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魔女の遍歴  作者: 天谷あきの
魔女の再会
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間話 海辺の街(1)

 イェルディアはアナカルシスでも有数の大都市である。

 海辺の街だ。10月だというのにものすごく天気が良かった。エスメラルダの、陰鬱な空が懐かしい。


 この街に着いてからというもの、フランチェスカは機嫌が悪かった。この街は居心地が悪い。天気が良すぎ、見晴らしが良すぎる。キラキラ光る日光が海面に反射し、フランチェスカの弱った体躯に突き刺さる。こう明るく、こう眩しくては、黒々としたフランチェスカの体はいかにも目立ってしまう。人間はフランチェスカを見ると猫だと思うのだが、今は体が小さすぎるためか、『可愛い』外見に見えるようだ。人間どもに見つかるとうるさいし、下手をすると捕まって、撫で回されたり腹を吸われたりする。といって爪など立てようものなら毒を相手に入れてしまうことになる。昏倒でもされて大騒ぎになってしまったら、本格的に駆除対象にされてしまいかねない。だからフランチェスカは、イクス=ストールンのショルダーバッグの中でおとなしくしているしかない。


 イクスは今は一人だった。青々とした空の下をてくてく歩いて、ジレッドとの待ち合わせ場所に向かっている。


 ジレッドとベルトランは用心のために駅を使うのを避けた。なにしろここにはギュンターがいる。今、イェルディアの【魔女ビル】に所属する警備隊長というポジションだ。他国では、領事官と呼ばれる地位である。当然ジレッドとベルトランの顔は割れているから、正規ルートで街に入ると目をつけられ、動きを制限されるおそれがある。


 だからジレッドとベルトランは途中で列車を降り、ナルデ川を下ってイェルディアの近くまで行き、海に出てから船で――そういう客を乗せる非合法な商売を副業にしている漁師がいるのだという――イェルディアに入るのだと言っていた。相当の金を積まねばならないようで、顔が割れていないイクスはこの度別行動をすることになったというわけだ。


 イクスは新人の保護局員の研修というていになっているので、ジレッドとベルトランがくるのを待つ間、まずはイェルディアの【魔女ビル】に顔を出した。その後、海に向かって歩いている。真っ白なビーチは風光明媚で評判で、なるほど確かに見晴らしがよく水面はキラキラと輝き、手を繋いで歩く男女や、波乗りや散歩をする人間たちで賑わっている。そういう人間をターゲットにした屋台がたくさん出ていて、イクスの狙いはその屋台のようだった。


 いつ合流できるかわからねえから観光でもしてろ。


 そう言ってジレッドは、イクスに軍資金まで渡していた。存外面倒見のいい男である。

 そのせいか、イクスは楽しそうだった。屋台を目指して歩く足取りはとても軽い。




 おや、またあった。


 ショルダーバッグから目だけ出して外を覗いていると、結構な頻度で目につくポスターがある。

 マリアラ=ラクエル・マヌエルの似顔だ。

 潮風とこの日光に晒されているのにほとんど劣化していない。最近貼り直されたらしい。あどけない顔立ちがくっきりと見える。指名手配という文字が、いかにもそぐわない。


 かえすがえすも、ウルクディアで取り逃がしたのが悔しかった。

 ジレッドは一度、マリアラを車に乗せたのだという。しかし落とし物をしたという嘘に騙されてまんまと車を停めてしまい、そのまま逃げられてしまった。おそらく王太子に保護されたのだと、ジレッドは悔しそうに言っていた。赤い小さな車に乗った若者がマリアラを車に乗せ、どこかにつれて行った。あの車の動かし方はただ者ではない、おそらく軍人であろうと。


