表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/51

8.ヒロイン、またまた既視感

「おはよう!姫百合さん。いきなりで悪いんだけど、入学式の時、何してたの⁉︎」

「学校には来てたよね?私、見たよ!」

「それに、王子にお姫様抱っこって羨ましすぎぃ!!」

「え、何?王子って誰?お姫様抱っこ⁉︎」

「あ、王子っていうのはねぇ」


とりあえず、席に座らせてくれないかな…




入学式の翌日。『友達作るぞ!』と張り切って登校したはいいものの。ただいま教室で女子に囲まれ中です。

いや、いいんだよ!? 私からしたら『女子に囲まれている』、『男子に遠巻きに見られている』。

これ以上ハッピーなことはないと思っているんだけどね。ついでに、友達作りのチャンスじゃない⁉︎とか考えているんだけど。W A D A I !話題 がね…。噂、広まるの早くないっすか…

つか、王子って誰だよ?いや、もしかしなくても熊谷君のことだと思うけれど。あの人、2日目にしてもう王子って言われてるんだ…


「…ってことで、小学校の頃から『王子』って言われてるんだけどぉ。その王子と姫百合さんってどういう関係なのかなぁ、って。」


あ、ヤバイ。これって嫉妬の目だ。この子以外は好奇心の目で見てくるんだけど、このツインテールちゃんだけ嫉妬の炎が灯っている。

ツインテールちゃんの話しぶりだと同じ小学校出身っぽいから、熊谷君をずっと好きなのかもしれない。

(だからって私に嫉妬の目を向けるのはお門違いなんだけどな…)

それと、ツインテールちゃんをよく見てみると、気づいたことがもう一つ。

漫画にモブとして出ていました。

『王子をお見守りしようの会』会長として出てた。私…というか『鈴蘭』が熊谷 信也と仲良くなっていくたびに出陣してきて、嫌がらせをしてきた。うわー…

とにかく、私と熊谷君は無関係ということを分かってもらいたい。


「えっとね、その王子?熊谷君は、私が貧血で倒れちゃったから運んでくれただけだよ。偶然(・・)、近くにいたから」

「ふぅん…」


ツインテールちゃんは訝しげな表情を浮かべている。初対面の人にそんな目で見られたら、冷たい目で見られるのは慣れている私だって凹んでしまう。

ああ、私のガラスのハートが…!


そこでチャイムが鳴った。ああ、ありがとうございます、チャイム様‼︎ これほどチャイムに感謝したのは初めてだ。

みんなが散り散りに自分の席に帰っていく。私はというと教室に着いてから15分後の今、やっと席に座れました。


・・・・♢・・・・


「姫百合さん、姫百合さん!聞いてるのぉ?」

ああ、うざ…くないですね!女の子のクラスメートなんだから、大切にしないと。

とはいえ、朝からこの調子でずっっっっと尋問されてるし、少しくらい怒ってもいいかな?っていう気になる。周りの人たちも、同情の目で見てくるし、居た堪れない。

帰りの時間まで私に尋問してるのって、あなただけだからね!?天野さん!(天野さんとはツインテールちゃんのこと。自己紹介で分かった。)

友達作り、したいのに…


「聞いてますよ」

「だからね、王子は優しいから助けてくれたのであってぇ…」


耳たこです。もう、誰か助けて…!


「ねえ、天野さん。聞くけど、あなたってその王子様の何って言える?」


そう言い放ったのは、鮮やかな青のショートカットが印象的な陽野(ようの) 小菊(こぎく)さん。


「え?わ、わたしはぁ王子と同じ小学校のぉ、友達でぇ…」

「友達なんだ。彼女でもないなら、熊谷さん?の交友関係にそこまで口を出さなくてもいいよね。嫌われちゃうんじゃないかな?」

「っっ!」


す、すごい!天野さんを黙らせた。


「姫百合さんの言葉が信用できないなら、熊谷さんに直接聞いてきたら?友達なんだよね?」

「っっ!…もう今日はおいとまします!サヨナラ!!」


天野さんはドタバタと教室を出て行った。ちょ、ちょっとやりすぎた…?

教室は静まり返っている。その沈黙を破ったのは陽野さんだった。


「姫百合さん、災難だったね〜。大丈夫だった?帰りまで傍観していてゴメンね」

「あ、いえ大丈夫です! ありがとうございます。正直困っていたので、すごく助かりました。皆さんも、お騒がせしてすみません。」


すまなそうな顔をする陽野さんに慌ててお礼を言う。ついでに教室にいるみんなへの謝罪も。

教室の空気が和んで、みんな次々に下校して行った。

『大丈夫だった?』『ゴメンね〜』『王子とは偶然なんだよね!信じてるよ!』とか声をかけてくれる人もいる。いい人達だ!感動。


「姫百合さんが謝るなんて、すっごいお人好しだねぇ。あたし、そういう子好きだよ!」


陽野さんのパッチリ二重が細められて、にぱっと笑う。かわいい。

そう思うと同時に眩むような既視感。

(ああ、この笑顔は…)


「陽野さん!私と、友達になってくれませんか!?」

「え⁉︎」


驚いている。無理もない。一言、二言、話しただけで勢いよく『友達になってくれませんか!?』だ。

でも、私はこの人と友達にならなければならない。友達になりたい。

恐る恐る、私より5センチほど背の高い陽野さんを見上げる。


「あはは、イキナリだね!いいよ。あたしも友達になりたいな。」

「え?ほ、本当に!?」


返品不可ですよ!?大丈夫ですか?


「あ、それからあたしのことは『陽野さん』じゃなくて『小菊』でいいよ。姫百合さんのことは『鈴蘭』って呼んでいいかな?」


私はこくこくと頷く。


「じゃあ、小菊…ちゃん。よろしくお願いします!」

「うん、よろしくね。鈴蘭!帰り道どっち?あたし電車なんだよね。途中まで一緒に帰れる?」

「うん!駅方面なら、一緒に帰れるのは10分くらいだけど。」

「じゃあ行こうか!」


その日は小菊ちゃんと話しながら帰った。



本日もありがとうございます。

今回鈴蘭は自分のことをガラスのハートと言っていますが、男のこと以外は結構、強化ガラスのハートだと思います…^_^;

既視感の事などについては、また次回。出来るだけ早くに更新したいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