朝の九時
イクスがケティを担いで行ってから、十分ほど、レイルナートは放心していた。
今すぐ画廊のオーナーに連絡を取らなければと思うが、やる気になれなかった。『絵が』と言ったケティの声がかすかに頭の中で響き続けている。だから何だって言うの、と、自分に言い聞かせる。ケティが真っ先にレイルナートの絵を心配した、だから何だって言うの……
「……」
レイルナートはスケッチブックを開いた。今朝描き上げたばかりの魔物の絵。
――ケティはこれを見ていた。
バカな子だと思う。さっさと逃げれば良かったのに。絵なんか見ているから、出遅れて、イクスなどに捕まる羽目になったのだ。
――なんて、バカな子なんだろう。
まるでマリアラみたいだ。
マリアラに請われて、何枚かの絵を手放したときのことを思い出す。
マリアラが望んだ絵はみんな神託によって描いたものだった。それ以外の絵を見せなかったから当然ではある。フェルディナントがマリアラに何かを渡している絵を受け取って、見つめていたマリアラは、あまりにも哀しそうで――そして、嬉しそうで。
一緒にいないのに、いられないくせに、ひどく幸せそうで。
わけもなく、腹が立った。なんて顔をするのだと。
――あたしはきっと、一生、あんな顔をすることはないだろう。
断じて羨望などではない。ただ単に、そう思っただけだ。
『レイルナート、神託じゃない絵を描いたら、わたしにも見せてね』
あの馬車の中で、雑談の合間に言った彼女の言葉が、ケティの囁きに混じった。
『わたし、神託じゃないレイルナートの絵も、もっと見たい……』
どうしてああいうことを臆面もなく言えるのだろう。
レイルナートは唇を曲げて嗤いの形にした。
ミランダとマリアラの会話も、本当に可笑しかった。馬鹿みたいだった。マリアラはミランダが大好きで、ミランダもマリアラが大好きで。その内心を隠そうともしないふたりの会話は、まるで何かの儀式のようで。
お互いの中にある自分への好意を確かめ合う、得体の知れない、いびつな決まり事のようで……。
絵が見たい、あなたの絵が好きだ、などと、世迷い言を口にしながら、マリアラはきっとレイルナートの心の中にある自分への好意を探ろうとしていたに違いない。それは自慰とどう違うのだ。なぜレイルナートが、そんなバカげたことに付き合ってやらなければならないのだ。マリアラもケティも、本当にバカだ。
レイルナートを自分たちと同じ価値観の持ち主だと思い込むなんて。
あたしは違う。あんたたちみたいなバカじゃない。
――あたしはきっと、一生、そんな感情を誰かに持つことはないだろう。
レイルナートは洗面所に走り、顔を洗い、鏡の中の自分を眺めた。
青ざめて顔色が悪い。
(徹夜だから当然だ)
唇の両脇はちゃんとつり上がっているのに、ちっとも笑顔に見えない。
(疲れているからだ。ひと晩中絵を描いていたのだから)
「あたしはあの子とは違う」
だから大丈夫だ。
レイルナートが鏡の中の自分に向かってつぶやいた、そのとき。
唐突に、神託が降ってきた。
目の前に、マリアラが見える。マリアラは屈み込んでいた。髪が短く、黒茶に染まっているから、ここ最近のマリアラであることは疑いない。隣にいるのは、
――リン=アリエノール……!
