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11.閑話:思い出せない (信也視点)

今回1~10話の信也視点です。あまりにもヒーローの影が薄かったので…

(入学式だ!)

目覚ましが鳴る前にベッドから飛び起き、カレンダーを確認する。


今日は4月7日。入学式。


(5時かぁ。早く起き過ぎちゃったかな。)


僕、熊谷 信也の家から学校までは電車で通学する。かかる時間は約1時間。なので、6時に起きればいいかな、なんて考えていたんだけど…

入学式が楽しみすぎて早く起き過ぎてしまった…

しょうがない。


机に向かい、予習をしよう。…と思ったのだが。ソワソワしていて、勉強どころじゃなかった。



・・・・◇・・・・


(僕は2組か〜)

上級生に貰ったクラス割表を見る。

これから各クラスに行き、少しの説明を受けてから入学式だそうだ。


(楽しみだな。友達できるかな?)

小学校の頃は女子に囲まれてばっかで男子の友達がいなかった。羨ましがられるかもしれないが、男子の友達も欲しい。そして何より嫌だったのが…


「あ〜!王子だぁ!ねぇ、王子は何組だったぁ?わたしは1組だったよぉ〜」


王子と呼ばれていたこと。

…天野さんもこの学校だったのか。できれば腕にくっつかないで欲しいんだけどなぁ…。

僕が王子と呼ばれていた理由は、この女の子、天野さんのせいだったりする。きっかけはただの、何気ない一言。

『信也君ってぇ、王子様みたいよねぇ。』

小学校4年生のことだった。それ以来あだ名はずっと『王子』。切実にやめて欲しい。


「…天野さん。できれば中学からは『王子』って呼ばないで?」

「はぁい!で、何組だったぁ?」


あ、これ聞く気ないヤツだ。

あぁ…。中学からも王子呼びは続くのかなぁ…。

軽く絶望していたその時。女の子にぶつかってしまった。


(あ、倒れる…!)


女の子はそのままふらっと倒れてしまう。

僕は反射的に女の子の体を掴んでいた。


(セ、セーフ…)


あのまま倒れていたら太ももをすりむいちゃったりして、かなり痛かっただろう。

とりあえず、謝らなくてはいけない。


「ごめんなさい、大丈夫ですか!?」


女の子は顔を上げて僕を見た。

引き込まれそうな紫色の目。きめ細やかな白い肌。…。サラサラな銀色の髪。小さい唇。これは、相当な美少女。だけど、何より驚いたのは

─── 僕を、恐怖に染まった顔で見ていたこと。その綺麗な顔を引きつらせて、僕を見上げていた。

でも、僕はその顔を見たことがあるような…


「すみません、大丈夫で───」


彼女はそう言いかけて、気絶してしまった。


(…エェェェェェ ───!)


・・・・◇・・・・


(ど、どうしよう…)


彼女が気絶してしまった後、慌てて抱き抱え、保健室へ運んだ。

─── なぜだか天野さんはキャーキャー叫んでどこかへ行ってしまったけど、とりあえず『王子』呼びを広めないで欲しいな…

ってそうじゃなくて。

僕は入学式中も付き添っているつもりだったんだけど、彼女のお母さんに止められた。

『あなたが休んじゃったらこの子が気にしちゃうから』って。確かにそうだ。混乱していた。

それで、入学式が終わった今でも目を覚まさない。ヤバい。おばさんもオロオロしてるし…


「ん…」


あ!


「あ、おばさん!目を開けましたよ!」

「まあ、本当!?鈴蘭、あなた倒れちゃったのよ?大丈夫なの?」

「すいません、僕がぶつかっちゃったから…」

「信也君は悪くないのよ。大丈夫。」


起き上がった彼女は状況を飲み込めなくて、目を白黒させている。


「お、お母さん…。ちょっとまって。ここ、保健室だよね?入学式は?私、どうしたんだっけ!?」

「落ち着いて、鈴蘭。あのね、言いにくいんだけど…。入学式は終わっちゃったのよ…」


そうだ…。彼女が寝ている間に入学式は終わってしまった…。

彼女だって入学式を楽しみにしていたはずだ。せ、責任とらないと!


