海底遺跡五層目
少し遅れました。
「きゃああああああ!!!」
「うあああああああ!!!」
暗闇の奥から聞こえてくる声は大きくなると同時に男の人と思われる声も増えた。
「とりあえずナギちゃん」
全員が戦闘態勢に入ると同時に、カッサに促されて松明を渡す。カッサは前の方に移動し光が届く距離を伸ばす。声の主の姿はスキルで暗闇でも目が利く私でも確認することはまだできない。
声は近づいてくるのに一向に姿が見えないので少し前進する。
「たすけてええええぇぇぇ!!!」
「だれかああああぁぁ!!!」
ひときわ助けを求める声が大きくなる、
「誰か来てる、二人と…敵が、!?」
「こっちも見えた、人二人と…」
クゥちゃんのスキルに反応が引っかかったのと同時に、私の目にもローブ姿の女性と鎧姿の男性の姿が見えるようになる。そしてその背後の暗闇から現れたのは骸骨の頭…。
「うわ! 多数の敵の反応!」
「きゃあ! が、骸骨!」
「ナ、ナギさん!?」
クゥちゃんは敵の数に驚いていたけど、私は骸骨に驚く。驚いた拍子に一番近くにいた舞浜君に軽く飛びついてしまった。
骸骨に震える私を置き去りに、カッサは後方に移動、クゥちゃんも舞浜君の後方に回り武器を構え、舞浜君は盾を構え逃げてくる人たちが通れるようにの端に寄る。
「「助けてぇー!」」
走りこんできた二人が舞浜君を追い越したところで真ん中に立つ。
「ナギちゃん! 敵だから! ゲームだから大丈夫」
クゥちゃんの言葉で私も少し落ち着きを取り戻し、戦闘態勢に入る。気持ち悪さならワームの方が上だ。
ガチャガチャと音を鳴らして迫る骸骨軍団。その光景にやはり背筋が凍りそうになるけど、ゲームだから、とさっきのクゥちゃんの言葉を思い返して落ち着く。
先頭の骸骨3体が舞浜君に攻撃を加える。その後ろから来ている骸骨が横から漏れてきそうなのをクゥちゃんと私で処理する。
骸骨はあまり強くはなくすぐに倒せる。しかし数が多く、どんどんと侵入を許している。それを確認した舞浜君もノーガードで戦い始めるけど、却って骸骨の入ってくるスペースができてしまい逆効果。
「壁になるから越えてきた奴の処理をお願い」
舞浜君は立ちはだかる方を選択。クゥちゃんの攻撃速度もさっきより増し、駆け回りながら戦っている。私を狙ってくる骸骨には【アイドル】で身に着けた【天使の魅力】のアビリティの効果で釘付けにできるので少しは時間を稼げる。
私は骸骨が近づいてくるのが怖いのでできるだけ早く倒そうとダガーを自身の最速で連射。遺跡の中は狭い空間のためブーメランは使っていない。
舞浜君を越えてくる骸骨がじわじわと多くなり、殲滅が間に合わなくなっていく。釘付けになったやつを放置して、侵攻中の骸骨のターゲットを取るために攻撃をしていくけどそれでも間に合わなくなっていく。
「こっちに来てるよ!」
ほとんど戦えないカッサも松明の光が舞浜君にも届くように距離を保ちつつ走り回り、骸骨から攻撃を受けないように頑張っている。
逃げ込んだ二人は震えながら座り込み戦況を見つめている。……手伝ってくれませんかね。
「ノーガードに切り替える!」
もう侵入を許しまくっているので舞浜君も切り替えて件を振り回し始める。骸骨の勢いも弱まり数が減ってきているようだ。
震える二人はどうでもいいとしてもカッサにまで骸骨たちが集中するのは避けたい。
「援軍はもういないみたい!」
クゥちゃんからの言葉を受けて、私はおそらく全員が範囲内に入っていると思い【スポットライト】を発動した。その瞬間骸骨たちが一斉に私の方に顔を向け固まる。狙い通り全員釘付けに成功する。
「何それ!?」
「ふぅ、止まった、これで少しは休憩できる」
クゥちゃんは驚き、カッサは一息ついている。舞浜君は何やらぶつぶつと呟いている。光魔法が使えるって言ってたから詠唱しているんだろう。