レイルナートは我に返った。先程と同じホテルの一室の中、レイルナートは洗面所の床に尻餅をついていた。それを確認した瞬間、体中が唐突に震えだした。まるで瘧にでもかかったように。
スケッチブックに飛びつき、白紙のページを開き、鉛筆を握った瞬間に、レイルナートは描いた。体の中で暴れ続ける神託をスケッチブックに移していく。写している間も体中が震えているようだった。手は正確に動き続けているが、体の他の部分を支えていられないほどだった。事実神託を描き上げたとき、レイルナートは床に倒れていた。鉛筆を放り出し、よろよろと体を起こし、改めてスケッチブックを取り上げる。
そこにマリアラとアリエノールがいた。
アリエノールが飛び退いた体勢で描かれていた。その前にポットがあるから、お湯が撥ねでもしたのだろうか。マリアラはアリエノールの前にかがみ込み、タオルでアリエノールの腹のあたりを拭いている。大丈夫かと訊ねているのか、その口が開いている。優しい手つき。友人を案じるようにかすかにしかめられた眉……
なんて汚らわしい心根だろう? わざわざ拭いてやることで、友人を案じる『優しい自分』を演出しているというわけだ、
「……冗談じゃないわ……!」
レイルナートは悲鳴を上げた。これはどういうことなのだ。
アリエノールはエスメラルダにいるはずだ。ということは、マリアラも既に、エスメラルダにいるということになる。レイルナートは唐突に激昂した。
「どうして!」
――どうして元気になっているのだ!
イクスに渡したあの絵が惜しかった。あの絵こそ、レイルナートが求めていたものだった。すべての希望を打ち砕かれて、自らの傷を治す気力もなく、ただ死人のように横たわるマリアラの絵を描いたのは、ほんの数日前のことなのに!
「冗談じゃない……冗談じゃないわ……!」
レイルナートはスケッチブックを抱えたまま部屋を飛び出した。
外套を着ることにさえ、頭が回らなかった。
【魔女ビル】へ帰る道はすぐにわかる。【魔女ビル】は遠くからでもよく見えるからだ。
動道を乗り継いで【魔女ビル】へ戻る途中も、レイルナートはスケッチブックを胸の前にしっかり抱えていた。その指先が真っ白になっているのは、寒いからではなく力を込めすぎているからだった。レイルナートの周囲の人間が皆、この季節に外套も着ずにいる少女を案じるように、あるいは珍しそうに、あるいは不審そうに見ていたが、レイルナートは一切気に留めなかった。誰かに話しかけられても気がつかなかっただろう。
時刻を見ると、もうすぐ九時だ。
レイルナートは動道のかすかな振動に身を委ねながら【魔女ビル】をにらみ続ける。
*
吹雪が止んだまま明るくなって、フランチェスカは、珍しく明るい空を見上げて舌打ちをする。
ついてない。この季節のエスメラルダはほぼ毎日吹雪なのに、フランチェスカが【魔女ビル】から一時退避せざるを得なくなった日に限って、吹雪が止むだなんて。
フランチェスカは今、幼い少女の姿を取っていた。【魔女ビル】にいた頃にいつも取っていた姿なので、慣れていて、気を抜いても元の姿に戻ってしまうということがあまりない。しかし今は衣類も着ているように見せかけているので、それが少々煩わしかった。手頃な衣類が手に入れば、もっと楽になるのだが。
「あらお嬢ちゃん――」
声をかけられてフランチェスカはげんなりした。またか。
【魔女ビル】にいた時にはさまざまな隠れ場所や通風口の入り口を熟知していたために、見咎められることも話しかけられることもほとんどなかったのに。
幼い子供の姿をしていると、エスメラルダの街中では非常に目立つのだ。寮母の庇護下にあってしかるべき年齢の子は、親切な大人たちのおせっかいから逃れることができない。