 王太子がマリアラの背後についたとなると、厄介だ。


 そう判断したレジナルドは一度マリアラを泳がせることにした。なにしろレジナルドはトールを通じてあの【炎の闇】との交渉に成功している。グールドの勘にかかれば、マリアラを見つけ出すのは時間の問題だ。だからジレッドたちはその間、別の任務を遂行することになった。レジナルドに従う人間は少ない。ジレッドたちは資金にこそ困ることはないが、その分、いつも忙しい。


 リーザ=エルランス・アナカルシスが、いよいよイェルディアに護送されてくるのだ。


 リーザはここの【国境】を通って一度レイキアに渡り、そこの【国境】をまた通ってリストガルド大陸に行き、そこからマティスとかいう雄大な生き物の引く車に乗って、はるばると大陸を渡っていく。ガルシアの御曹司との婚姻が成るまでには、まだ数ヶ月はかかるだろう。

 アナカルシスからガルシアに行くためのルートは一つしかないから、彼女の居場所を探るのはそう難しくない。どうしてもガルシアとアナカルシスの婚姻を成就させたくないレジナルドは、ここイェルディアでリーザの脱出を幇助するようジレッドたちに命じたというわけである。


 イクスは一つの屋台に並んだ。甘い香りがする。列はサクサクと進み、「ひとパック」とイクスが頼んで小銭と引き換えに受け取ったのは、丸い鈴のような形をした焼き菓子だった。ふわわん、と甘い香りが漂い、イクスは意外にも嬉しそうな顔をして屋台の前を離れ、一粒つまんで口を開けた。


 と。


「なーお前この新聞読んだ? エスメラルダ、すげーことになってるぜ」


 イクスが菓子に噛み付く寸前に、そう声をかけたのは、正面からやってきたジレッドだった。折り畳んだ新聞を見ながら手を伸ばし、イクスの手にしたパックから一粒取って口に入れた。「あ」イクスがあげる声にも構わずひょいひょいパクパクとジレッドは続けて食べ、


「んめーなイェルディアの鈴カステラ、お前目の付け所がなかなか」

「ちょちょちょ」


 イクスは急いで二つは確保したが、四つはジレッドに食べられてしまった。恨めしげなイクスには全く構わず、ジレッドは新聞をぽいとばかりにイクスの頭に載せる。


「あー腹減った。あそこの店で、魚の揚げ物買ってこいよ。ベルトランのはいーや、船酔いで食えねえだろうから、3人分な」

「え、3人? って、この猫の――」

「そのお猫様の分なわけがあるか。高貴なお猫様は下々の人間の食いもんなんか食わねーだろ。俺のとお前の分な、あそこのは美味すぎて、1人分じゃ足りねーんだよ。俺のは2人前。お前も後悔したくねーなら4人前買っとけば? ちょっと並ぶからその間にそれ読んどけ」

「……」

「早く行けよ、こっちゃ徹夜でイラついてんだから」

「……リーザ姫はもうすぐ着くんじゃないんですか」素直に従ってたまるかというようにイクスが言った。「二人が着いたんなら、駅行って待ってた方がいいんじゃ? 行き違いにならないように」

「お姫さんはまだ着いてねーよ。着いたら真っ先に警察署に行って、引き渡しが行われるだろ。その後じゃないと逃せねえんだよ」

「……?」


 ジレッドはめんどくさそうに言った。


「ギュンターの庇護下に入ってからじゃねえと、ギュンターの責任にできねえだろうが」


 ギュンターはガストンの友人であり、レジナルドにはっきりと楯突く立場にいて、有能で、厄介な男だ。今までどんなに懐柔しようとしても、全く靡かなかった。多額の賄賂にも、さまざまな申し出にも。ガストンとギュンターが協力関係にある以上、レジナルドの動きはかなり制限されてしまう。


 今はエスメラルダから出ているが、イェルディアという大都市の領事というポジションであり、人気も高く、そのうちエスメラルダに呼び戻さないわけにいかない。このまま順調に出世街道を進んだら、近いうちに元老院議員に選ばれる可能性が高いのだ。レジナルドとしては、それはなんとか阻止したい。