「大丈夫?ごめんね、僕とぶつかったせいで…。入学式も…」


どうしよう。どうやったら償えるかな…?

ところが、返ってきた言葉は予想外だった。


「だ、大丈夫ですよ。ちょっと緊張してて、私が勝手に倒れただけだから。」


『勝手に倒れた』って…。僕がぶつかったせいなのに…


「でも…」


なおも言い募ろうとした僕の言葉にかぶせるように彼女は言葉を発した。


「ね、ねえ。熊谷君って入学式でたよね!?」


ん?


「あれ?僕、君に名前言ったっけ?」


ぶつかってからすぐに倒れてしまったし、ここで自己紹介はしていないはずだ。


「いや、えっと…上履きに書いていたから!それより、入学式は…?」


少し、睨まれたかもしれない。倒れた自分のことより僕のことを必死に聞くなんてなんで?

ただ単に、すごく優しい子なのかな。


「あ、いや、でたよ!もちろん!」

「信也君ったら、保健室までお姫様抱っこで運んでくれたのよ〜。入学式もでないでここに居るつもりだったらしいんだけど、それは流石にとめといたの。鈴蘭、信也君に感謝するのよ」


無駄にアセってしまった僕をおばさんがフォローしてくれた。ありがとうございます。

でも、『お姫様抱っこ』とか、『入学式もでないでいるつもりだった』とか、余計な情報が多くないですか?


「…ごめんなさい、ありがとう。えーと、熊谷君は怪我とか無かった…?」


そこには、心配そうな顔があった。ぶつかってしまったときに見た恐怖の顔は、気のせいだったのかもしれない。


「大丈夫だよ!なんともなくて良かったね〜」


本当に、なんともなくて良かった。綺麗な顔に傷でも残ったら大変だ。


「本当にごめんなさい。えと、もう大丈夫なので、帰って大丈夫ですよ。」

「うん!あ、僕は熊谷 信也。1年2組だよ。よろしく」

「あ、はい。姫百合 鈴蘭です。」


─── 姫百合 鈴蘭…?

どこかで聞いたことがあるような…


「じゃあ、帰りましょうか。信也君、今日はごめんね。これからも鈴蘭と仲良くしてくれたら嬉しいわぁ」


おばさんの言葉で現実に引き戻される。


「…はい!もちろんです」


おばさんに言われなくても仲良くしたい。なぜだか、姫百合さんと一緒にいると、とても落ち着く。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


あれから僕は姫百合さんに積極的に話しかけている。


姫百合さんのことで分かったことが1つ。姫百合さんは男嫌いだ。本人に直接聞いたわけじゃないけど、行動とか、陽野さんと吉崎さんが姫百合さんを守ろうとしている所とか。

僕も警戒されちゃってるし…


姫百合さんは『高嶺の花』なんて言われてるけど、話してないからそう思うんだと思う。

実際はちょっとぬけている所もあって、とても可愛い。


今も…

「ねえ、何言ってるのかな。二人とも?5月5日は遊園地に遊びに行こうって話だったよね?熊谷君も混ぜるつもり?だいたい、都合ってものが…」


遊園地へ行くこと、自分で白状してしまっている。

遊園地かぁ。いいなぁ。女子の中に入るのは申し訳ないけど、僕も姫百合さんと行きたいなあ。



結果的に、陽野さんと吉崎さんの後押しのおかげもあって、僕も同行OKとなった。

5月5日が待ち遠しい。


(よし!目一杯楽しむぞ!)


















本日もありがとうございます!

そして遊園地を楽しみにしてくださっていた皆様、申し訳ございません。次回です!

今回、LOVEを目指していたのですが、私には早かったようです(~_~;)

信也の『見たことある』、『聞いたことある』は前世ではございません。後々書いていく予定ですm(_ _)m

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