今朝から何度も何度も声をかけられてもはやうんざりだ。フランチェスカは振り返りもせずに走って逃げた。応対してもややこしくなるだけで解決することはない、ということはここに来るまでに嫌というほど思い知った。走って逃げるのが一番だ。……そのせいで【魔女ビル】からどんどん遠ざかることになり、苛立ってたまらない。
ウルク地区のはずれ、少し寂れた商業ビルの裏道で、ようやく少し一息ついた。
近くに休憩所があった。今日は吹雪が止んでいるからもちろん無人だ。
ガラス越しに見える時計は、もうすぐ九時になりそうな時刻を指している。休憩所の中に入れば、もう少し大人の外見に調整できるはずだ。確かトイレもあったはずだ。そう考えた時、前方から人の気配が近づいてくるのを感じ、フランチェスカは長々と嘆息した。またここから走って逃げなければならないのだろうか。しばらく【魔女ビル】に戻るのは諦めて、海沿いか雪山に行くべきだろうか。
身構えた時フランチェスカは、向こうからやってくるその気配がマリアラであることに気づいた。
ゆらゆらとゆらめく炎のかたまりが、少しずつ近づいてくるかのようだ。微かな熱気さえ感じる。
周囲に積もった雪がなぜ溶けないのかが不思議なほどに、その存在感は凄まじい。まだ姿が見えてもいないのに、フランチェスカの体内の〈毒〉がざわめいている。陽炎のような温かな波動に誘われるように、〈毒〉が勝手にフランチェスカの体から溶け出て行こうとする。足を踏み締めた。絶対に逃げ出したりするものか。もはや自分は元の強さを取り戻した。前回は元気満々な右巻きの若者(それもエルカテルミナの片割れだ)がマリアラを守っていたから遅れをとったが、今は守護者はいない。
この路地に、マリアラが姿を現した。
清掃隊の制服を着た壮年の男と一緒だった。右巻きだ、とフランチェスカは悟った。見た目は三十代か四十代くらいに見えるが、その実はもっと若く、二十代になるかならぬかのイリエルだ。あんな芸当ができるのは、レジナルドの他には【風の骨】しかいないはずだ。
そしてその横にいるのは、確かにマリアラだ。
――無理だ。
フランチェスカは二人がこちらに気づく前に身を翻して路地の暗がりに飛び込んだ。
見ただけで目が潰れそうだ。
とうてい無理だと、認めないわけにはいかなかった。二度目の孵化を迎えた神の娘は、淑黒のフランチェスカといえども、おいそれと手を出せる相手ではない。
しかし本当に、このまま野放しにしてはおけない。あの島で島民たちがやろうとしたように、人間に捕らえさせるべきだ。イクスかレジナルドにあの娘の居場所を教えれば、きっと喜んで捕えるだろう。
近くの休憩所を探そう。〈アスタ〉を通じて連絡すれば良い。
マリアラと【風の骨】は、一緒にビルに入って行った。二人の姿が見えなくなって、フランチェスカはそろそろと後ずさった。ああ、あの一番近い休憩所に入ることはもう無理だった。こんな近くにいては、集中して外見を整えるどころではない。仕方がない、別の休憩所を探そう。
大通りに出ると、少し圧力が薄れた。
マリアラの放つ輝かしい圧力に比べれば、四方八方から寄せられる視線など取るに足らない。フランチェスカは大通りを小走りに走った。マリアラが入って行ったビルのあるブロックを過ぎ、もう一ブロックの半ばに差し掛かった頃、別の休憩所を見つけた。
と、その時フランチェスカは、恐ろしい気配を感じて振り返った。
ビルの屋上にマリアラがいるのを感じた。
その屋上に向けて、燦然と輝く恒星のような気配が近づいてくる。
――フェルディナント?
