2.ヒロイン、この状況を整理しました
私「姫百合 鈴蘭」は、前世を思い出しました。
…。
え、何私…頭おかしくなった!?病院行った方がいい!?
いや、大丈夫なはず。でも…前世なんて、馬鹿げている…
…。
知恵熱が出そうです。
アレから私はお母さんと雷兎に何かしら言い訳をして(内容を覚えていない)自室に向かった。雷兎は「何こいつ」みたいな目をむけてきたような気がするから、後で部屋に押しかけてくるかもしれない。
まあ、それは置いといて。
仮にこの記憶が前世のものだとして、とりあえず整理してみよう。
前世(仮)の私は普通の女子高生だった。いや、普通とは少し違うかもしれない。
前世(仮)で私は…モテた。いや、これだけ聞くと羨ましがられるかもしれないが、度を過ぎると嫌になるものである。
まず、少なくとも2日に1回は告られたし、ラブレターは1日、10通ほど。ここまでならまだ良かった。嬉しいなで終わってたと思うし、私も最初のうちは嬉しかった。
だが…高校に入学して1週間。3年の間で人気の先輩から告白された。私が丁重に断ると、先輩は諦めてくれた…ように見えた。翌日、学校へ行くと、ある噂が広まっていた。それは『私が人気の先輩に告白した』というものだった。もちろん誤解なので、訂正してまわったが、噂は下火にはならなかった。多分、先輩は自分がモテることを自覚していたんだ。噂は先輩が私への嫌がらせでばらまいたものだと思う。推測だけど。
案の定、私は女の先輩方からイジメられはじめた。まあ、あんまり被害はなかったけどね。物隠されたりはしなかったし。同級生の女の子から避けられはしたけど。
2年生になって、イジメは落ち着いた。
だけど、女の子達からは2年生になっても、夏頃になっても、相変わらず避けられていた。私の大切な、大切な親友を除いて。
(あれ?)
記憶がそこで途切れている…高校2年生の夏。
(もしかして、私、高2の夏に死んじゃった?)
そうだとしたら記憶が途切れているのも納得がいく。
それにしても…
(死ぬ瞬間って覚えていないものなんだな…)
いや、覚えていたら、それはそれで怖いので嫌だが。覚えていないというのも怖いものである。足下がフワフワしている感覚。どうして私は死んだのか。交通事故?殺人?そんな想像をすると、とても怖い。
だが、不可抗力でも親より先に死んでしまうなんて、とても親不孝だな、という考えがよぎる。
この他人事とはとても思えない感覚が、今世と前世の私がとけて混ざり合う感覚が、この記憶は本当にあった、前世で体験した記憶なんだよ、と囁いてる。
私はもうとっくに、前世を信じていた。
だとしたら、考えることはただ1つ。
ここは、前世で読んだ漫画の世界だ。
私は、前世でどハマりした漫画がある。いや、正確には、親友に薦められて、どハマりしたのだが。
タイトルは『ほんわか王子と高嶺の花』。
その名の通り、ほんわかしているマイペースな男の子と高嶺の花として扱われている女の子の恋物語である。
この漫画自体に問題はない。普通に面白かったし。
だがしかし…私がその漫画の世界に転生しているのだから、今は問題大アリである。
なんでそんなことが分かったかというと。髪を切って初めて気がついた。私は、その漫画のヒロインの外見にそっくりなのだ。言うの2回目だが。正確に言うと番外編に出てきた中学の頃の姿にだけどね。
銀髪のサラサラセミロングの髪のサイドを編み込んでいる髪型。紫色の瞳(外人かよ!)。肌は透き通るように白くて、頬はなにも塗らなくても桜色。
自分で言うのもなんだけど、相当な美人だと思う。うん。漫画で高嶺の花とか言われているだけあるわ。前世もまあまあ可愛かった(?)けど、比じゃないと思う。
そして、長年の違和感の原因にも気がついた。こんな髪色、日本人ではあり得ない!ハチミツ色だとか銀色だとか、あり得ないよねぇ。
一応、漫画の舞台は日本だけど。そこは漫画だから。ああ、スッキリした!
でも勿論、自分の容姿がヒロインに似てるからってだけで、漫画の世界だ!って確信をもった訳じゃない。
確信をもてたのは、私の義弟、「姫百合 雷兎」が居たからだ。漫画の中での雷兎は、今のように生意気じゃなく、天使のような子で、(もしくは猫をかぶってた?)なかなか上手くいかない姉の恋路をサポートしたりする。
私の知っている雷兎と性格はまったく違うが、見た目はこれまた瓜二つ。
納得するしかないよねぇ…
(でもでも、なんでヒロインなの⁉︎)
ヒロインといえば、ヒーロー役の男の子に、優しい義弟に(今世では優しくないが)、さっきは紹介しなかったがヒーローのライバル的存在に、たくさんのイケメンたちに囲まれるのだ。
そして、ここで大きな問題が生じる。
私は前世の高校時代、築けるはずだった交友関係を、平穏な学校生活を、男どもにぶち壊されてるのだ。
─── 枕に顔をうずめて準備をする。
恨んではいない。だが私は…私は…
「男が、大っ嫌いだーーーーー!」
思いっきり叫んでやった。
読んで下さり、ありがとうございます!