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25.ヒロイン、バレたくない事情があるんです

背中にツゥ、と嫌な汗が流れる。誰か助けてください!

あ〜、沈黙が痛い。…なんで雷兎はよりにもよって私の前で義姉弟ってバラすんだよ。私たちが義理の姉弟ってことは隠すって約束したじゃん!納得してくれてたよね!?しかもばれたら気まずいこと間違いなしの熊谷君に。

はぁ、しょうがない。


「雷兎のヤツ、何言ってんだか…。熊谷君、信じちゃだめだからね?あの子、たまに真面目な顔で冗談言うから分かりにくいんだ」


信じろ!私の言葉を信じるんだ、純粋ヒーロー!


「え?冗談なの?」

「そうそう。からかって遊んでるだけだから」


なんだかじーっと見てくるけどここで目をそらしてはいけない。嘘だってばれてしまう。

あいつは最後の最後で爆弾落としていきやがって。家に帰ったら話し合いが必要そうだ。


「…えっと、ごめん、ちょっと混乱してる。チャイムなっちゃうし、教室行こう」

「混乱?何が?ちょっとした冗談だから気にしないでいいんだよ?」


いや、ガッツリ事実ですが。嘘ついてごめん、熊谷君。

足を進めながらそっと表情や仕草を確認してみる。

うーん。雰囲気的に疑ってるというより、不思議に思ってるって感じだな。なんだ?もしかして私の嘘がばれててなんで隠してるのか不思議に思ってる!?

やばいなぁ。熊谷君だけならまだ知られてもいいけど、うっかり口が滑っちゃうこともあるから。できるだけ知られたくないんだよね。


「姫百合さん、表情が…。感情が出てるよ。学校の中だけど大丈夫?」


え?そういえば『鈴蘭』を忘れてた!いけない、いけない。みんなのイメージ通りの高嶺の花でいないとね。


「私はいつも通りだと思うけど?…笑わないでくれる?」

「え?わ…らってないよ?」

「…肩が震えてるわよ、王子様」


そんなに表情に出てたかなぁ?え?「また表情に出てる」って?

ああ、ダメだな。熊谷君のまえだと上手く『鈴蘭』が作れない。なんでだよ。



・・・・◇・・・・



そもそもなぜ雷兎と義姉弟ということを隠したいのかというと。

もちろん、姉弟になったとはいえ若い男女が一つ屋根の下で暮らしているというのも聞く人によっては悪印象をもたれてしまうから、と言うのもある。


だが…。

─── 女の嫉妬をなめてはいけない。あの時はまだ前世の記憶を思い出してなかったので精神年齢正真正銘11歳の時に、そう悟った。


小学5年生。女の子はませ始め、女子同士のあれこれが面倒くさく…ゲフン。否、ややこしくなってくる年頃。

…うん。私は幸か不幸か友達がいなかったのでそんな面倒くさい問題に巻き込まれたこともなかったが。『一緒にトイレ行こ〜♡』とか言いながら友達に抱きついてる女子を冷ややかな目で見てました。でも私は、ああいう上辺だけの友情ならいらないんだ。綺麗事だけど、この人になら裏切られてもいいって思える人とじゃないと友達になりたくない。人間、自分が一番可愛いから最後の最後は味方でいてくれないかもしれないけど。どうせなら裏切られてもいい、この子と友達になれて良かったと思えるくらい好きになった人と友達になりたい。


あー、話が逸れちゃったかな。


代わり映えしない、1人での学校生活を過ごしていたある日。クラスのリーダー格の女の子に呼び出された。

あとは察しがつくかな?

一応話しておくと、その女の子は雷兎のことが好きだったみたいで。理由は『クラスの男子ってガキじゃん?それに比べて、雷兎くんって大人よね!王子様よ!この際、年下でも許してあげちゃう♪』だそうだ。そりゃあ雷兎の被ってる猫は化け猫だからね。外でガキっぽいことなんてしないでしょ。

っていうか前世含めて精神年齢30歳の私からしたら小学生の女子もまだまだ子供ですがね。


そしてそのあと言われた衝撃の言葉。今でも覚えてるよ。

『それでなんだけど、姫百合さん、雷兎くんに近づかないで?イイよね?』

ゾッとした。この女ボスは私が雷兎の姉だってことは忘れているらしい。思い出させてあげるためにそのことを口にしたら、『は?んなこと知ってるっつーの。義理の姉弟でしょ?姉弟ゴッコで雷兎くんに構わないで、ってこと』。

これにかなり頭きて、『私たちは本当の姉弟のように仲がイイんです。…あんたこそ雷兎に関わらないでくれる?』って言っちゃったんだよ。お口が悪くなっちゃったね。反省反省。

まあ、それからハブられて、朝来たら机が汚れてたりしたんだけど、そこまで実害がなかったことが救いだね。さすがにランドセル汚されたりはしなかったし。イジメというより嫌がらせ寄りだったかな。

そのうち、なにも反応しない私に飽きたのか終わったし。

あ、一つだけ実害あったな。廊下で雷兎と話してる時、そのリーダー格の子が割り込んできて、小声で『お高くとまっちゃって』とかなんとか言われた。別にそれはイイんだけど運悪く雷兎に聞かれちゃって家で問い詰められた。「授業以外は俺といましょう」って言われた時は驚いちゃったよ。別に暴力ふるわれてるわけじゃないし、それだと雷兎の学校生活に支障が出るから断った。穏便に済ませたいから、ってなんども言ったらなんとか分かってくれた。





小学生だからまだこれくらいの嫌がらせで済んだけど中学生になるとそうもいかないと思うんだよね。

何より私が怖いのは…


「ふぅ、お腹いっぱい。あー、でも甘いもの食べたいなあ」

「お昼食べたばっかりですよ?なんで小菊ちゃんはよく食べるのにそんなに痩せてるんでしょうね〜」

「成長期だからお腹が空くの!」

「…成長期なんてもう終わってるでしょう?」


友達が巻き込まれること。雷兎と義理の姉弟だってバレることで『血が繋がってもいないのに雷兎様のそばにいるなんて許せない!』とかいう危険な信者が出てこないとは限らない。

それでいじめられるのが私だけならまだイイけど、私のせいで大切な友達が巻き込まれるのは絶対に避けたいんだ。

『いじめられてる子の友達』って嫌な立場だよね。


うん、やっぱり熊谷君にもう一回確認しとこう。




閲覧ありがとうございます!

今回、短い!重い!でしたね。すみません…。

書きながら鈴蘭、鋼の心だなぁと思いました。

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