第二章11
次の日の、昼。
マーシャがイーシャットとフェルドの前に築き上げた食事は、大変豪華なものだった。
待遇も変われば変わるものである。マスタードラがいないということを忘れてないだろうか、と心配になるほどの量のご馳走の山。
マーシャ特製のたれをかけると、ただの野菜も光り輝く特別な前菜になるのが不思議だ。水鳥の肝臓の練り物に刻んだ香草を混ぜ合わせ、こんがり焼いた薄切りのパンに乗せたもの。牡蠣を煮た油で作った魚介と野菜の炒め物には刻んだ牡蠣の油煮がたっぷりと乗り、薯とにんじん、玉葱入りの黄金色のスープには、猪肉の薫製もどっさり入っている。さらには余分な脂を落とし旨味がみっちり詰まった野兎の蒸し焼き。これでもう充分すぎるほど贅沢なのに、最後にしょうがの効いた豚の香草焼きが出てくるに至って、フェルドが心配そうにこちらを見た。大丈夫なのかと目で問われて、イーシャットは頷く。マーシャは喜びを料理で表現する人なのである。恐らく野兎までは今日の晩ご飯にと準備されていたのだろう。ルファ・ルダの統治権をムーサに奪われずに済んだ喜びが、この、贅沢な豚――国を挙げての狩りの真っ最中に敢えて出される家畜の肉、の、香草焼きだ。獣肉も悪くはないがどうしても筋張っていたり独特の匂いがあったりするので、やはり家畜の肉は格別に美味い。恐らくは王や第一将軍を急にもてなすことになった時に備えて準備されていたものに違いない。しかし大丈夫、食っていい。食ってもいいが、胃袋は大丈夫じゃないかも知れない。
「旨いなあ……」しみじみとフェルドが言う。「昨日のお礼って言われるとなんか後ろめたいけど……」
「大丈夫だって。すげーいいことしたんだ。エルギン様の居場所も、ルファルファの統治権も守られたんだからいーんだって」
返事の代わりにフェルドは、切り分けられた豚のもも肉に噛みついた。肉汁が飛んだのが見えた。イーシャットも自分の分に噛みついた。確かにイーシャットも少々気が咎めている。ムーサだけを脅かして追い払ったのならこんな気持ちにはならなかっただろう。が、カーディス王子の、泣き声が、ひと晩経っても耳の奥にこびりついている。
――兄様が死んだなんて! もっと遊びたかったのに! 兄様が死んだなんて……!
他に手がなかったとは言え、兄を慕う小さな弟を、よってたかって騙して脅かして怖がらせて哀しませたという構図である。後味が悪いことこの上ない。
それにしても、どうやって炎を消していたのか、それが不思議でならなかった。風を吹かせるだけならニーナもできる、と聞いている。が、あれは風を吹かせていたわけではない――たぶん。床下の足音に合わせて蝋燭を、ひとつ、ひとつ、消していった。風にあんな器用な真似は出来ないのではないだろうか。そう言えば夕刻、真っ暗闇の中で、王子の上着を確認するために必要な明かりを出して見せた。あの時はまだ、巾着袋を取り戻してもいなかったのに。
“雲の上の国”って、どんなところなのかな。
カーディス王子への後味の悪さから頭をそらせるために、思いを馳せてみた。
ぎらぎら光る稲光の渦の中、あちらはくっきりと際だって見えていた。彼らの背後にあった、ぎっしり詰め込まれた本棚ひとつ取ってみても、あちらの裕福さがわかるというものだ。本――本である! あの量の本が、あんなに無造作に棚に詰め込まれ、あるいは積まれているなんて……あそこは王立図書館か、学問所なのだろうか。しかし、そういった雰囲気でもなかった。どうも、あの女性か初老の男の自室、という気がする。学問の国ティファ・ルダにだって、個人であんな量の本を持っている人間はいない。