 もしリーザがギュンターの庇護下に入ってから逃げ出したとしたら、レジナルドが最大限に利用できる、ギュンターの汚点になる。


 イクスは納得した。ジレッドは、ったくバルスターの奴め、ふがいねえよなあ――などと言いながら、海の方へぶらぶら歩いて行った。ベルトランは船酔い、と言っていたから、ついさっき着いたばかりなのだろう。川を下って陸路を進んでそれから船で来たというのに、ずいぶん早く着いたものだ。


 イクスもそう思ったのだろう。「なんだよくそ、せっかく……」と呟いて、言われたとおりの店へ向かった。せっかく羽を伸ばそうと思ったのに、というところだろうか。





 ほかほかと湯気を立てる魚の揚げ物を4人分抱えたイクスは、15分ほど経ってからようやくジレッドと合流した。ジレッドの言ったとおりとても評判の良い店らしく、行列もすごかった。


 ジレッドは防風林の近くに置かれたベンチに座って、長い足を投げ出して、日光を浴びてじっとしていた。イクスは待ち時間の長さにげんなりした様子だったが、ベンチに座ってその魚の揚げ物を一口食べた瞬間に目を見開いた。フランチェスカのところまで、いい匂いが漂ってきていた。さっくりと揚げられた魚の切り身に、甘辛い匂いのするタレがかかっている。フランチェスカでさえちょっと味見をしたくなる匂いだ。底に敷かれた芋のマッシュと刻んだレタスにタレを絡めて混ぜ、魚の切り身と一緒に食べるうち、イクスの機嫌もジレッドの疲労もだいぶよくなったらしい。二杯目をもぐもぐと食べながらイクスは、並んでいる間に読んださっきの新聞をスプーンでさして言った。


「……ほんと、大事件だったみたいすね」

「どうりでここんとこ、通話がつながらねーわけだわ」ジレッドの口元で、魚がサクッと音を立てた。「あー……俺らがいりゃあ、グールドなんかにいいようにされずに済んだのにな」

『も少しこっちに向けておくれ。本当に起こった事件なのか? 訓練だったと書かれているようじゃが』


 フランチェスカは業を煮やしてそう言った。紙面には、エスメラルダ建国200年を祝うセレモニーの最中に起こった大事件のニュースが載っていた。事件が起こったのは昨日だ。アナカルシスの狩人【炎の闇】がセレモニー会場のすぐそばのビルに立てこもり、大勢の子供達を人質にした――という、事件だったようなのだが。


 そんなはずはないとフランチェスカは思う。【炎の闇】グールドは、今頃は【風の骨】を殺し、マリアラを見つけだし、追いかけまわして捕まえて、エスメラルダに連れてくる途中だったはずだ。そうでなくばならない。すでにマリアラを捕らえてエスメラルダに連れて行ったついでに今回の事件を起こしたのならまだ許せもするが、それならレジナルドから連絡が入っているはずだ。


 おかしいといえばこの記事の見出しもおかしかった。『保護局は『訓練』と発表』、とデカデカと書いてある。


 フランチェスカの要望をジレッドは無視したが、イクスはフランチェスカの入っているショルダーバッグの前に、その新聞を置いてくれた。人魚の秘蔵っ子という嘘が持つ効果はまだまだ安泰のようだ。おかげでフランチェスカは隅々までその記事を読むことができた。


 記事によるとエスメラルダの魔女保護局は、その事件を、保護局員たちの有事への対応を見るための訓練であった、と発表したのだそうだ。

 【炎の闇】に人質にされた子供達に混じって、新人の保護局員も一緒に囚われていたらしい。その新人は機転を効かせて外部に通報し、それがきっかけで保護局の精鋭部隊が突入の糸口を掴むことになった。新人は入局早々昇任が決まったとか、色々と書かれているが、記事の論調としてはとても批判的だった。いくら訓練とはいえあまりにも人騒がせにすぎ、子供たちや新人の保護局員(未成年であった)への心身に与える影響を軽視しすぎ、エスメラルダ国内でも非難が殺到している。ナイジェル校長への引責辞任を求める声も高いとか。


