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ナギ記  作者: 竜顔
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海底遺跡探索中

 海底遺跡の三階層目、出現するモンスターに新たに一種類「ブリっ子」が出現する。アクティブモンスターで見た目は完全に魚、多分ブリなんだと思うけど、魚の見た目に詳しくないから…。


 ブリっ子は通常攻撃に魅了効果を乗せることができるらしく、攻撃を受けた舞浜君がブリっ子の「親衛隊」状態になって私に襲い掛かってきたときは焦った。


 カッサは相変わらず罠を解除している。理由を聞くと


「籠るなら人が多い方がいいだろうし、後から来る人が通りやすいようにした方が俺達に追いついてくるかもしれないじゃん?」


 とのことだった。


 三階層目は半分ぐらいマップが埋まったけどいまだに下の階層へと降りる階段は見つかっていない。一旦来た道を逆行して分岐点のところまで戻り、そこからまだ行ってない方向の道を歩く。


 その先に扉の閉まった部屋があった。


「なんか中にいるっぽい」


 クゥちゃんの言葉に全員が戦闘態勢に入る。


「鍵はかかってないみたいだから舞浜が開けてくれ」


 カッサに言われて舞浜君が扉の前に立ちドアノブに手をかけ、扉を開きすぐさま中へと入る。それに続いてクゥちゃん、私、カッサの順で中に入っていく。


 部屋で待っていたのは…何とも言えない生物だった。


「私、キャシーちゃん」


 目の前の生物は私達に名乗った。


 目の前にいる…キャシーちゃんは人間の赤ちゃんくらいの大きさのクリオネで顔はないのっぺらぼう。どこでしゃべってるんだかという気持ちもあるけど、ここには他に人がいないので、きっとこのクリオネがキャシーちゃんで間違いないはず。


「…こう反応に困る奴がいるとはな」


 カッサも何とも言えない表情になっている。


「襲ってこないし危険はない…のかな?」


 クゥちゃんもリアクションに困っているのが窺える。


「会話できるのかな?」


 私の疑問に全員が首を傾げる。キャシーちゃんもそれに合わせてか首を傾げるようにしている。ちょっとかわいいと思ってしまった自分が恥ずかしい。いや、かわいいのは仕方がない、よね?


「首を傾げたのを見て真似してるから会話できるんじゃないか?」


 推測を立てるカッサ。


「じゃあなんて声をかける?」


 クゥちゃんも未知の存在と会話することに興味があるらしい。この部屋に入るまでつまらなそうにしていた表情がどこかへ消えてしまっている。


「本当は私、もっと下の階にいないとだめなのに上がってきちゃったの」


 なんて声をかけるか会議していたらキャシーちゃんが勝手にしゃべりだしたので会議を終了する。


 ――クゥちゃん、悲しそうな顔しない。


「俺達はこれから下に降りるけど…ついてくる?」


「いやぁ~~~~」


 舞浜君の提案をキャシーちゃんは拒否しながらどこかへ飛び去ってしまった。…え? 結局なんだったのあれ。


 カッサとクゥちゃんがジト目で舞浜君をにらんでいる。


「え、俺? 今別に何も……ごめん」


 舞浜君は一瞬で折れた。現実でも将来彼は変な責任を押し付けられないか心配になってきた。いや、すでに宿題の回答が間違っていたら宿題を見せてあげた人から責任を押し付けられていたような…。


 キャシーちゃんの逃げた方へ追っていくと階段を見つけた。まだ道が続いていることもあってか、クゥちゃんはキャシーちゃんがいないことを確認するまで下の階に降りるのはやめようと言い張っていたけど、みんなキャシーちゃんは階段を探すついでだったのでその主張は却下され階段を下りることになった。