注目すべきは、あちらにいた“姉”も“おじさん”――フェルドはあの二人のことをそのように説明した――も、フェルドが初めに着ていたような衣類を身につけていた、というところだ。
あんな衣類と靴、エリオット=アナカルシス国王陛下だって持っていない。なのにフェルドは元いた世界で、別に王族のような特権階級にいたわけではないらしいのだ。身分で言えば、普通の人間なのだろうか。だとすればあんな衣類も、不可思議な道具がぎっしり入ったあの魔法の袋も、一般の人間が普通に身につけているもの、ということになる。圧倒されるほどの文化の差。
エリオット=アナカルシス国王陛下は、“雲の上の国”の存在を知ったらどう思うだろう。ふと、そんなことを思った。
ランダールや学問所の変人たちのように、研究したがるだろうか。
それとも――征服したがるだろうか。
ルファ・ルダの人たちは皆耳ざとかった。昨日、狩りに行かない老人たちから“軟弱”だの“へろへろ”だのとからかわれていた若者が、どうやらルファ・ルダの危機を救ったらしい、という話はあっという間に広まったようで、窓から覗く通行人たちがちょいちょい声をかけてくる。皆忙しいしマーシャにすぐ追い払われるので、窓に鈴なりの人だかり、という程の事態ではないが、平時だったらきっとそうなっていただろう。
と。
そんな通行人たちの向こうで、性急な足音がした。
イーシャットとフェルドがいるのはランダールから宛がわれた“賓客用”の小屋である。通りを挟んだ向かいにはランダールとニーナの家がある。その通りを誰かが走ってくるのだ。その足音のあまりの不穏さにイーシャットは満腹も忘れて飛び上がった。窓に駆け寄ると、向こうから“おらマーシャの飯を残すつもりか若者のくせに情けねえ”と野次っていたおやじが、ちょっと身をひいた。
「なんだイーシャット、本気で怒んなよ」
「違う、ちょいとごめんよ。――おいちょっと、お前、あれだほら、リック! リックどうした、何があった?」
走ってきたのはゲルトが重宝している少年だった。神官兵見習いだが、結構しっかりしており記憶力が良く気働きが出来るというので、ゲルトが傍において使いっ走りをさせている。リックはイーシャットをちらりと見て、足を止めかけ、何か言いかけたが、急ぎの用事の方を優先した。何も言わずにランダールの家に駆け込んだ。イーシャットは恐らく甘味を用意しているであろうマーシャに向けて叫ぶ。
「マーシャ! 悪い急用出来ちまった! ごっそうさん! この辺の、晩飯でも食いてーから取っといてー!」
マーシャはびっくりした顔をしたが、いいですよ、と頷いてくれた。フェルドが腰を浮かせる。
「どうした?」
「わかんねーけど探ってくるわ、お前はゆっくりしてろ。昨日の捜し物の続きでもしてろよ、言ったろ、もうルファ・ルダん中どこ歩いても咎められねえって」
言い置いてイーシャットは窓から飛び出した。消化を求める胃袋が悲鳴を上げるが、構ってはいられない。
リックはすぐに出てきた。問いただすよりついていった方が早そうだと、イーシャットは何も言わずにリックの後を走っていった。体が重いが、何とか追い縋る。リックは特にイーシャットを撒こうともしていないのが助かる。イーシャットの――つまりエルギン王子の――ために用意された家の方、闘技場のある方へ下っていく。
「魔物が」とリックが走りながら言った。「いよいよ、危険に、なったから」
「あー」
「ルファルファも、入れって、将軍の、使者が」
「ああー」
いよいよ来たか。そう思った。
魔物の襲撃から二日近く。今までルファ・ルダに出兵命令が出ていなかったのは、ここにマーセラ神官兵の中隊が駐屯しているからだ。マーセラはルファルファ神を邪神に貶めることで自らの存在意義を保っている神だ、その“邪神”の力など面子に掛けても借りるわけにはいかない。
