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第6話

「なあに? あなた、だあれ?」


「フラン! ああっ……!」



 わたしは思わずフランを抱きしめていた!



「フラン……フラン……」



 大粒の涙がこぼれる。



「ああ……神さま……こんなことが……!」



――バタバタバタバターッ!



「フランチェスカ姫、こんなところに! さあ、こちらへ! そこの女! 姫から離れろ!」



――バシッ!



「きゃあっ!」



――ドンッ!



「きゃあっ!」



 衛兵がわたしを思い切り押した!



「ギャアアアーッ!」



 騒動で起きてしまったパオロが、火が点いたように泣きはじめた!

 床に倒れていたわたしはいそいで起き上がり、パオロに駆け寄った!



「おやめ! それ以上の暴力は母上に告げ口するわよ!」


「姫! それだけは……!」


「だったら、その人に謝りなさい! 行くわよ!」



――バンッ! カツカツカツカツ……。



「フラン! 待って!」


「女、悪かったな! これで顔を冷やせ!」



――バシッ!



 男が白い布を床に投げつけた。

 水に浸して使えということなのか。



――カツカツカツカツ……。



 足音が遠ざかっていく。

 わたしは成すすべも無く、パオロを胸に抱いたまま唖然としていた。

 涙があとからあとから出てくる。

 フランはわたしのことがまったくわからなかった。

 真っ赤なドレスを着て終始、毅然とした態度を取っていた。

 芝居や虚勢を張っていたわけではない。

 記憶喪失としか思えなかった。



 ◇ ◇ ◇ ◇



――コンコン!



「はい」



――カチャッ!



「ロッシさま!」


「やあ、ジュリア! パオロはよく寝てるね? フランチェスカ姫がここに迷い込まれたそうだね? 会った感じはどうだった?」


「はい……とても大きくなられていて、元気そうでした……」


「大きく? 君は小さい頃の姫を知っているのかい?」


「あっ……いえ! そうではなくて……」


「何が事情があるのだな。まあ、いい。ぼくは外国人だから関係の無いことには首を突っ込まないのが得策だ。舞踏会がはじまったが、行ってみるかい? フランチェスカ姫はここで会ったときよりもっと尊大な態度で大広間に座っているよ」


「お会いしたいです! 中庭から覗くだけなら許されますか?」


「行く前に隣の部屋でメイドに着付けてもらうといい! 話はつけてあるよ」


「ありがとうございます。では、行って参ります。パオロは……」


「ぼくが見てる! 行っておいで!」


「はい! パオロ、行ってくるね?」


「ママ、バイバイ」


「いい子ね。すぐ帰ってくるからね?」



 パオロにキスして続き部屋に入っていった。

 メイドに髪や化粧をなおしてもらい、黄色いドレスを借りて舞踏会場へ向かった。

 中庭へまわり大広間を覗いてみた。



「わああーっ。映画の中みたい……」



 目の前にダンスを踊る大勢のカップルがいる。

 豪勢に着飾る男と女。

 皆もがみな気品に満ちていて、色とりどりの素晴らしい衣装を身につけている。

 中央でガーネットが得意げに自慢の胸を晒して踊っていた。

 女たちが扇の陰から噂していることも、いっさい気にならないようだ。



「わたしもこの世界では、こんなにきらびやかな生活を送っていたのね……」



 カーテンの陰から舞踏会嬢を見回しフランの姿を探した。

 いた!

 玉座の真ん中に座る着飾った赤毛の女の横に立っていた。

 見たことがある女だった。

 そうだ!

 強盗団に襲われたとき馬車から出てきた女だ!

 もしや――あのときジョージとフランを誘拐したのはこの女では?

 女とフランはおそろいの真っ赤なドレスを着て互いの目を見つめ合っていた。

 まるで本物の親子のようだ。

 フランは本当はわたしの娘なのに!

 いますぐ飛び出していってフランを抱きしめたい!

 わたしが本当のは母親だと皆の前で叫びたい!

 それらの衝動をなんとか理性でおし留め、怒りで足を震わせながら2人の様子をジッと見つめていた。



「失礼、お嬢さん?」


「えっ?」



 とつぜん誰かに話し掛けられた。

 どうしよう!

 サラ・アミデーイを知っている人物だったらまずい!


 恐る恐るうしろを振り返るとそこには――死んだはずのジョージが立っていた!

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