表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

Chapter6 - 渋い戦い

 呪文詠唱を終え――。


「"フレイム・アロー"!」


 雪蛇に向けて剣を突き出すのと同時に、ローデンドの前方に矢型の炎が十数本現れ、放たれた。その全てが、一箇所――雪蛇の口を狙っている。


 雪蛇が身をかがめた。

 しかし、矢は向きを変えて狙いをはずすことはない。呪文に細工して追尾性能をつけているのだ。


 ガアアァァァァァァ……!


 雪蛇が()えた。

 尾を振り上げて、舞い上がった氷片と雪、尾で炎の矢を打ち消す。攻撃力を失った『炎の矢』による熱風が広がり、辺りに雪煙とは違う水蒸気のもやが薄く立ち込めた。


「"フレイム・アロー"!」


 続けざまにもう一度、炎の矢。今度は追尾性能をつけていないので、呪文詠唱が短くてすむ。本数もさっきよりは少ない。


 ドドドドドオン!


 狙いがアバウトだったこともあり、幾本(いくほん)かは凍った地面に当たって弾けたが、何本かは雪蛇の首から腹にかけて命中した。


 ガァッ!


 ひるんだ雪蛇に、炎の矢の発射と同時に駆け出していたローデンドが追い討ちをかけた。剣をその胴に振り下ろす。剣に纏わせた炎は弱まりつつあるが、まだ戦える。

 しかし、それは硬い雪蛇の体を突き抜けることはなかった。白い胴に薄く赤い線をつけただけ。


 煩わしそうに雪蛇の胴がしなる。ローデンドの体が大きく飛んだ。空中で体勢を整えつつも、無様に背から落下する。サックの少し目の前だ。


「あわわわわ……」


 おびえながらも、サックはローデンドに駆け寄った。


「大丈夫すか?」


「く……。呪文が――」


 ローデンドはサックの問いには答えず、呪文詠唱が途切れてしまったことを悔しがっている。魔石の組み込まれたローデンドの鎧は、固いだけでなく衝撃吸収にもすぐれているのだ。


「オレにできることないすか?」


 サックは思わずそう尋ねた。


「あいつの、口の中に、最強の火炎呪文を、叩き込みたい。手伝え」


 やや息を切らせながら、ローデンドが答える。

 その視線は、ずっと雪蛇に注がれたままだ。


 雪蛇は、這って間合いを詰めると、鎌首を持ち上げ――。


「くるぞ」


 ローデンドがサックの襟首を持ち上げて、大きく跳んだ。

 二人が今までいた地面が、雪蛇の強烈な頭突きで雪煙を上げる。


「うわ……。この凍った地面に頭突きするとか、あいつどんだけ石頭なんすか!?」


 サックは激しく吹きつける氷と雪に目を細めた。

 ローデンドは腕で顔をかばいながらも、視線を雪蛇から逸らすことはしない。


「武器はあるか? お前ができる範囲で、雪蛇と戦え」


 とりあえずそう命じて、ローデンドは新たな呪文を詠唱しはじめた。呪文を唱えている間は、会話ができないのが難点だ。


「は、はいぃ!」


 返事をして、サックは片手で"チョコレート・シールド"を持ち、マントの下から武器を取り出した。また、お菓子を素材にした変な物が出てくるのかと思ったが、出てきたのは意外に普通な形をした細身の剣。やけに透き通ったガラスのような色合いが気になるが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