しかしここはルファ・ルダである。彼らに地の利はなく、それは、第一将軍率いるアナカルディア及びラインディア連合大隊も同じことだ。第一将軍は出来るなら初めからルファルファ神官兵の力を借りたかったはずだ。恐らく今まではムーサの顔を立てていたのだろうが……
――昨日のことで、ムーサ怒ってんだろうな。
ちょっと、嫌な予感がした。
もともとが気短で残忍な男だ。ルファ・ルダの統治権という果実にあそこまで迫ったのに、尻尾を巻いて逃げ帰ったという事実には、臓腑が煮えるような気持ちでいるだろう。昨日の今日という、よりによってこの時機に将軍からの呼び出しか。昨日の事件はまさか関係ないよな――? と、走りながら考えた。
リックが向かったのはやはり闘技場だった。
闘技場は大きな遺跡だ。かつてルファ・ルダが華やかだったころの。ルファルファ神の聖地として大陸中から巡礼者が訪れ、アナカルシスなんか田舎の格下の小国に過ぎなかった頃、エルカテルミナの巡幸が盛大かつ雅やかな大行列で行われていた頃の、名残である。全体的にすり鉢型をしている。四方に背の高い塔が建っていて、観客席に囲まれた中央には、かつては大理石の一枚板が置かれていたそうだ。今は広々とした、踏み固められた地面になっている。マスタードラは毎朝ここで修練を積むが、イーシャット自身は普段あまり来ない。観客席の下に作られた薄暗い通路を抜けると、中には結構大勢の人間がいた。
イーシャットはリックと共に駆け込むような馬鹿なまねはしなかった。
何しろエルギン王子が今行方不明であり、公式には“ちょっと遠くの狩り場へ遠征中”ということにしてある。もちろん方便であると、王も第一将軍もわかっているはずだ。何とかエルギン王子を捜し出し、狩りの終了日に何食わぬ顔で連れ戻すまで、見つからないに越したことはない。
通路で中をうかがい、このまま近づくのはまずいと判断して通路を逆戻り。何とか盗み聞きできる場所がないかと捜すことにする。ちらりと見えた闘技場の内部の様子を思い出しながら思案した。中央に簡易天幕が張られていて、長いすと机が運び込まれていたようだ。座っていたのはランダールと――イーシャットの記憶が正しければ、第一将軍の使者ではなく第一将軍その人だった。それならば、中にいた兵士がかなり大勢だった理由が良くわかる。将軍の護衛として来た、ラインディア兵だろう。ラインディアはヒルヴェリン=ラインスターク将軍の領地である。国の守護者たる第一将軍の子飼いの兵であり、誇り高く有能で、小細工も買収も通用しそうにない。
イーシャットはぺろりと唇をなめた。ラインディア兵に見つからずに近づいて中に入って彼らの話を盗み聞く方法として、一番現実的なのは、アナカルディア兵もしくはマーセラ神官兵に変装することだろうか。それとも危ない橋を渡るのはやめて、リークに後で小遣い渡すなりして話を聞き出す方が良いだろうか。そう思いながら諦めきれずにうろうろしていると、
「そこの」
聞き覚えのある声がした。イーシャットはぎょっとした。
エリオット=アナカルシス国王陛下が、目の前に立っていたのだ。
何度見直しても間違いない、国王陛下そのひとだ。イーシャットは愕然とした。王は平服を着ており、剣もはいておらず、たったふたりのお供をつれているだけだった。ぱっと見ただけでは、ぶらぶらと散歩している良家の旦那にしか見えなかった。エリオット王は確か三十代の半ばだったはずだ。巻き毛もたっぷりとして若々しい。イーシャットは一瞬の驚愕から醒め、慌てて平伏した。同時に――血の気が引いた。ヤバイ。
「どこかで見た顔だな」
