38/765
プロローグ
朝九時。日勤の始まりだ。
今日からまた一週間、相棒選出のための研修が始まる。今回の相棒(暫定)は、フェルド――フェルディナント=ラクエル・マヌエルだ。背が高い。真っ黒な硬そうな頭髪は短く切られ、黒々とした眉毛が一本気な内心を窺わせる。
彼の前に立ち、マリアラは、頭を下げて挨拶をした。
「おはようございます。今日から一週間、よろしくお願いします」
どういう反応をするだろう。少し緊張する。
ダスティンのような反応をされたらどうしよう――
と、視界の中に見えるフェルドの足が、踵を揃えるのが見えた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
思いがけず丁重な挨拶が返ってきて、マリアラは顔を上げる。穏やかな声。照れるでも、馬鹿にするでも呆れるでもなかったその反応に、マリアラはホッとした。
目が合うと、フェルドはニッと笑った。穏やかな印象が気安い雰囲気に変わって、マリアラは更にホッとした。
――大丈夫。きっとうまくやれる。
短かったので、もう1ページ更新します。