ゾッとしたが、すぐに、違うとわかった。フェルディナントではない。
ライラニーナだ。
体が勝手に震えていた。体がガタガタ震え始めた。周囲でフランチェスカを伺っていた初老の男性が意を決したように声をかけてきたが、体がどうしても動かない。身体中の〈毒〉が沸騰している。フランチェスカのいる大通りの上をライラニーナが横切ろうとし、マリアラが、ライラニーナを迎えるように手を挙げたのが見えた。
ああこれでおしまいだ。
左と右が出会ってしまう。
*
朝の九時。
ライラニーナ=ラクエル・マヌエルは、制服を着て、支給品の真新しい外套を着込み、【魔女ビル】の正門を出た。
こんなことをしたのは何年ぶりだろう。ふとそんなことを思う。ダニエルと共にシフトに入っていた時は、いつも、詰め所の窓から飛び立つのが常だった――
――ダニエルと。
冷たい風が喉を撫で、ライラニーナは外套の前を一番上までしっかり閉め、もこもこの裏打ちに鼻まで埋めた。そして、手袋を確認して箒に乗って飛び立った。彼女の【息子】につけている箒、それから移動用にともう一本支給された箒、その双方に魔力をわけても、彼女にとってはさしたる負担でもなかった。
ダニエルのことは努めて考えないようにしていた。きっとどこかで無事でいる。レジナルドがそう言ったのだ。レジナルドの言葉に逆らわずにいれば、いつかまた会える……。
その希望が仮初めのものだと分かっているのに、それ以外の可能性を考えることができなかった。恐ろしすぎて。一歩も前に進めなくなってしまうから。
十六歳の頃、ダニエルのお陰で、ライラニーナは自分の人生を『取り戻した』。あれから十年以上、ライラニーナの人生はダニエルのためだけにあった。いまさら、すべてのより所であったダニエルがいなくなってしまっただなんて、そんな事実を突き付けられてしまったら、本当にもう、どうしていいのかわからない。
箒の上は寒かった。が、保護膜は張らなかった。ライラニーナは最近、ダニエルがいなくなってから、暖かい、と思ったことがなかった。入浴中も、〈アスタ〉の部屋も、自分の部屋も、どこも変わらずに寒い。保護膜なんか使ったって、暖まるわけがない。ただ肌に触れる防寒具の感触があれば、肌寒さだけは緩和される。
(ダニエルにとっては、どうだったのだろう)
ライラニーナの心の奥底で、小さな呟き声が聞こえる。最近いつもこうだ。心の奥底にいる誰かは、いつも何かを呟いている。ライラニーナにとって都合の悪いことばかり。
(あたしはダニエルのためだけに生きてた。それが『幸せ』だと思っていた)
(でもダニエルにとっての『幸せ』は、何だったんだろう……)
そんなことどうでもいい。考えたくない、とライラニーナは思う。考えてはいけない。その思考は危険だ。
(ダニエルの失踪は、レジナルドとは、)
考えちゃいけない……!
(関係無いんじゃ、ないのかな)
そんなわけない。そんなはずはない。ライラニーナは頭をひとつ振り、前方に視線を戻した。〈アスタ〉が珍しくライラニーナに仕事をよこした。本当に人手が足りなくて申し訳ないけれど、と、〈アスタ〉は丁重に言った。
そうなのだろう。つい先程、独り身の右巻きたちが【魔女ビル】から次々と飛び立って行くのを見た。待機や非番のマヌエルまで駆り出されていたようだ。多分吹雪が止んで、雪崩か何かが起きたのだろう、雪山の方へ飛んで行ったようだから――
だから人手が足りないのだろう。
ライラニーナにとっては歓迎すべき事態だった。ひとりでいても余計なことを考えるばかりだ。ならば働いた方がいい。フェルドの動向も知りたくなどなかった。レジナルドからは『見張れ』と言われているが、『行動を逐一報告しろ』などとは言われていない。ララの箒には人格がないから、こちらから頼まないかぎり報告などもしてこない。
(いつも上の空だなあ)
心の奥底にいる誰かが呟いた。
(ダニエルがいないと、あたしは何にもできないんだ……)
そうだ。だから、レジナルドに逆らうわけにはいかないのだ。
