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15.ヒロイン、学園祭&誕生日パーティー

「スミマセーン、雪女さん、注文いいですか?」

「はーい、 今行きます」


「こちら、黒猫のプロフィットロールです。召し上がれ」

「キャー、かわいい!食べるのもったいない〜」

「美味しそう〜」


「いらっしゃいませ!トリック オア トリートです。いっぱい注文してくださいね!」

「うわっ、化け猫カワイイじゃん!」

「ねえ、休み時間まだ?オレらと回ろうよ」

「お断りしますね。ではこちらの席にどうぞ。ごゆっくり」

「はあ?待てよ!」

「まだ何か用がありますか?お客様」


わお!茉里ちゃんの冷ややかな目がすごい!チャラ男さん達もタジタジです。

茉里ちゃんが可愛いのは分かるけど、ナンパ禁止だからね?


1年1組、『ハロウィンカフェ』大盛況!満員御礼!予想外!

…ベタな催し物なのになんでだろう。メニューもそんなに凝ったりしてないのに。


『雪女のフローズンフルーツ』─── 市販のものです。


『黒猫と白猫のプロフィットロール』─── 市販のプチシューにチョコレート、ホワイトチョコレートをコーティングしただけです。黒猫、白猫、どちらか片方だけでも頼めます。


などなど。手抜き感ハンパないメニューがどっさり。

ちなみに我が1年1組は、他の組より少しばかり予算が多い。この学校、学園祭前の定期テストの平均点で予算が決まる。えげつない。このクラスは学年1位。我らが小菊様と茉里様がいるからね。友人として鼻が高いです。


…それにしてもさっきから周りの視線が痛い。ちゃんと働いてますよ?

特に男性からの視線。ああ、気持ち悪いなぁ…。

小菊も茉里ちゃんも見られていて居心地悪そうにしてる。


早く交代したいな。午後は次の雪女役の子と交代するから自由に回れる。やっぱり学園祭は友達と楽しまなくちゃね!



・・・・◇・・・・


「チョコバナナだって。小菊、食べる?」

「うーん…。せっかくだから食べようかな!」

「じゃあわたし達も食べましょう。チョコバナナなんて久しぶりです!」


小菊、楽しんでるかな?

チョコバナナを食べている小菊をチラッと盗み見る。…うん。大丈夫そうだ。


「次はどこ行きましょうか?」

「やっぱり定番のお化け屋敷じゃない?」

「お化け屋敷だと…。1の2か、2の4があるよ。高等部は…3の3だけかな?」


中高一貫校だとこういう行事の時、中学生でも色々できていいよね〜。前世で中学生のときはショボかったもん。


「高等部は行きづらいですよねぇ。…あ!1年2組にしましょう!いいですか?」

「なるほど。OK!」

「何がなるほど?まあ、同学年の方が気楽だしねー。…うん?1年2組…?」


1年2組?待って、確か2組って…。


「じゃあ、出発!」

「さあさあ、早く行くよ!多分メチャクチャ混んでるから」

「待って!小菊?茉里ちゃん⁉︎」


速い!さっきまでゆっくりだったじゃん!でもこの勢いはやっぱり…



「あ、姫百合さん!来てくれたんだ。陽野さんと吉崎さんもいらっしゃいませ!」

「ねぇ、王子ぃ。一緒に入ろうよぉ!」

「それはちょっと…」

「…天野さん」

「…舞」

「…やっぱり?」


うん。やっぱり1年2組って熊谷君のクラスだよね…。予想通り…。予想外だったのは天野さんが熊谷君の腕を絡め取りながらお化け屋敷に誘っていること。

でも天野さん。ヴァンパイア役、交代の時間だよ?


「はぁ…。王子の狼男、メチャクチャカッコいい…」

「天野さん…。1組の方は大丈夫なの?」


熊谷君、すっごく嫌がってるぞ。顔に書いてある。天野さん、そろそろやめな?


「舞。ハロウィンカフェ、交代の時間です。速く行ってください。」

「あ、茉里ぃ。王子、カッコよすぎよねぇ!」


…空気読みなさい。こういう時は茉里ちゃん直伝の…


「天野さん。」

「何よぉ〜。今、忙しいのぉ!」

「へぇ。分かった。じゃあワザワザ王子に嫌われるための努力、頑張ってね。」

「え⁉︎なんで嫌われるのぉ⁉︎」

「当たり前じゃない。自分の仕事をサボって遊び歩いて男にベタベタしてる女、嫌われるわよ」


─── 私は演技する。漫画の鈴蘭のように強く、気高く、美しく。そして、みんなに聞こえないように耳打ち。言うことは相手が一番ダメージを受けること。完璧な微笑を絶やさない。


「うう。…交代しに、行ってきます。」

「行ってらっしゃい」


彼女のそれなりに綺麗な顔が、くしゃりと歪み、1組の方へ去っていく。ごめんなさいね、天野さん。でも、貴方も悪いのよ?


