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ナギ記  作者: 竜顔
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海底遺跡からの帰還

 隊列は私とカッサが一番後ろで後ろから来るモンスターを警戒。戦闘はクゥちゃんとカップルの二人に任せることになった。


 ゆうくんが近づいていくとトノマグロはこちらに気づき襲い掛かってくる。


 ビュン!


 猛スピードで発射されたミサイルのようなトノマグロはゆうくんの盾にぶつかる。ゆうくんのHPは一気に3割ほど持っていかれる。


 盾に突き刺さったトノマグロはまっすぐ後ろに下がる。そこにクゥちゃんが近づき攻撃を加える。するとターゲットを変えたトノマグロがクゥちゃんの方を向いて発射(表現上)。クゥちゃんはかわし切れず攻撃を受けるけど、水着のおかげでHPの減りはほとんどない。


 クゥちゃんはほとんどダメージを受けないことがわかるとノーガードで殴りだし、回復してもらったゆうくんもそれに加わり挟み撃ちのようにして攻撃。


 このままいけると思っていた時、クゥちゃんが唐突に奥の方を見る。


『まだ何かいたみたい! 近づいてくる!』


 というのが早いかゆうくんにトノマグロが突き刺さる。あまりのスピードに防御が間に合わずダメージも大きい。そこにすかさずミカちゃんの回復魔法が間に合う。


 最初の一匹目をクゥちゃんが倒し二匹目を狙う。だけど素早く動き回るそいつをとらえることができない。


 クゥちゃんは近づくのを一度諦めトノマグロが準備態勢に入ったのを見計らって正面に突き出す。


 バカなトノマグロは自らそれに突っ込んでいき即死。警戒していたノックバックシュリンプがやってきたのはそれから数秒後のことだった。




 それから九階層に戻ってくると、八階層、七階層と上がっていき出口まで一直線に進む。浅い層では何組かのPTと遭遇し情報を交換した。


 海底遺跡から海に出るともう夜になっていて危険な海中をサッサと泳いでいく。運よくモンスターと戦うことなく砂浜まで戻ってくることができた。


「とりあえず生産プレイヤーに頼んで性能のいい水着ができるまで俺達は海底遺跡は諦めるかな」


 カッサが苦笑いを浮かべながら私達に告げる。そうなると現在の状況を考えて2~3日は普通にかかりそうだ。


「別に待っててもいいですよ、カッサさんみたいに罠を解除しまくる人ってあそこじゃ大事だと思いますし」


 というのはミカちゃん。カップルで意見は一緒らしくゆうくんも頷いている。


「その間砂浜で遊べばいいですし」


 ゆうくんはさわやかな笑顔で話し、それを聞いたミカちゃんは照れくさそうに上目遣いでゆうくんを見る。


 うん、少しは自重しようバカップル。「虎」が「獅子」になってるでしょ。


「私達も待つ方で…いいよね? クゥちゃん」


「急ぐわけじゃないから別にいいよ」


 クゥちゃんは私の意見に賛成なようだ。正直私とクゥちゃんがペアで動いてもあんまりいい気がしない。何故ならお互いに戦闘系だし、ミカちゃんやカッサみたいに何か特殊な能力を使えるわけではないし、特に私は海底遺跡というダンジョンと相性が悪い。空間が狭くてメインのブーメランは使いづらいので場面を選ぶし、水中では飛び道具自体が威力が下がるので戦いづらくなる。


「じゃあ俺達の水着が完成したら連絡するからそれまでは全員自由ってことで…別に海底遺跡以外にも行ってもいいんだけどね」


 カッサがそういった後私達はカップルの二人とフレンド登録を行った。


 そして解散、カップルは夜のビーチにはしゃいで人気のない方へとそそくさと歩いて行ってしまった。


「「リア充め」」


 その二人の姿を見てカッサとクゥちゃんの表情が怖い物へと変わった。それを見ながら京ちゃん達も人前であんな風にべたべたするんだろうか、と考えるともしかしたらこの世界では京ちゃんに会わない方が正解なのかもと思ったりする。


「じゃあカッサ、水着を頼みに行かないと」


「そうだな」


 舞浜君に促されてカッサも我に返る。


「じゃあまたそのうち」


 そういって二人はポルトマリアに消えていった。私達も装備を変更してポルトマリアの街に入る。


「明日どうしようか? 飛び道具の問題があるから海での狩りはできそうにもないし…また聖樹に逆戻り?」


 クゥちゃんは明日どうするかという話を始める。


「第四エリアか第三エリアに行こうと思うんだ」


「どうして?」


 私の発言にクゥちゃんは首を傾げる。


「【アイドル】とか【体術】とかのLv上げしようかなと思って」


「なるほど」


 クゥちゃんは私の考えに納得している。


 海底遺跡では相性の悪さと他のメンバーの優秀さで、私はほとんどなにもしてない。でも【アイドル】はLvが上がると味方のサポートもできるって説明に書いてあったし、【体術】のLvも上げておけば活躍できる場面も増えてくるはず。


 そしたら私だけ役に立ってないと引け目を感じることもなくなると思う。


 クゥちゃんと明日の打ち合わせをして夜ご飯の時間が近かったのでログアウト。


 一階へと降りて、料理ができたらちょうどお兄ちゃんが下りてきて家族全員で夜ご飯を食べる。私はもう今日はゲームをするつもりがなかったのでのんびりくつろいで、お父さんにお風呂を先に取られたお兄ちゃんがそわそわしてるのを見て密かに楽しんでいた。


 お風呂から上がると颯爽と自分の部屋へと駆け込むお兄ちゃんを見て家族全員で呆れた顔をしていた。


「大学の方はちゃんと単位とれてるのかしら」


 お母さんは、もう夏休みに入って大分経つお兄ちゃんに対して今更なことを言う。一応雄君ホムラのリアルが多分大丈夫って言ってたことを教えてあげたら「雄大君が言うなら安心ね」とのこと。


 うちの母にとっては実の息子より息子の親友の方が信頼できるようだ。私も同じようなもんだけど。


 あと関係ないけどバカップルの彼氏と呼び名が被ってたんだね。最近ホムラと呼ぶ機会が多くて気づかなかった。


 私はお風呂に入った後、髪を乾かして早めにベッドに入り、眠りについた。


 その間にも刻々とことが動いていることも知らずに。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv26【STR上昇】Lv39【幸運】Lv41【SPD上昇】Lv36【言語学】Lv36【視力】Lv40【アイドル】Lv3【体術】Lv18【二刀流】Lv27【水泳】Lv18


 SP17


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

少し短めですが。

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