第4話
――ダンッ!
男が馬車のドアの蹴り上げた!
わたしはパオロを抱きしめたまま馬車から降りた。
「だあっ……」
「ヒクッヒクッ……ジョージ……フラン……おお……神さま……」
「美人だな……こいつは高く売れそうだ! へっへっ!」
――ウヒョヒョヒョッ、ヒョヒョッ!
男たちから下卑た笑い声が起きた。
反論する気力もない。
せっかくジョージと結ばれたというのに。
河の濁流に目をやる。
ジョージもフランの姿もどこにもない。
「ジョージ……フラン……っ!」
「ダアアアーッアアーッ!」
わたしの激情を感じたのか、大声を上げはじめたパオロと共にわたしはその場に泣き崩れた。
◇ ◇ ◇ ◇
「姫! 密偵から連絡がありました! 強盗団のひとりが城へ身代金を取りに向かったところを我が軍が捕らえました! 我が軍がこちらへ救出に向かっています!」
「ジョルジオさまは! どうなされた?」
「それが……河に堕ちて行方不明との情報が……」
「なんじゃと! ジョルジオさまが生きておられないなら、ここまでやってきた意味がないではないか! なんということか……おおっ……ジョルジオさま……!」
◇ ◇ ◇ ◇
わたしとパオロは強盗団に引き立てられ街外れの屋敷に連れていかれた。
いかにも何かありそうな派手で悪趣味な飾り付けがされた建物だった。
「もしかして、ここは……」
何も知らない令嬢ならわからないだろうが、現代に生きるわたしにはピンときた。
たぶん春を売る女がいる館だ。
わたしをこの中に一生閉じ込めて働かせるつもりだろう。
どうしよう、どうしたら!
パオロだけでもどこか遠くへ!
迷っている間に扉が開いた!
屈強な用心棒と一緒に胸元を大きく広げた派手な身なりの女が出てきた!
うしろには強盗団の男たちが!
もう逃げ場がどこにもない!