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ナギ記  作者: 竜顔
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海底遺跡

 防具一式が手に入ったことを舞浜君に伝え、彼が砂浜に戻ってくるとローエスさんが何かしらの布教活動(?)を行い、それに誘導されるように舞浜君は褌を受け取っていた。私は彼が将来、胡散臭い宗教に手を出さないか心配になったのはここだけの話。


 舞浜君に褌を渡すと「新たなお告げがあった、私はまた作ラナケレバナラナイ」と言ってローエスさんは私達の前から去って行った。余計に危ない人に進化した気がするけど、きっと私達のせいじゃない、いや、断じて私達のせいじゃない!


 それとしつこいようだけど紙飛行機ばかり作らされてノイローゼになりそうだったという割には自由にしてませんかねぇ。


 ローエスさんが去った後、舞浜君に走り回ってくれたお礼を言う。彼は防具だけじゃなく、飲食物やダガー(スミフさんの作ったやつ)なんかも補充してきてくれた。


 何かお返ししようとしたら、「大丈夫」といって受け取ろうとしないので折れることにした。あと、大丈夫という時に声が少し震えた気がしたけど本当に大丈夫なんだろうか。まあ本人がそういう以上わかりようのないこと。


 そして私達は一度ログアウトした。



 13:00――ゲーム内で昼が来る時間帯のちょっと前にログイン。


 私が一番最後だったみたいで砂浜には他の三人がすでに集まっていた。


「ごめん、遅くなって」


「いやいや、集合時間までまだ時間はあるし、防具が揃ったって本当?」


 と聞き返すのはカッサ。今朝手に入れたことを簡単に説明した。


「そうかぁ、生産者も手が空いてないって聞いて無理だと思って何もしなかったけどそんなことなら俺も朝から来てればよかったね」


 カッサが申し訳なさそうに言うので、気にする必要がないことを伝えておく。


「じゃあ行くか」


「あ、ちょっと待って!」


 夜の海へ促す舞浜君を止める。


 夜の海は出現するモンスターの種類が変わり、強いモンスターが増えるようで死に戻りしてかまたビーチにやってきては恋人だらけの風景を見て街に戻っていくという人を何人か見たことを伝える。


「じゃあ朝まで待ったほうがよさそうだね」


 クゥちゃんは私の話を聞いて待つことにしたようだ。他のみんなも頷く。


「それより海中では女性陣が前に出た方がいいかもしれないな、水着の性能的に」


 カッサの言葉でフォーメーションの変更をする。私とクゥちゃんが前で、男性陣はあまり動く必要のない私の近くをキープということになった。


「やましい気持ちとかないんで…」


「わ、わかってる」


 カッサとはいえ、念を押されると疑いそうになってしまうのはきっとこれまで会った人々のせいだろう。


 朝が来てあたりが光に満ちる頃、私達は海へ走り出す。そして一気に深くなる辺りでフォーメーションを作って海に潜っていく。


 狩りをしている人は相変わらず多く急に目の前に発生しないかぎりモンスターと戦うことにならずに済みそうだ。


 順調に遺跡に到達した私達はすぐに水路へと潜っていく。


 ――水路の奥にある扉の前。


『じゃあスイッチ押すから、みんな気を付けて』


 クゥちゃんがスイッチを押して扉が開き始め、そこに私達は吸い込まれていく。


 水に流されてしばらくしたところで地面に転がされる。今思ったけどこれ近くに人がいたらその人達も流されてしまうんじゃ…。


「みんな大丈夫?」


 起き上がった全員を見渡して舞浜君が確認を取る。今回は彼に手を借りる人はいなくて済んだようだ。


「準備したおかげで大分対応できるもんだな」


 カッサはうんうんと頷いている。準備よりも水に流されることを一回経験した慣れだと思う。


「じゃあ防具に着替える」


 クゥちゃんが装備を変更し…。


「クゥちゃん?」


「ん?」


 いつもと違う装備…くのいちの恰好だ。


「くのいちかぁ、似合ってる」


 カッサは褒めている。私も猫っぽいクゥちゃんには似合ってると思うのでそのことを伝えるとクゥちゃんは照れくさそうにしていた。


 クゥちゃんも以前の装備よりも水着の方が性能がいいのでくのいち装備にしたらしい。水着の性能がおかしいことを知ってから急いで注文したんだとか、新しく作った物じゃなくてストックしてあった物らしいけど。