─── 終了。


「アアァァァアー!」


あくまで小声ですよ?廊下で、人の目もあるから。


「鈴ちゃん、お疲れ様です!」

「いや〜、怖かったわ。さすが鈴蘭」

「嬉しくない…。なんなの?今の高飛車な自分!鳥肌たつよ!気持ち悪い!ごめんなさい、すみませんでした!天野さん‼︎」


自己嫌悪…。漫画の鈴蘭はあんな悪口まがいなこと言わないし!言いすぎたよ、黒歴史もんだよ!


「…姫百合さん、今の」

「あ…」


やっちゃった…?熊谷君がいること忘れてた。もしかしなくても、会話、聞こえてた…?


「い、今のはちょっと…えっと〜」


今まで隠してたのに!最悪…。


「カッコいい!なんだか、ちょっとだけみんなの気持ちが分かった!さすがだね!姫百合さん!」

「ハア?」


おっと、いけない。素が出ちゃったね。って、みんなって誰?さすがって何が?

思ってた反応と違うんですけど…。絶対引かれると思ったのに。


「良かったね、鈴蘭。引かれなくて」

「今のは舞が悪いんですから鈴ちゃんは気にしなくていいんですよ。それより成長しましたね!師匠は嬉しいです!」

「え、吉崎さんが姫百合さんの師匠なんだ!じゃあさ、僕にもああいうの教えてくれないかな?」

「ダメです!弟子は1人までしか取りません!」

「ええ!そこをなんとか!」


…引かれなくて、良かったのかな?

今後の事を考えるともういっそ、引かれて、嫌われた方が良かったのかもしれない。

でも…。せっかく出来た…友達に嫌われたくない。…かもしれない。


そんな私の心情を読んでか、小菊がいきなり抱きついてきた。


「わっ!?小菊?」

「ねえ、熊谷。早く受付再開してよ〜!あたし達、女子達の視線で焼き殺されそうなんですけどー?」


ひい!後ろにズラッと女子達が並んでるうえに、嫉妬の目で私達を睨んできてる。学園祭のお化け屋敷なんかより数百倍怖い!


・・・・◇・・・・



空が茜色から藍色に変わり始める時間。いつもは別方向の茉里ちゃんも、今日は一緒に帰っている。

「ふぅー。満喫しましたね、学園祭!」

「そうね〜。楽しかった!でも明日も接客、頑張らなきゃだからね?」

「ああ…。なんで2日目もあるんだろ…。」

「しょうがないですよ〜。明日は午後から接客ですから、今日見れなかった午前中の劇なんかも見れますよ?」

「あ、それは楽しみ」


…話の切れ目。そろそろかな?茉里ちゃんとアイコンタクトを取る。


「ねえ、今日は寄り道して行かない?…時間とかが大丈夫なら、だけど」

「わたしは何時まででも大丈夫ですよ。…小菊ちゃんはどうですか?」


内心、かなりドキドキしてる。だって小菊に断られたら、骨折り損のくたびれ儲けです。まあ小菊のことを考えるとそれならそれでいいんだけど…


「うん、いいよ。むしろ今日は遅くまでみんなといたい」


寂しそうな、微笑。…やっぱりこれは家族と何かあるな。

『遅くまでみんなといたい』=『家に帰りたくない』って事だと思う。ただ私達といたいだけなら小菊から誘ってくる。


「よし、じゃあ私の家に行こっ!」

「鈴ちゃんの家、2回目ですねぇ」

「え!?イキナリ押しかけて大丈夫なの?」

「いいのいいの。それにもう着いちゃったよ。あ、夕ご飯食べてってよ!」

「だからイキナリ…」

「今日はお義父さんもお母さんもいないから大丈夫!」


それにイキナリじゃないしね。


「ただいまー」

「「おじゃまします」」

「2人とも、私の部屋に行ってて。」

「了解です!小菊ちゃん、行きましょうか」

「うん」


2人が階段を上って行くのを見送ってからキッチンに向かい、冷蔵庫を開け ───


「「えっ⁉︎」」


なに⁉︎

階段の上から2人の声。どうしたんだろう。

階段を上って確認すると。


「こんばんは。姫百合 雷兎です。いつも姉がお世話になってます」


外面だけはいい弟(今も作り笑顔)と、茫然と立ち尽くしている2人がいた。

え?固まるほど私に弟がいるのが意外?


