表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナギ記  作者: 竜顔
93/276

聖樹:10階

 昨日人知れずゴブリン族のアイドルになった私は、ルージュナでログアウトしたらゴブリン達がいっぱいで囲まれてしまうんじゃ…と、失敗したぁという気持ちになっていた。


 ログインしてみると特にそんなこともなく、ルージュナにいるゴブリンの数が増えてはいるみたいだけどゴブリンの行商人が通り過ぎる時に軽く会釈してくれる程度だった。


 クゥちゃんからのメッセージが来ていたので確認すると、体調は万全だとのこと。フレンドを確認するとログインしていたのでコールで連絡を取る。


『クゥちゃんおはよー』


『あ、ナギちゃん、今どこ? ボクはルージュナの西門にいるよ』


『わかった、私もルージュナにいるからすぐ向かうね』


『はーい、待ってるよ』


 クゥちゃんとのコールを切って西門へと向かう。


「あ、ナギちゃんこっち!」


「あれ?」


 西門に着くとクゥちゃんが私に気づき私を呼ぶ。そのクゥちゃんと一緒に、舞浜君とカッサ、とバカップルの全員が揃っていた。


「なんでみんなが?」


「ああ、水着はもう少しかかりそうだから、ならちょっくらできることやろうってことになって」


 私の質問にカッサが答える。


「で、聖樹の10階のボスなら俺達でも戦えるんじゃないか、と」


 舞浜君がカッサに続く。


「まあそうなると俺は役立たずになるんだけどな」


 とカッサは笑ってみせる。現在最も早い人は36階まで進んでいて、それまでに罠や宝箱の類は発見されていないらしいので、カッサが言ってることは事実なんだろう。


「で? そっちの二人は何で?」


「ええー! 私達仲間じゃないですか」


 私の言葉にミカちゃんはすごく驚いているようだ。


「えーっとナギちゃんは知らないのかな? 昨日海底遺跡のボスまで到達した人達がいたらしいんだけど、海中での戦闘で割とあっさり負けてしまったんだとか、それで水着の強化を求める人でただでさえパンク状態なのが悪化したみたいでね」


「僕らも水着の強化してもらってるけどかなり時間がかかるみたいだから、海でずっと遊ぶのも飽きるだろうからこうしてここに、って感じです」


 カッサによると水着関連は色々問題があるようで、カップルもその流れに合わせて時間がかかるからここに来たらしい。


 何故全員集合しているのかの疑問が解けたところで聖樹へと出発。聖樹に入るととりあえず4階まで一気に上がっていく。その途中、多くのゴブリン達が鍛錬に励み、私を見ると尊敬の眼差しと、声をかけたいけどかけられないというような葛藤の表情を向けていた。


「何かあったのかな? ナギちゃん知ってる?」


 その光景を見て不思議に思ったらしい――当然だろうけど――クゥちゃんが私に聞いてくる。


「ゴブリン達が鍛錬に使ってるみたいだよ」


「そうなんだぁ、ゴブリンも狩場として使ってるんだねぇ」


 クゥちゃんはゴブリン達を見ながら感心している。


 ゴブリン達は四人~六人で行動しているのがほとんどでそれを指導係と思われるゴブリンが各チームを見回している。


 4階にたどり着くとゴブリン達の数が一気に減った。しかし


「ここにもゴブリン達がいるな」


 カッサの声でゴブリン達が私達の存在に気づいたのか振り向く。


「ナ、ナギ様!」


 そのゴブリン達は昨日の四人とシーコックさん。今反応したのはトクシーだ。トクシーの声とともに他のメンバーも一斉に振り向く。シーコックさんはやれやれといった表情で休憩の合図をだし、全員こちらによってきた。