 私も装備を変更する。


「ナギさん、それ…」


「うん、そうだよ…」


 舞浜君が戸惑うのも無理はない。ローエスさんから渡された服は上下薄茶色の半そで半ズボンで、トレジャーハンタ彷彿させるというかボーイスカウトとかのスカウト服のようなもので、コスプレしているように見える。


「なんかこれから遺跡を探索するよって感じだね」


 クゥちゃんはこの格好を気に入ってくれたらしい。


「そういうのって斥候の俺が着るべきなんじゃ…って感じだなぁ」


 カッサは笑いながらそんなことを言っている。


 新しい装備の寸評が終わったところで本格的に…とはいかずに食事を取って満腹度を回復させて探索を始める。


 海底遺跡はその仕様もあって一度入った人は籠りっぱなしでなかなか出てこないらしく、その分幅広い分野で活動できる生産と戦闘の両立プレイヤーがいるPTの需要が高まっていて、攻略組は現在3PTが合同で行動を一緒にしているらしい。


「籠れるの? ていうか籠るつもりなの?」


「できればってところだな、今の俺達じゃ備品の補充で問題が出てくるわけだし」


 クゥちゃんの疑問にカッサが答える。クゥちゃんは籠るつもりはなかったみたいだけど別に嫌というわけではないらしい。


「現状では無理ってことだね」


 クゥちゃんの言葉にカッサは頷く。生産系が0の4人じゃ帰りに海を泳ぐことも考えると無茶はできない。


 海底遺跡地下一階で出てくるモンスターは「クラブ」や「フライフィッシュ」の二種類。クラブは膝の高さくらいまである大きさの蟹。フライフィッシュは胸鰭で空を飛ぶ魚。フライフィッシュがアクティブでクラブはノンアクティブ。


 前日同様索敵をしながら通路や部屋にある罠をカッサが次々と解除していき、階段のところまで一直線で進む。ニアミスしたPTがいないのか罠は全部仕掛けられた状態になっていて、カッサ曰く宝箱も空いてない状態らしい。


 まだ一階層目ということもあって大したものは出ないだろうということで全てスルーして二階層目へと降りていく。


 二階層に降りてもやることは変わらない、クゥちゃんが索敵をし、カッサが姿を消して様子を見たり、罠があれば解除する。私と舞浜君は戦う以外に特にできることはない。


「うーん、思ったよりいないもんだな」


 カッサがうなっている。ここまで人に遭遇していない。その上罠も発動した形跡も解除された形跡もなくただ私達の時間を奪っていくだけだ。


 二階層目に出てくるモンスターのラインナップは変わらず、出現する数が多くなっているだけのようだ。


 運が良かったのかいくつか分岐路があったにもかかわらず順調に下の階層への階段へとたどり着いた。


「ここまで何もなし、この様子なら5階くらいまでは4人でもいけそうだな」


「今のところカッサが一番活躍してるね」


「別に引っかかっても問題がなさそうな罠ばっかりだけどな」


 クゥちゃんの言葉にカッサは嫌らしい笑みを浮かべている。罠解除にかける時間と労力も節約した方がいいと思うか、罠に引っかかることによって無駄な消費をせずに済むと思うか、とカッサがやってることをただ咎める、というわけにはいかない。


 気持ちを切り替えて、私達は三階層目に降りていく。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv26【STR上昇】Lv39【幸運】Lv40【SPD上昇】Lv36【言語学】Lv36【視力】Lv40【アイドル】Lv1【体術】Lv18【二刀流】Lv27【水泳】Lv11


 SP17


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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