 クゥちゃんのモチベーションがダダ下がりなか四階層へと降りていく。


「ん? 宝箱が開けられたまんまのやつが残ってるな」


 四階層目へと降りた瞬間カッサが全員に知らせる。宝箱関連はすべての位置情報と開閉状態が分かるらしい。


「罠の方は?」


「それはよくわかんないなぁ、実際に仕掛けてある場所にいかないと」


 私の質問には頭を振る。罠は宝箱のように位置情報までわからないようだ。


「でもここから先に人がいるってことだよね?」


「そうなるはず、ここまで来て一旦休憩とかしてたんだろうな」


 クゥちゃんの質問にカッサは自身の考えを交えながら頷く。


「じゃあ急ごう」


 舞浜君の言葉で全員が進み始める。クゥちゃんは相変わらずモチベーションは低そうだ。キャシーちゃんに何を思っていたんだろう。


 四階層は出てくるモンスターに特に変化はなく、ブリっ子の攻撃に気を付けることくらいだ。実力も低いようでスキルに変化は起こらないし、簡単に倒せるので【アイドル】のスキルは使ってない。


 四階層を進んでいくうちにカッサの罠を解除する仕事が減ってきた。


「罠が解除されてるのか?」


「いやぁどっちかっていうと引っかかったみたいだな」


 舞浜君の疑問にカッサは顎に手を当てて答える。


「さっきのと今回の罠は麻痺の効果があるはずだから、俺達が追い付いてるのもそのせいかも…単純に耐性のある装備で突っ切っただけかもしれないけど」


 カッサが自身の見解を述べる。


「罠で麻痺になって時間かかってるPTなら…早く合流した方がいいかもね」


 クゥちゃんの言葉にカッサが頷き、また進み始める。


「いるといいけどなぁ」


 カッサが小さく呟いていた。罠に簡単に引っかかる方だと、罠で死んだり罠に引っかかって動けないうちにモンスターにやられたりとかで死に戻っていて、もういない可能性もある。


 逆に耐性のある装備で突っ切っていてもペースが速くて追い付けない可能性もあるんだけどね。


 ブリっ子の攻撃を受けたクゥちゃんが舞浜君に襲い掛かること以外特に何も問題なく5階層目へと続く階段を見つけた。


 そこで一度休憩をとって下の階へと降りていく。


 5階層からは急激に暗くなり松明が必要になる。


「さっきまで普通に見えてたのはよく考えたらなんでなんだろうなぁ」


 カッサは松明に火をつけながら呟く。


「ん? 光魔法使えるんじゃないの?」


 松明に火をつけるカッサに気付いてクゥちゃんが舞浜君の方を向く。


「節約節約、魔法だといつ切れるか分かりづらいし、何かあった時に光が切れても困る、松明なら基本戦わない俺が管理するだけだから」


 クゥちゃんの質問に答えたのはカッサの方だった。


「でも俺は罠の解除とかあるし基本は姫君が持っててね」


 そう言ってカッサが松明を差し出すので私は受け取る。姫君、って呼ぶのはそろそろやめてほしい。


「ねぇカッサ」


「ん?」


「姫君って呼ぶのは…やめてほしい、かな」


「じゃあ何て呼べば?」


 それを聞かれても困るんだけど、


「私もカッサを呼び捨てにしてるから、そっちも呼び捨てでいいよ」


「え!?」


 私の言葉に反応したのは舞浜君だった。


「え? なんかまずかった?」


「あ、いや、別に」


「じゃあナギちゃん、クゥちゃん、でいいかな?」


 言葉を濁す舞浜君を見た後、カッサは私とクゥちゃんの顔を交互に見て尋ねる。


「じゃあそれで」


「そもそも私、呼ばれたことないし」


 クゥちゃんは自分がなんて呼ばれていたか記憶をたどっていたらしい。結局呼ばれてないという答えが出て少し不満顔だ。あ、不満顔なのはさっきからだっけ。


 名前の呼び方を訂正させたところで、さあ行こうという時だった。


「きゃぁぁぁぁあああああああ!!! 助けてぇぇえぇぇぇ!!」


 松明の光が届くところよりもさらに奥から女性と思われる高い声の悲鳴が聞こえてきた。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv26【STR上昇】Lv39【幸運】Lv41【SPD上昇】Lv36【言語学】Lv36【視力】Lv40【アイドル】Lv1【体術】Lv18【二刀流】Lv27【水泳】Lv11


 SP17


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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