エリオット王は言いながらぶらぶらと歩いてきた。平伏したイーシャットの視界に、王の履いている仕立ての良い革靴のつま先が見えた。ヤバイヤバイ。ヤバイヤバイ。イーシャットはめまいさえ感じながら、必死でこの事態を切り抜ける方法を捜した。
イーシャットがここにいることを、王に知られてはまずい。
つーか何やってらっしゃるんですこんなとこで! つーかなんで俺の顔まで覚えててくださってるんです! 普段なら感涙するところだろうが、今はそれどころではない。
「名は何と申したか」
王はしゃがみ込んだ。イーシャットのすぐ傍、イーシャットが短剣を握って振り上げたら刺せるほどの距離である。何やってんだ。勘弁してください。イーシャットとしては万一護衛に誤解されたらと思うともう、指一本動かせない。
「聞こえぬか」
「い……いえその、な、名乗るほどのものでは……」
「何を申す、エルギンの侍従であろうが」
バレてました。
「あれはまだ子供であるゆえ至らぬ点が多かろう。そなたらには苦労をかけるな」
「も、もったいないおことばで」
「今は狩りの遠征に出ておるとか。そなたひとり留守番か。ルファ・ルダとマーセラとアナカルディア兵とラインディア兵の交錯するこの地で、エルギンの不利にことが運ばぬよう事態の把握につとめるとは、侍従として天晴れな姿だな。そう思わぬか」
それは護衛に投げた言葉らしい。さようですなとか護衛たちが調子を合わせている。イーシャットは生きた心地がしなかった。絶対わかって言ってる。絶対わかってて、からかってる。
口調の端々からもわかる。エリオット国王陛下は、ものすごく機嫌が良かった。ご機嫌、と言ってもいいほどだった。平伏したままのイーシャットに、国王陛下は楽しげな声をかけた。
「名は何と申したかな。何度も聞かせるな」
「も、申し訳ございません。イーシャットと申しまする」
「イーシャットか。そうか。そなた、あの闘技場の中を探ってまいれ」
「は!?」
思わず顔を上げたイーシャットは、エリオット国王陛下の笑顔を見た。
やっぱり陛下は、ものすごくご機嫌だった。晴れ晴れとした楽しそうな笑顔は、幸せそうと言えるほどだった。
「私はあの中へは入れぬ。しかしそなたなら入れるだろう。ルファ・ルダとのよしみはあれど完全な身内というほどでもなく、マーセラともラインディアとも縁が薄い、うってつけの人材だ。そなた、今だけ私の間者となれ。あの中を探ってまいるのだ。幸いそなたの面はまだヒルに割れておらぬ」
「…………ランダール様には割れておりますが」
「大事ない。だが私の命で探りに来たということは大っぴらに出すな」
何でご自分で行かれないのかと一瞬思った。
何しろ国王である。第一将軍だとて王が話を聞きたいと言えば無碍に追い返すことはできないはずだ。こんなところで平服でうろうろしたりしてないで、さっさと中に行って何食わぬ顔で座ってたっていいはずだ。
しかし、すぐに気づいた。
ここはルファ・ルダであり、六年前に、他ならぬこの王の命令でこの国は滅ぼされた。ランダールにとってこの王は、両親の仇だ。
イーシャットの逡巡に、王は、何を考えたか悟ったらしい。ごく僅かに、その笑顔に翳りが見えた。
王は、後悔も謝罪もすべきではない。なぜなら、六年前の征服はアナカルシスという国にとって、必要不可欠の出来事だったからだ。王があの決断を下さなければ、アナカルシスの国民は未だにルファルファとマーセラの狭間で惑い、国も荒れる一方だっただろう。今さら後悔の素振りなど見せては、王の命令で“神殺し”を遂行した兵たちが気の毒だ。
だから王は何も言わなかった。表情を変えもしなかった。イーシャットは畏まり、深々と頭を下げた。
「……畏まりましてございます」
