9.ヒロイン、大事な事に気がつく
説明回です
陽野 小菊。
原作の中では、高校時代からの友達だった。
現実では今の時点で、中学一年で友達に。ということはまたもやイレギュラーか…と言われるとそういうわけではない。…と思う。
確信が持てないのは、私の記憶がおぼろげだから。前世の記憶だしね。
今さっき経験した出来事を、私は読んだことがある。
原作ではなく、ネットに載せてあった二次創作の小説で。
もし『小菊と鈴蘭が中学時代に同じクラスだったら』という内容。ちなみに原作では鈴蘭と小菊と信也は高校一年で初めて同じクラスになる。
そして、あの既視感。ずっと前の記憶と重ね合わせて、さっきの小菊ちゃんの言葉と笑顔を思い浮かべる。
『姫百合さんが謝るなんて、すっごいお人好しだねぇ。あたし、そういう子好きだよ!』
うん。確かに読んだ。さらに言うとあの眩しいくらいの笑顔も挿絵で見たよ。
記憶もはっきりしてきた。
「まじか〜」
思わずベッドの上でゴロゴロと転がってしまう。まあ自分の部屋だし。誰も見てないから大丈夫。
でも…二次創作もアリなのだとしたら、これからの展開も無限にあるということだ。
私が知らないストーリーも山ほどある。怖い。
誰か、逆ハーのストーリーとか書いてないよね?書いてたら呪う!孫の代まで呪ってやる〜!
ベッドの上で手足をばたつかせる。
…落ち着こう。
もう一つ考察。
なぜ私はあの時イキナリ、友達になってくれませんかとか口走ってしまったのだろうか。ひかれてしまう可能性だってあったのに。
それに、小説では小菊の方から『友達になってくれないかな?』と誘ってくれる。ここはイレギュラー。
私が起こした、漫画とも小説とも違うストーリー。でも後悔はしていない。
私は私の意思で動きたかった。かっこいい小菊ちゃんと友達になりたいと思った。私が行動を起こした理由はそれで充分。ただ…この子と友達に『ならなくちゃいけない』、とも思った。もしかしたらその気持ちは、物語を進める上での強制力のようなものなのかもしれない。
─── 本当にそう思ってる? ───
(え?)
「…なに今の」
頭に直接語りかけられているような声。─── 私はその声を知っているような気がする。
…頭が痛い。
「姉さん、夕飯なので降りてきてください。運ぶの手伝え。」
下の階からの雷兎の声。それと同時に頭痛がピタリと止んだ。
もうそんな時間か…。階段を使い下へ降りる。
「雷兎、猫被らなくていいの〜?」
私としては両親にまで猫被りモードでいなくていいと思うのだけど。
お母さんやお義父さんが雷兎を嫌うはずない。でも本人は断固として猫被りをやめない。
私がこの話題を出すときはことさら軽く、からかうように言う。重く言ってしまうと顔には出さないが雷兎が深く考えてしまって落ち込むことを知っているから。
「今日は父さんと母さんが一緒に外食しているから、家で猫被りは必要ありません。それより早く手伝って下さい。」
「はいはい。」
我が弟はかっこいい上に料理もできる。そのほか色々ハイスペックだし中学あがったら目立つよなぁ。
雷兎も来年は同じ学校を受験する予定だから、校内で私に話しかけないように言っておこう。そうしよう。
本日もありがとうございます!
今日は二話連続投稿を致しました。もしお時間があれば、次話も読んでみて下さい。
ヒーローが久しぶりに登場です。