「なんかこっちに来てませんか?」


「俺ゴブリン語わかんないんだけど…誰かわかる?」


 ミカちゃんとカッサが言葉を漏らす。他のメンバーも困った表情を浮かべている。どうやらゴブリンの言葉が理解できるのは私だけらしい。


「いやぁ、昨日は彼らの面倒を見ていただき大変ありがとうございました、彼らも気を引き締めて鍛錬にあたっております」


 近寄ってきて一番に話しかけてきたのはシーコックさん。


「いえ、別にたいしたことでは…」


「え!? ナギちゃん、ゴブリンの言葉が分かるの?」


 私がシーコックさんに応対しているとクゥちゃんが驚いた表情で声を上げる。


 しばらくゴブリン達と談笑して、ひとまず4階の予定だったけど、そそくさと5階へと上がる。


「めちゃくちゃ楽しそうに話してたけど…知り合い?」


「何話してたんですか…?」


 5階へと上がる階段の途中カッサとミカちゃんがジト目で私を見る。他のみんなも思ってることは同じらしい。


 昨日彼らの面倒を見ていたことを説明する。そしてさっき話していたことは大体そのこと、と言っておいた。


 彼らにあった時は「ナギ様!」と呼ばれて、他のメンバーになんて思われるか、と焦ったけど、誰もゴブリン語が分からなくてよかったとほっとする。


 5階までは大部屋一つ。ただし5階にはアクティブモンスターも出てくる。


 タンカーが二人いるので安定して戦うことができる。慣れてきたら次の階へ…を繰り返して10階にたどり着く。


「とりあえずここまでは俺がいても大きな問題なくこれたな」


 カッサは自嘲気味に言う。罠の類はないとはいえ6階からは普通のダンジョンのように通路や小部屋があって、カッサが気配を消して道を探ることによって時間を短縮できたのも事実。彼は全く役に立たなかったわけじゃない。


 10階はボス前の部屋とボス部屋だけで、ここに一度来れば次来た時から10階まで一気にショートカットできる。もちろん10階から1階へ移動することもできる。そしてボスを倒して突破した時には10階からのみ11階へのショートカットができるようになる。これで毎回ボスを倒さなければいけないということはなくなる。


 ボス前セーブとボス後セーブがあるって考えればいいらしい。


 ボス前セーブが完了した私達は一度聖樹から出て、備品の補充等を行い再び集まって聖樹の10階へとやってくる。


「じゃあ行こう」


 舞浜君がみんなに声をかけてボス部屋へと入っていき、みんながそれの後に続く。


 10階のボスは「プリンセスバタフライ」。人間の女性の姿に、頭には触覚、背中には蝶の羽、目は虫の目のように青色一色。


 背中の羽でひらひらと舞い、隙を見ての魔法攻撃が主体のボスだ。


 ボス部屋に入るなりクゥちゃんが全速力で走り距離を詰める。先制に成功したかに見えたけど、ぎりぎりのところで横に回避される。


 動きの素早さを見せるプリンセスバタフライに【誘惑】で釘付けにする。同性とか異性とか関係なくてよかった。


 動きが止まったプリンセスバタフライを舞浜君が【シールドバッシュ】で吹き飛ばす。壁に打ち付けられたプリンセスバタフライは膝と手を床に着ける。その一瞬のうちにクゥちゃんが爪を顔に突き刺す。


 痛がる様子を見せるボスを尻目にクゥちゃんが連続で攻撃を行いダメージを蓄積させていく。


「危ない! 下がって!」


「え!?」


 舞浜君が何かの変化を見つけたのかクゥちゃんに下がるように指示を出す。クゥちゃんはとっさのことで一瞬こちらを振り向く。その時、ボスが羽で風を生み出し、クゥちゃんを吹き飛ばす。


 タンカー二人とボスの間に飛ばされたクゥちゃんにボスが追撃を行うべくクゥちゃんに近づきながら、魔法の詠唱を始める。


 すかさずゆうくんが前にでて【挑発】をかけてターゲットを変えさせる。間一髪のところで間に合ったようでボスはゆうくんに右手をかざす。


 特に何のエフェクトもないと思った瞬間。


「しまった!」


 舞浜君が叫ぶとほぼ同時に、クゥちゃんとボスの間に割って入ったゆうくんがクゥちゃんに向かって【シールドバッシュ】を発動した。


「ぅぐ!」


「クゥちゃん!」


 起き上がった瞬間を狙われたクゥちゃんは吹き飛ぶ。そして自分の恋人が急に仲間を攻撃したことに動揺したのかミカちゃんが回復魔法の詠唱をファンブル。


「クゥちゃんのところに! 早く!」


 カッサが叫びながらクゥちゃんに駆け寄る。舞浜君がゆうくんを殴り正気に戻らせて全員が集合する。


「ありがとう」


「立て直すぞ」


 クゥちゃんにポーションをかけながらカッサが鼓舞する。


 しかしプリンセスバタフライはすでに次の魔法の準備に取り掛かっていた。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv27【STR上昇】Lv39【幸運】Lv42【SPD上昇】Lv36【言語学】Lv39【視力】Lv40【アイドル】Lv7【体術】Lv18【二刀流】Lv28【水泳】Lv18


 SP17


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