エレナはその売っている商品に思わず顔をそっちに向ける。


エルフの耳の塩漬け 十万ギル

ドワーフの眼球 二十万ギル

人間の……


その他にもモンスターの生首や臓器などが横並びに置かれている。

それらは普通の街では決して表通りでは並ぶことのない物、つまり違法とされている人体部位が売られている店であった。

それが普通の露店のようにあちこちに並んでいるのだ。


 そしてそれらをまるで剣で見定めるようにマジマジと観察しながら見て回る仮面をつけた者達。

その光景に三人はただ無言になるしかなかった。


そして三人はさらに驚く光景を目にする。


「ねえ……あれって……」


 エレナが震えながら指さす方へ眼を向ける。

 そこにはまるで肉のように両手を縛り全裸で吊されて並べられている女性達の姿があった。

その女性達は、体中のあちこちに傷があり、中には片足のない者や、殴られたように顔がつぶれている女性もいた。

そして、微かながら女性達から弱弱しい呻き声が聞こえてきた。


「まだみんな生きてる……」

「……みたいだな。」

「一体何のために?」


 顔や体に傷がある為、体目的で売られていないことがわかる。

 そして答えは露店に並んだ値札に書いてあった。


『食用人肉女性、一キロ五万ギル』


「食……用……?」

「食べるの?人間が、人間を?」

「悪趣味にもほどがあるだろ。」


 その光景に三人がそれぞれの反応を口にする。


「ね、ねえ、どうにかできないのかな?」


 エレナが肩を震わしながらネロに尋ねる。


「……今はな」


 ネロも荒れ狂う感情を抑えながら静かに答える。

 冷たいようにも聞こえるネロの言葉だが、ネロの手からは怒りをこらえるために強く握った拳により血の雫が垂れていた。


「待っててね、絶対助けるから。」


 エレナは零れそうになる涙をグッと堪えポツリと呟くと、その場を通り過ぎた。


――


 あちこちから悲鳴と嘲笑が飛び交う街をしばらく歩いた後、エーテルが小さな声で耳打ちする。


「付けられているわ。」

「人攫いとかではないのか?」


この街で子供二人が歩いていたら誰でも目に付く、先程から幾人の人に見られていた。


「スニーキングスキルが高いわ、恐らく帝国の諜報部隊よ。」


――よし、釣れた。


 その言葉にネロ嬉しさのあまり小さくガッツポーズをする。

 これで、この地獄のような街中を歩きまわる必要がなくなったからだ。


「作戦第一段階は成功だ、これより第二段階目に入る。」


 ネロ言葉に二人が無言で頷くと、ネロ達は周りに見向きもせず早足で次の目的地である酒場へと向かった。



 不気味な街の人気の少ない通りにある小さな酒場に三人が入る。

 そこは荒くれ者ものが集っていて、その中に少年少女のが入ると自然と視線が集まってくる。


店中のあらゆるところから獲物を狙う視線が集まる中、ネロ達に一人の少年が近づいてくる。


「やあ、待ってたよ。」


近づいてきたのはピエトロだった。

ピエトロがネロ達に近づくと感じていた視線は瞬く間に消えていく。

ダルタリアンでもブルーノの名を持つピエトロは恐れられていた。

ピエトロは街を歩いてきたネロとエレナの表情を窺う。


 エレナは今にも倒れそうなほど顔が青ざめ、ネロは今にも暴れ出しそうなほどの形相を浮かべていた。

 

「それじゃあ、僕に着いてきて。」


 ピエトロは特に何も聞かずそれだけ言うと、ネロもわかった、とだけ答えそのままピエトロの後ろについて行き酒場を出た。


 そして無言のまま、酒場から少し離れた路地裏に到着するとピエトロは足を止めた。

 ピエトロがネロに対し手で小さく合図を出すと、ネロも状況を察して閉じていた口を開いた。


「なあ、ここは、どこなんだ?」

「見ての通りの路地裏だよ。」


 少しわざとらしい話の切り出しに思わずツッコミのような返答をしてしまったが、二人はそのまま話を繋げた。


「ここに何があるんだ?」

「それはね……ネロ、エレナ、手を出して」

「ん?」


 二人がピエトロに手を差し出す。すると、二人の両手に手枷がつけられる。


「な!?」


 そしてすぐさまたくさんの槍を持った兵士が物陰から現れるとそのまま二人を囲んだ。


「どういうことだ、ピエトロ!?」

「ふふ、まさかこうもまんまと騙されてくれるとはね?この者達が、言っていたミディールからのスパイだ!ひっ捕らえよ。」


 槍を構えた兵士達に囲まれると、手枷をつけた二人は抵抗する様子を見せずに両手を上へとあげ、そのまま兵士達に連れられ町の奥へと消えて行った。

 

……そして作戦は第二段階へと進んでいく。


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