1/9
プロローグ
――リーンゴーン! リーンゴーン!
向こう岸から教会の鐘の音が聴こえてくる。
葬送の合図のように感じられた。
花婿の乗った車はさきほどこの橋を渡っていった。
結婚式はもう終わったのだろう。
この橋を渡ったら最後、彼はわたしの元へは戻れない――永遠に。
気がついたら夜だった。
あれからずっと橋のたもとに佇んでいたようだ。
「すごい霧……」
目の前が真っ白で何も見えない。
――タッタッタッタッ!
橋の向こうからびしょ濡れの男が走ってくる!
「サラ! サラー!」
「そんな……譲二……!」
今日、知らない女と婚姻したはずの門田譲二が目の前に現れた!