動きの止まった骸骨を一体ずつクゥちゃんと私で片付けていき、しばらくして舞浜君の光魔法がさく裂。光魔法は骸骨の弱点属性のため骸骨が一気にいなくなり、運よく生き残った残り僅かをクゥちゃんがものすごい速さで動き消していった。
「だめ、俺もうダメ…」
「ボクも疲れたよ…」
「結局何体いたの?」
カッサ壁に寄り掛かるようにして息を吐き、クゥちゃんは膝に手をついている。私は座って一息つく。舞浜君は周囲を気にしながらみんなのところに近づいてくる。
「あ、舞浜君…さっきはなんかごめん」
私は戻ってきた舞浜君に飛びついてしまったことを謝った。
「え? あ、そ、それは大丈夫、えーっと全体で30~40体程いたんじゃないかな」
私が飛びついたことは大丈夫なようで、私の独り言の方にも答えてくれる。
「そんなにいたのかよ…」
舞浜君の言葉を聞いて反応したのはカッサの方が先だった。あまりの数にカッサの顔もひきつっている。
「っと言うかお前らも手伝えよ、普通に戦える相手だろ」
舞浜君は震える逃げ込んできた二人組の方を向く。二人はひきつった笑顔の仮面を装着しながら恐る恐る立ち上がる。
「いやいやいや、骸骨とか無理ですよ、怖いじゃないですか」
男の方が声を出す。年齢的には私達と同じか少し下ぐらいだろうか。
その言葉にものすごい勢いで頷く女の子を見て私以外の全員がため息を吐く。つまり彼ら敵が強いとかじゃなく見た目で逃げてきたということみたい。震えて戦えない以上格下も格上も関係ないのかもしれないんだろうけど。
そんな私たちの態度を見て男の方が、
「で、でもそこの方だって最初は震えてたじゃないですか! 絶対一人だったら震えっぱなしですよ!」
「わ、私!?」
と私を見る。確かに震えてました。クゥちゃんがいなければみんなの足を引っ張ったことだろう。
「ナギちゃんはすぐ立ち直ったでしょ?」
「「うっ」」
クゥちゃんの指摘に顔をしかめる二人。
「で、お前らはなんなんだ? こっちとしても人が増えるのはありがたいんだが、骸骨見て逃げてくるような奴らと一緒は少し嫌だな」
カッサは淡々と話す。
男の方がタンカーで、女性の方がヒーラー役をすることが多いプレイヤーだそうだ。それを聞いて一層みんなの「手伝えよ」という気持ちが強くなった。
「で、どうして二人でここまで来たんだ? 二人だと奥まで行くのも一苦労だろ?」
カッサが二人でいる理由を尋ねる。ヒーラーができるなら私達と合流してもらってもいいかもしれないし彼らも骸骨が怖いなら人数が増える方が得だろう。
「デートです」
「「ちっ、リア充か」」
デートと言い放った男に、クゥちゃんとカッサが舌打ちして睨み付ける。
「リアルでも付き合ってるんですよ、私達、でもお互い怖いの苦手だから遊園地でもお化け屋敷とかいかないんですけど…海底遺跡に骸骨が出るとか知りませんでした」
この殺気溢れる空気を読めないのか気持ちいくらいの幸せ笑顔で女性が語る。そしてお互いで見つめあって…。
「休憩…もらっていい?」
舞浜君があえて空気を読まなかったような発言をする。
舞浜君が一旦リアルに戻り帰ってくるまで話は中断。カッサとクゥちゃん…特にクゥちゃんの目が怖い。その目に気づかず怖がりな二人は二人だけの世界に行ってしまいそうな雰囲気。
舞浜君早く戻ってきて!
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NAME:ナギ
【ブーメラン】Lv26【STR上昇】Lv39【幸運】Lv41【SPD上昇】Lv36【言語学】Lv36【視力】Lv40【アイドル】Lv3【体術】Lv18【二刀流】Lv27【水泳】Lv11
SP17
称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者




