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ナギ記  作者: 竜顔
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水着

 私の言葉で固まっている男性陣の二人。


「あ、いや、どういうこと?」


 やっと正気に戻ったカッサに、私はベリーワーカーズの二人に防具類を預けていると話す。


「そういうことなら今から帰って海中で敵を倒してもいいが、まともに狩りはできないんじゃ」


 カッサは私の状況に理解を示して他の選択肢を提示してくれる。彼はなかなかつかみどころがないけど悪い人ではないようだ。


「まともに狩りができない?」


 クゥちゃんが聞き返す。


「だって水着の防御力じゃ、タンカーの舞浜だってこらえるのは一苦労だろ?」


 カッサは狩りがまともにできない理由を話す。


「水着の…防御力?」


 私はカッサの言葉に首を傾げる。「ベリーワーカーズ」から提供されたこの水着は破格の性能を誇っている。上半身と下半身のセット装備扱いで、頭部や腕、脚などが未装備状態でもDEF+150という私が持つ防具では「バニードールの制服」についで二番目に防御力が高い。ちなみに今は脚のスロットにビーチサンダルを装備しているのでさらに若干上乗せされる。


 私達は水着の防御力の話をすると男性陣はまた驚きの表情になる。あ、舞浜君は兜で表情が分からない。


「ベリーワーカーズの作った物ってことか、俺達はどこも混んでてダメだったから生産者に頼らずポルトマリアの防具屋で売ってる水着にしたんだが、ここまで差があるとは」


 カッサは険しい表情になっている。しかしこれでサメと戦った時の舞浜君とクゥちゃんのダメージに差があったことに納得がいく。


「ナギさんは遺跡で水着は恥ずかしいんだよね?」


 舞浜君の確認に頷く。


「手詰まりかぁ~、せっかくだから色々冒険したかったのに」


 カッサは天を仰ぐ。


「ねぇナギちゃん、ボクも一緒に水着でも、恥ずかしい?」


「う~ん、ここの人達には見られちゃってるから…クゥちゃんが一緒なら大丈夫だけど」


「このダンジョンだと他人に会ってしまうからな、まぁ人に会わないようにするのは俺に任せてくれ、で、どうだ?」


 私が他人に不必要に見られてしまうのが嫌だとカッサは察してくれた。クゥちゃんも私同様、この状況下で水着姿というのは少なからず抵抗はあるみたいだけど、私と一緒なら苦にはならないようだ。


「じゃあ、他人に見られないようにお願いしていいかな」


「了解、とりあえず周りに反応はないから満腹度の回復を図るために食事を取るか」


 こうしてみんなで食事を取る。


「そろそろ現実の方でも…」


「だろうな、ここじゃすぐに見つかってしまうだろうから人がいないような場所に移動しよう」


 私が最後までいう前に言わんとすることを理解したカッサに促されて移動する。彼はこれまで一人でダンジョンに挑んでいたということもあって罠の発見や解除はお手の物という感じで私達を先導していく。


 彼も第三陣のプレイヤーで、それでいながらすでにヴォルカまで行ったことがあるらしい。と言っても【隠密】のスキルを駆使して気配を消して進んだのであって、決して第六エリアのモンスターと互角以上に渡り合えるというわけではないとのこと。


 【感知】系のスキルはクゥちゃんも持っているので、カッサは外している。彼が戦闘が苦手というのもそういうスキルで、戦闘に行かせるスキルの枠をつぶしてしまうからだそうだ。


 クゥちゃんの索敵で引っかかる反応があれば、カッサが姿と気配を消して確認。どうしても避けられないのならば戦闘を行って、ようやく人気のないちょっとしたスペースにたどり着く。