「訓練のわけないですよね?」


 イクスがジレッドに訊ね、ジレッドは食べ終えた使い捨て容器を投げ捨てた。


「なわけねーだろ」

「……ですよね」

「【炎の闇】にまんまといっぱい食わされたんだよ。トールのやつもふがいねえな。まあ人形如きに人間の心の機微がわかるわけねえんだよな」


 あーあ、エスメラルダにいたかったなあ――と、ジレッドは、ため息と共に吐き出した。

 フランチェスカはそわそわした。どうやらグールドがレジナルドとの契約を無視してエスメラルダに現れ、大事件を起こしたというのは確からしい。なぜ? なんのために? 


 フランチェスカは、そしてレジナルドもトールも、こちら側の人間は皆、グールドが裏切るなどと思ってもみなかった。多額の報酬、破格の高待遇に加え、狩人であるグールドが魔女を狩るという仕事を厭うわけがないし、おまけに魔女を守っているのは【風の骨】だ。


 【風の骨】はガルシアでグールドを騙して捨て駒にした。恨んでいたはずだ。


 それなのに、グールドのような殺人鬼が、その恨みをはらすよりも、エスメラルダに行くことを優先した。


 胸騒ぎがする。ウルクディアで見たあの神の娘の威圧が、脳にこびりついて離れないせいかもしれない。

 グールドは、なぜこんな事件を起こしたのだろう。何がしたかったのだろう。この事件を起こすことで、一体何を得ようとしたのだろう。それがマリアラに無関係だとは、もはや思えなくなっている。新人保護局員の機転のお陰で事件が解決した、と記事にある。解決したということは、グールドは、捕まるか殺されるかしたに違いない。グールドも馬鹿ではないはずだから、エスメラルダでこんな事件を起こしたら、自らの命はないことくらいはわかっていたはずだ。命を賭してでも遂行せねばならなかった目的。それは果たされたのだろうか。


 防風林のベンチの近くに、真新しいマリアラの似顔が貼ってある。

 それを見て、フランチェスカはグールドへの強い憤りを感じた。なぜ捕まえなかったのだ。最悪の殺人鬼のくせに、なぜ。 




 イクスはショルダーバッグをそこに置いたまま、もう一度鈴カステラを買いに行った。

 ジレッドはベンチに長々と体を預けて微動だにしない。フランチェスカは新聞の次のページを読んでいた。リーザ=エルランス・アナカルシスの記事が載っていた。彼女が今までに犯してきた犯罪の数々。ガルシアの若き御曹司の評判は高く、婚姻としては不釣り合いではないか――というような、下世話なゴシップ記事だ。どうでもいい。すぐに飽きてフランチェスカは、ショルダーバッグの陰から周囲に視線を流す。


 その時、ふと、おかしな風体の二人組に目を奪われた。


 借りてきた服を着ているかのような、着心地の悪そうな二人だった。中肉中背の、ジレッドくらいの年齢の男と、アロンゾ=バルスターくらいの年齢の男。一目見て、この辺りの人間ではないと分かる。エキゾチックとでも言うのだろうか、切れ長の目と、低い鼻。この辺りに大勢行き交う人々の中で、一際その二人に目を奪われたのは、その二人がマリアラのチラシに見せた反応のせいだった。


 二人はギョッとして、立ち止まったのである。


 フランチェスカが注視する間に、二人はマリアラのチラシを見ながら何やら話し合っているようだった。あのチラシを初めて見たのだろうかとフランチェスカは考えた。と言うことは、あの二人はアナカルシスの人間ではない。あのチラシはあまりにもいろいろなところに貼られすぎていて、今さら注目する人間などアナカルシスにはほとんどいないくらいなのだ。レイキアかどこかから、この港町にやってきて、今初めてこのチラシを見たに違いない。


 と、一人が懐を探って、折り畳まれた紙を一枚取り出した。

 フランチェスカはショルダーバッグから滑り出て、足を忍ばせるようにしてその二人に忍び寄った。陽の光に、二人がチラシと見比べているその紙が透けて見える。二人の人間が書かれているようだ。裏側から見るその絵がゆらりと揺れたように見え、ぞくっとさざなみのようなものが全身を走った。


 ――これは、〈水鏡〉ではないか?


