小休止 『第2回、イーストスクールラジオ』
真昼の新大島東高校。校内放送用のスピーカーから、同校のバンドメンバーが一生懸命奏でるロックミュージックが流れ始める――――。
『…………皆さん、こんにちは。やって参りました。お昼休みにお届けするトーク番組、“イーストスクールラジオ”。このラジオは、昇降口に設置されたラジオボックスに寄せられる皆さんのお便りをご紹介したり、皆さんのお勉強になるような情報をお届けしたりする、5分間のトーク番組です。パーソナリティは、新大島東高校のエースにして、我らが生徒会長――――』
『――――皆さん、こんにちは。レイラ・アルベンハイムです』
『――――そして、2年1組の遠藤良汰が務めさせて頂きます。それでは生徒会長、張り切って参りましょう……』
『はい。遠藤君。イーストスクールラジオ――――スタート!』
『――――スタート……』
間奏。
『……改めまして、遠藤です……』
『改めまして、レイラです』
『……2回目が来ましたね』
『あの、遠藤君? どうしたのですか? 何だか今日はいつもの煩――――元気が無いみたいですけど――――』
『だって、今日で僕の呼び名が決まるじゃないですか……』
『そうですね。嬉しい事じゃないですか。学校の皆さんが考えてくれるんですから』
『そうですけど……恐いんですよ。変な呼び名付けられたらそれがクラスでの呼び名としても定着しそうで――――』
『そんな、からかわれるような呼び名は誰も付けませんよ』
『そ、そうでしょうか?』
『そうですよ。だから、元気を出して下さい。私は元気な遠藤君の方が好きですよ?』
『す!? ――――れ、レイラ会長がそう仰るなら間違いないですね! 元気が出ました!』
『お顔が真っ赤になりましたね』
『げ、元気な証拠ですよ! それでは、コーナーを進めて参りましょう! 第して――――』
『『遠藤良汰の、呼び名はいかが?』』
『――――さあ、遠藤君。ここに、皆さんのお便りにあった呼び名候補をまとめた紙があります。まだ開始2回目なのにも拘らず、いくつかお便りを頂けたそうで、嬉しい限りですね』
『そうですね! みんな、ありがとう!』
『それでは候補その1、行きますよ?』
『お願いします!』
『ペンネーム、“米袋を恵んでもらった貧困学生”さんから頂きました。遠藤君の呼び名候補、その1つ目は――――“塩”!』
『はい来たぁ! そぉら来たぁ! 由来のわからない変なのがあああああ!!』
『ペンネーム、“だぉって発音は口癖に取られがちだけどほっぺの脂肪が多分悪さをしているからなんだぉ”さんから頂きました』
『レイラ会長から“だぉ”なんて発音が聴けるとは! しかも物真似上手!』
『なんと、2つ目も“塩”です』
『――――読めたぞ! これは2年1組の連中が束になって俺に嗾けてきているな!?』
『続きまして――――』
『も、もう十分ですよレイラ会長! なにか嫌な予感がします。今日の“天候”、確か“曇り”時々“雨”だったような――――?』
『ペンネーム、“私日本大好き”さんから頂きました。3つ目――――“SIO”とありますが、これも“しお”と読んで良いのでしょうか? ――――良いみたいですね。それにしても凄い偶然ですね。3つ続けて同じ呼び名なんて!』
『それ偶然じゃないですよきっと! これは罠だ! 2年1組が俺を陥れるための陰謀だ! このままこの呼び名が付いて、俺が将来歴史に名を馳せるほどの“術師”になった時に、教科書に“遠藤良汰(別名:塩)”って書かれて、未来の子供達がそこに黄色とかピンクのマーカーペンで色付けして勉強しちゃったりなんかして俺の名が未来永劫笑われるのを狙った攻撃だ!』
『遠藤君はその想像力を“気想術”に還元出来るように頑張りましょう。そうすれば、歴史に名を残す“術師”への道が開けるかもしれません』
『頑張ります! だから、呼び名はまともなものを、どうか!』
『あまり気に入りませんか? 安心して下さい。まだ4つ目がありますよ。ペンネーム、“世界に4枚しかない龍のウルトラレアカードを使ってイカサマカードバトルを仕掛けておいて返り討ちにあった高校生”さんから頂きました――――』
『さっきからペンネーム長ッ!! しかも今のに含まれたネタは古くて一部の人にしか通じないような気がしないでもないですが、まだ候補がありましたか! 俺にも希望が!』
『――――あら、4つ目も“しお”』
『うわあああああ!! 全滅だああああああ!!』
『最後のはひらがなで“しお”です。これなら、漢字のお勉強を始めたばかりの小さな子でもわかりますね!』
『おのれ、2年1組! 我がクラスッッ!!』
『1人目と2人目の方は、共通の由来を書いていらっしゃいますね。“いつも汗だくになりながらトレーニングをしているイメージ。でも飲んでいるのは水ばかり。しっかり塩分も取ってほしいという願いを込めて”だそうです。――――心配してくれているんですね。優しいですね』
『みんなが心配を? ――――俺のために?』
『きっと皆さん、遠藤君の日々の頑張りを見てくれているんでしょうね』
『――――うう、あいつら、俺を想っていてくれたのか!』
レイラは“いつも汗だくだから”としか由来の書かれていない紙を折りたたみ、そっとポケットにしまう。
『ありがたいことですね』
『ホントに、ありがたいです! 呼び名は漢字の“塩”でお願いします!』
RPGでレベルが上がった時に流れるような効果音が流れた。
『おめでとうございます! 遠藤君。無事に決まりましたね!』
『はい! この呼び名を誇りにしたいと思います! ありがとうございました!』
『それでは、ここで次回のコーナーを紹介しましょう』
『はい! 次回はですね、東高校に通う皆さんのお悩み相談をやらせて頂きます!』
『昇降口のラジオボックスに、皆さんのお悩みを寄せて下さいね』
『お待ちしています!』
『あら、もうお別れのお時間ですね』
『今日は良い日だ! 次回も頑張って参りましょう! お相手は、遠藤良汰と――――』
『レイラ・アルベンハイムでした』
『『明日は晴れますように』』
読んで下さった方、ありがとうございます。またお願いします。
……盛り込んだネタで少しでもニヤリとして頂ける事を切に願いますが、正直自信無いし、恐いですw。世代によるかもしれませんね。




