音楽鑑賞:龍蒼 ルート1 女装男子
私は部屋で久しぶりに音楽鑑賞をすることにした。
小学生の頃のCDプレイヤーはいまだに健在で、ネット配信されていないマイナー歌手の曲はよくディスクを買っていた。
「……プレミアついてるかな」
――CD一枚売ったところで、大学はさすがに無理だろう。
何度かループして飽きたので、ラジオを聴いてみるとヴィジュアルバンドの歌が流れていた。
名前はよくしらないけどクラスメイトにこういうの好きそうな子がいたなあ。
――そうだ明日は休みだし、お金使わないどこかで暇を潰そう。
●
「ね~きみ~かわいいね~」
これが噂に聞くナンパというやつか、ミントアイス色の髪をした美少女がチャラ男に声をかけられていた。
「ボクがかわいって当然じゃん?」
「デートしてちょ」
女の子は迷惑そうに男をあしらっているがKY野郎はぐいぐい迫る。
「ごめーん待った?」
「ぜんぜん!」
私が彼女に手を振ると、向こうから手をとって走り出した。
「助けてくれてありがと」
――なんか彼女はどこかで見た感じがする。
「ううん」
「ボクは最近隣町からこの辺りに引っ越してきたんだけどさ」
可愛い見た目に反してボーイッシュな話し方をするんだ。いわゆるボクっ娘ってやつかな?
「じゃあもしかしてうちの学校の転校生だったり?」
「かもしれない」
――なら隣のクラスなんだよね。
「あーショックー」
二人組みの話し声が聞こえる。
「レイス様に彼女なんてぇ!!」
――アイドルかなんかだろう。
「ねえ、バンドとか好き?」
「とくに興味はないかな」
「……よかった」
「あ、私は四神深世っていうんだ。あなた名前は?」
「豆羅龍蒼」
―――それ男の子の名前だよね?
「もしかして流行りの女装男子?」
「うん」
親戚にマジモンがいるから大して驚きはしない。しかし女子より可愛いって―――