こうしていればダニエルを返してくれると、レジナルドが言ったのだから。
(そう聞くと、なんだかダニエル、物みたいだなあ)
心の奥底の誰かは、相変わらず嫌なことばかり言う。
(あんなに優しくて大好きな人を、あたしは、ずっと、物のように扱っていたんだなあ……)
呟きを聞かずに済むように、ライラニーナはちょっと高度を落とした。
と。
まだだいぶ先のビルの上に、ミーシャが立っているのが見えた。
亜麻色の長い髪がひるがえっている。
遠いので、まだ小指の先くらいの大きさにしか見えないが、あんな場所に立っている人間は嫌でも目に入る。
私服だった。もこもこの真っ白なコート、藍色のマフラー、可愛らしいブーツ、亜麻色の長い髪――その姿をみて、ライラニーナは、ミーシャはあんなところで何をしているのだろう、と思った。心の奥底にいる誰かがぶつぶつ呟く。
(嫌だ……こうして見ると本当にマリアラそっくり)
(服装までそっくり真似て、いったいどういうつもりだろう)
(見たくない。冒涜だ。頭にくる。イライラする……)
(マリアラ、どうしているかなあ。ケガは大丈夫だろうか。あの後イクスを撒いてから急いで戻ったけれど、どんなに捜しても見つからなかった……)
(死んだ、の、だろうか……)
(あの可愛い、大事な、【娘】は、もうどこにもいないのだろうか……)
(あたしが、殺したんだろうか……)
「どうでもいいわ」
呟いて、ライラニーナはミーシャから目をそらした。迂回して行こう。面倒だけれど、心の奥底の誰かはミーシャを嫌っている。ミーシャを見ると今のようにぶつぶつうるさいし、胸がザワザワして落ち着かない。
一瞬、ミーシャが手を挙げた、ような、気がした。
しかしその寸前、ぷるるるるるる、と無線機が音を立てた。ライラニーナは箒を止め、無線機を取り出した。ボタンを押すと、バルスターの声が流れ出る――
『ライラニーナ。仕事中に済まないが、戻ってきてくれ』
アロンゾ=バルスターはイェール現校長の秘書だ。身分としては秘書ではあるが、イェール校長を陰で操っているのは彼だと専ら噂されている。イェール校長は長年警備隊にいた人で、現場を重視する部下思いの人間だが、その分実直で、政治の駆け引きには頭が回らないらしい。そもそもイェールが元老院議員になったのも、副校長の座にまで上り詰めたのも、アロンゾ=バルスターが操縦したからだ、などと、陰口を叩かれるくらいだ。
『心の奥底の誰か』はバルスターを嫌っている。
政治的な手腕は凄いのかもしれないが、その本質は冷たくて計算高くて、ずる賢い男だ。レジナルドよりもっと酷いのは、ライラニーナに対しくだらない嫌がらせをしてくるところ。あちらとしては不安なのだろうとライラニーナは理解している。レジナルドとバルスターが手を組んだ時、『駒』だと紹介されたライラニーナのことが、その実怖くてたまらないのだろう、事あるごとに自分に従わせようとしてくる。ダニエルのことをひけらかして。
確認したいのだろう。ライラニーナが今日もバルスターに従うつもりがあるかどうか、ということを。
(嫌い。大嫌い。殺してやりたい)
(マリアラのような子は死んでしまうのに。ダニエルのような人はあたしから離れて行ってしまうのに)
(嫌いな人ばかりが、あたしのところに来る)
(自業自得だけれど……)
「……何か急用?」
『そうだ。ぜひ君の協力を頼みたい。シュリガンさんもそれを望んでおられる』
シュリガン、と聞いて、ライラニーナの心の奥底の誰かがまたぞろぶつぶつ言った。嫌い――嫌い――殺してやりたい――
レジナルドが傀儡とし、利用している、たまに化けたりもする、元老院議員の名前だ。
「わかりました。戻ります」
『よし。北側の通用口にいる』
通話が切れ、ライラニーナは箒の柄をひいてくるりと回った。
【魔女ビル】に戻る。バルスターに協力することは、レジナルドに協力することだ。それなら、働かなくてはならない。
そうでなくては、ダニエルが戻ってこないのだから。