「じゃあ舞浜と姫君が先に用を済ませて俺たちが見張りでいこう」


「わかった」


 私は久しぶりに『待機』を使ってアバターをその場に残して現実へと戻る。


 夜ご飯やお風呂など用事を済ませて再びゲームの世界へと戻る。


「ん? お帰り」


 私が戻ってくるとすでに舞浜君は戻ってきていた。


「じゃあボクは一旦抜けるね」


 そう言ってクゥちゃんの身体だけがその場に残る。


「カッサは罠のこととかもあるからもし人が来た場合のことを考えて先に行かせたんだ」


「そっか、まぁ当然だよね」


 すでにカッサがアバターだけの状態になっている理由を舞浜君は教えてくれる。


 特に敵が来ている気配がないこともあって、普通に二人で話しをする。何故このゲームをやっているのかとか、これまでどんなことをやってきたかとか。


 舞浜君もこれまではソロで活動することが多かったらしく、そのこともあって【光魔法】を取得し回復魔法を覚えるまで頑張ったんだそうだ。


 ポルトマリア実装に向けてブルジョールを目指すまでは第三エリアで主に狩りをしていたらしい。私もそこで狩りをすることが多かったのにこれまで会わなかったのが不思議だった。


 そしてブルジョールを目指すときに、カッサに出会ったらしい。


「そういえばカッサって気配消せるのにどうして他の人と一緒にブルジョールを目指したんだろ?」


「なんかカッタリーにはばれるらしい、あいつら気配消すような奴には普通に襲い掛かってくるとか」


 カッサもカッタリーのよく分からない能力の高さの被害にあった一人らしい。さっきまで罠の解除とかで頼もしく見えた今はアバターだけのその姿に妙な親近感を覚えた。


「それで同じPTで行動してたんだけど、他の奴らとはブルジョールまで一緒でそこからは別行動になって、でもカッサはいざとなった時に盾役は必要だからとか言って一緒にポルトマリアまで来たんだ」


 カッサと今も一緒に行動している理由を舞浜君は話してくれる。私もクゥちゃんとはどんな感じか少しだけ話した。


「なんか、クゥさんみたいな人と一緒にいる松木さんって新鮮というか意外というか…ほら、普段は三人の末っ子みたいな感じだから、こう目線が同じ相手と一緒にいるイメージがわかなくて」


 舞浜君から見た私は京ちゃん、結衣ちゃんとの三人姉妹の末っ子のイメージだそうだ。もしかしたら舞浜君からも年下のイメージを持たれてしまってるのかもしれない。まだ若く見られて喜ぶ歳でもないので、同級生から年下に思われるのはむしろショックだ。


「よっとただいまぁ~、あれ? お二人さんのお邪魔だったかな?」


 舞浜君との末っ子談義が盛り上がっているとカッサが戻ってきた。


「クゥさんが戻ってきたらもう少し奥まで行って階段を見つけて帰還、でいいかな?」


 舞浜君がカッサと私に尋ねる。私的には装備の問題ですぐに帰っても異論はないのでおそらくカッサに向けたものだろう。


「了解、今日は様子見だし、夜の海がどれだけ危険かはよく分からない以上夜が来る前に戻りたいからな」


 カッサも舞浜君の提案に納得のようだ。


 しばらくしてクゥちゃんが戻ってきて探索を再開。


 罠は簡単な物ばかりらしく、カッサにとってはLv上げにもならないようだけど、本人は楽しそうにしている。


「モンスターも、少ないね」


 クゥちゃんの感想通りモンスターにも特に遭遇することもないまま下の階へと続く階段を発見。そのまま他人に注意しながら来た道を引き返す。


 モンスターが少ないことの予想としては下の階を目指す人が駆除したからだろう。その割には罠がそのままになってたりするのが不思議だと思っていたら、わざわざ解除しなくても問題がない罠をカッサがせっせと解除しているだけだと聞き、全員呆れたのは言うまでもない。


 出口が最初に入ってきた扉とは別だったこと以外特に大きな問題もなくビーチに帰還した。


「ナギさんの装備次第では明日もどうにもできないかもね」


「そうなったら男二人で下調べを進めておけばいいさ」


 男性陣二人は明日のことを話している。


「じゃあ、明日は13:00にここに集合ってことにしようか」


 カッサの提案に全員が頷きログアウトする。


 ログアウトして私はすぐにベッドに入った。とりあえず装備の問題を解決しなければ。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv26【STR上昇】Lv39【幸運】Lv40【SPD上昇】Lv36【言語学】Lv36【視力】Lv40【アイドル】Lv1【体術】Lv18【二刀流】Lv27【水泳】Lv9


 SP16


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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