お風呂:盤上アイン ルート1 美容師
私は暇な時間がもったいないので夕方からお風呂に入る。皆は仕事で遅くいつもは夜に入っているが観たい番組があることを思い出した。
ついでに辛口ぽっちゃりオネエの出ている番組の毎週録画を頼まれていたのでやっておこう。
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「深世、ちょっといいか」
金曜日の夜、父がようやく見つけた仕事から帰ってきた。
新居の給料が支払われるまで一月はここに住まわせてもらうだろう。
「なに?」
「それがな……」
詳しくは言われなかったが、明後日写真をとる必要があるらしい。
なので明日、土曜日だし美容室で髪のケアをしてもらいにいこうと思う。
家族写真でもとるんだろうか。
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「いらっしゃ~い」
家の近くの美容師にはオネェ口調の美容師さんがいる。
「じゃあシャンプーと毛先をお願いします」
美容師になる前にメイクの仕事をしていたので、お客さんに打ち解け安い用に演じていたその口調が癖になったのだそう。
テレビでみるメイクの人みたいな感じかな?
本人は付き合った相手が事ごとく危ない人でそれ以来、女性が苦手らしいが、男性を好きなわけでもないという。
高校の入学式前に髪を切り揃えて貰った日に笑いながら話してくれた。
「ずいぶんと久しぶりだけど、デートでもあるの?」
「あ、いえ、たぶん家族写真だと思います」
「あら、ちょっと毛先割れてるわ」
普段リンスくらいでケアをしないので、枝毛があったようだ。
しばらくして整えて、髪を乾かす行程が終わった。
「ありがとうございました~」
店員さんたちに見送られる。