王は喜んだ。よしよし、と頷いてイーシャットの肩を叩いた。
「リーンベルク。そなた入口まで送って行ってやれ。あまり目立たぬように。ラインディアの兵にはそれでわかるだろう」
「御意。こちらへ」
促されてイーシャットは、リーンベルクと呼ばれた護衛のところへ行った。
護衛は、国王陛下より少し年かさの、四十代に見えた。イーシャットが彼の前に立つと、片頬を上げて微笑んだ。彼が先に立って歩き出し、イーシャットは国王陛下へ礼を一つしてその後に続く。
それにしても、少々心配だった。ラインディアの兵は国王の護衛が伴ってきたイーシャットを、無碍に追い返すことはしないだろう。しかし会合を盗み聞きできる場所まで近づくことができるだろうか。近づけず、結局中の話を探れなかったとなったら、首をはねられたりしないだろうか。
リーンベルクはイーシャットを振り返り、苦笑した。
「そう難しい顔をするな。心配ない。陛下は今日はものすごくご機嫌がよろしいのだ。以前はよくこう言った気まぐれをされた。――重要な軍議の内容は、第一将軍から報告されるはず。陛下は本気でそなたに、詳細を探ってこいと言われたわけではない」
「そう――なのですか」
「ご自分の息のかかった者があの中に潜り込んだ、という、ささやかな楽しみをご所望なのだと思う。エルギン王太子殿下の側近だと申したな」
「はい」
「こたびの会合にはマーセラ――カーディス王子側の方々は呼ばれておらぬ。そなたをご自分の間者に仕立てることで、エルギン王太子殿下を内々に優遇されたのかもしれぬ。そなたは自分の仕事をすれば良い。終わったら私を捜せ」
闘技場の通路に戻ってきた。その暗がりで、護衛はつと、足を止めた。
「つかぬ事を訊ねるが。……黒い猫の行方を知らぬか」
「は」イーシャットは目を見開いた。「黒い……猫、ですか?」
「そうだ。いつの頃からか陛下のお側に黒い猫が現れるようになった。幾度か捕らえようとしたのだが、捕まえられぬ。仲間を集めて人海戦術で捕らえようとしたところ、陛下から無用であるとのお言葉があり、気になってはいたものの手が出せなかった」
「……黒い、猫」
「猫……だと思う。そのように見える。……昨日あたりから姿を消したのだ。陛下は」
護衛は言葉を切り、少し、悲しそうな顔をした。
「昨日からご機嫌が良いのだ。幸せそうな顔をされている。そう思うのは不遜であろうが」
「いえ、そのような……」
「……いつかエルギン王太子殿下が王位を継がれたら」
「……」
「覚えておかれるといい。黒い猫に気をつけろ。おかしなことを言うと思うであろうが、私にはそうとしか思えぬ」
先程の、国王陛下のご機嫌は、ことのほか良かった。晴れ晴れとして、とても――そう、幸せそう、と言えるほどだった。
護衛の気持ちはとてもよくわかった。イーシャットだって、エルギン王子がひとり悩まれ苦悩されていたら、その原因を突き止め排除したい気持ちに駆られる。実際にはそんなことはできない。王や王子はおそば近くに寄ることは出来てもやはり、イーシャットとは生きる次元が違う人たちだ。次元の違う問題を、解決して差し上げることなどできないし、出来ると思うのは、それこそ不遜なことだ。だからこそ、自分の無力さに悔しくもなる。
「お言葉」イーシャットは胸を一つ拳で叩いた。「胸に刻みます。私の名はイーシャット、エルギン王太子殿下に拾っていただいた、名字もない平民でございます。本来ならお目にかかりお話を伺うなど許されぬ身の上でございますが、我が王子へのご忠告を承ったよしみで、できれば」
「うん」
「お名前を伺えませんか。どうか」
「私の名は」護衛は苦く笑った。「コール=リーンベルク。陛下のおそばから黒猫一匹、追い払うこともできぬ男だ」