「小菊?茉里ちゃん?」

「あ、ごめん!こちらこそお世話になってます。あたしは陽野 小菊で、こっちは吉崎 茉里。よろしくね、雷兎君。雷兎君は受験するの?」

「はい。姉と同じ学校を。」

「あ、そうなんだ!じゃあ後輩だ!」


小菊と雷兎が妙に盛り上がってる。雷兎の外面に騙されちゃダメだよ〜。

…視界の端に茉里ちゃんが入る。


「茉里ちゃん?大丈夫?」


そっと声をかける。茉里ちゃんは固まったままだったから。


「…大丈夫です!それより、早く準備を終わらせましょう。」

「…本当に大丈夫?」

「大丈夫!小菊ちゃん、先に鈴ちゃんの部屋に入っててください。わたしは準備を手伝ってきますので。」

「え? うん、分かった」

「行きましょう、鈴ちゃん。」


そう言って下へ降りていく。本当に大丈夫かな?




私の部屋のドアの前。茉里ちゃんと2人で深呼吸をする。自分の部屋に入るのに、こんな緊張するのは初めてだよ…

「よし。いくよ?」

「開けましょう。せーの!」

「「誕生日おめでとう!!!」」

「へ?」


ドアを開けると同時に私と茉里ちゃんでクラッカーを鳴らす。勉強中だったらごめんね、雷兎。


「さあさあ、小菊ちゃんが好きな料理がたくさんありますよ!」


トレーに乗っている料理をどんどんテーブルに置いていく。


「シチューにグラタン、ポテトサラダ。あとは…」

「「チョコレートショートケーキ!」」


生クリームをチョコクリームにしただけだけど、味は保証します!


「お金がなかったので、全部手作りです!どうですか?やれば出来るんですよ!」

「茉里ちゃん、盛り付けだけは上手だったよ〜?」

「なっ!盛り付けだけはってどういう意味ですか⁉︎」

「んー、そのまんま?」

「鈴ちゃん!」


…小菊の反応はどうかな?もしかして誕生日に手作りの料理って重かった!?


「…なんであたしの好きな料理、知ってるの?」

「普段のお弁当の様子です!」


小菊もなんだけど、茉里ちゃんの観察力ってすごいんだよ。


「お弁当にグラタンとかポテトサラダとか入ってると嬉しそうに食べてましたから!」

「じゃあ、シチューとチョコレートショートケーキは?」

「4月の頃、話したよ?」


記憶力には自信がありますので。


「あたし…」

「なんで誕生日が好きじゃないのかは分からなかったんだけど…」

「パーティーはしたかったので、学園祭1日目が無事に終わりましたパーティーと兼用って事にしときましょう!」

「茉里ちゃん、ネーミングセンス…」

「う…」


ヤバい。小菊はまだ茫然としてる。やっぱり迷惑だった?好きな物食べれば気が晴れるかなって思ったんだけど…。

背中に冷や汗が伝う。どうしよ…。


「「ゔっ」」


イキナリ小菊に抱きつかれた。茉里ちゃんも混乱してる。小菊って抱き魔?


「嬉しい…。ありがとう」


茉里ちゃんと顔を見合わせる。これはもしかして…。


「誕生日、好きになった!?」


誕生日は、自分が生まれてきた日なんだから1年で一番大切な日だと思う。私は一回死んで、転生させてもらったからね。神様に感謝です。


「2人が祝ってくれるんだったら大好きよ!」

「えー」

「まさかの条件付きですか…」


まあでも、一歩だけ前進したのかな?


「よし!じゃあ料理が冷めないうちにいただきましょう。」

「うん!本当にありがとう!2人とも!」

「あ、ポテトサラダは茉里ちゃん作なので味の保証は致しません」

「えー!ポテトサラダ大好きなのに…」

「ちょ!2人とも、どういう意味ですか⁉︎」

「大丈夫。茉里ちゃんの盛り付けは100点だよ!」

「褒められてる気がしませんが…」

「ねえねえ、早く食べよう!お腹すいた〜」



『1人じゃない誕生日なんて久しぶり…』

ごめんね、小菊。さっき抱きつかれた時に呟いてた言葉、聞こえちゃった。

小菊は強いから、ギリギリまで話さないよね。でも…


「食べましょうか」

「楽しみ〜」

「じゃあ…」

「「「いただきます!」」」


たまには頼ってね?















本日もありがとうございます!

更新できて良かった…。今回慌ててたので、作りが粗いかもしれません。

誤字脱字や、ここはおかしい、強引すぎる

などありましたら、ぜひご指摘お願いします。

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