 二人は何やら言葉を交わしているが、その言葉はわからない。が、〈水鏡〉らしき絵にもマリアラが描かれているのだろうということくらいはわかる。

 ちっと舌打ちをしたくなった。〈水鏡〉はこの世の行く末を示す、アシュヴィティアにとっても大切な宝物である。エルカテルミナに独り占めさせるなんて。


 子供じみた敵愾心を抱きながらフランチェスカは、苛立ちに任せてその紙に向かって飛びかかった。


 爪は立てなかった。しかし死角から出し抜けに漆黒の生き物に飛びかかられた二人は〈水鏡〉を取り落とした。はらりと地面に落ちたその紙に描かれていたのは、果たしてマリアラだった。精緻な筆致で描かれたそれは、確かに〈水鏡〉のようだった。木炭で紙に写されているが、それはかつてこの世に漂ったことのある光景の残滓が具現したものに過ぎない。


 〈水鏡〉の中でマリアラは笑顔だった。マリアラのすぐ隣にいるのはあのフェルディナント=ラクエル・マヌエルだった。森の中で二人は水でできた巨大な立方体の前に立っていた。マリアラが立方体に手を当てて、フェルディナントを振り返っている。これ、すごい。彼女は今にもそう言いそうだった。


 否応なしに、記憶が呼び覚まされる。


 一年以上前だ。まだマリアラが正式な魔女になる前、3人の右巻きのラクエル達との相性を見るための研修をしていたとき。その少し前に南の大島に狩人が魔物を解き放ち、島にある森林の、かなりの面積が汚染された。マリアラ達の研修はその森の浄化作業が主だった。森の一部を右巻きの呼んだ水に沈め、左巻きがその中から毒を引きずり出すという方法はあまりにも画期的で、予定されていた日数をはるかに短縮することになった。


 ああ、忌々しい。【魔女ビル】の地下神殿で、同じ方法で、マリアラはフランチェスカから毒を引きずり出したのだ。

 よりによって、あの屈辱を呼び覚まされるだなんて。


 フランチェスカは怒りに任せてその〈水鏡〉をぐちゃぐちゃに引き裂こうとしたが、それより前に、異国風の二人組が慌てたようにそれを拾い上げてしまった。フランチェスカはカッとして、もう少しで喚き散らすところだった。そもそも〈水鏡〉を、過ぎ去った過去の断片を覗くためだけに使うだなんて無駄遣いにも程がある。今の持ち主が誰だか知らないが、正しい使い方を知らないのだろうか。宝の持ち腐れとはこのことだ。


 謎の二人組は、毛を逆立てているフランチェスカにはあまり注意を払わなかった。おそらく子猫だと思ったのだろう。〈水鏡〉の汚れを払うような仕草をして、丁寧に畳んで懐に入れた。もう一人がマリアラのチラシに手を伸ばして、ちぎりとった。同じように畳んで、懐に入れている。


 〈水鏡〉までマリアラの手に渡ったら目も当てられない。フランチェスカはそう考えた。

 エスティエルティナも、アスティファヴィテスも、まだどこにあるかわからない。エスティエルティナは時が満ちれば勝手に飛んでくるだろうが、アスティファヴィテスを探すには、〈水鏡〉が不可欠だ。

 この二人を見張るべきだ。この二人についていけば、〈水鏡〉に辿り着く可能性が高い。


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