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ナギ記  作者: 竜顔
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準備

遅くなってすみません。

 今日の夜から「ポルトマリア」と海エリアのアップデートが始まる。時間調整を行わない今回、夜の時間が終了する朝7:00にはブルジョールからポルトマリアに到着できるような時間帯までにアップデート終了時間が予定されている。


 午後にログインした私は防具の修復のために「Berry Workers」に立ち寄るも、いよいよ人が殺到していて、ブルーベリーさん達も「そんな余裕はない」とのことだった。


 聖樹に行こうとルージュナに寄ったけど、人が少なくてびっくりしたほどだ。


 今日はシンセさんを含む三人で行動している。消耗を極力避けるために聖樹の低い階層で雑魚を狩り、シンセさんが最近調教したモンスターの育成を手伝っている。


 そのモンスターは「シンバルン」といってシンバルを持った猿だ。楽器の音を大きくしてくれて【演奏】などのアーツの威力を強化したり範囲を広くしてくれるということで楽器使いの調教師から聖樹に行くならぜひと言われるほど人気なモンスターだそうだ。


 モンスターに言うことを聞かせるためにはなつき度が必要で、その上昇の仕方もモンスターによって違い、最もポピュラーなウルフ系はなでたり餌を与えるだけで上昇する。そして「シンバルン」は猿系だけど特別で、楽器を合奏する必要があるらしい。


 ちなみになつき度は下がる場合もあるからきちんと見分けてそうならないように注意しなきゃいけないとか、思ったより大変そうではある。


 演奏によって、ただでさえ弱い敵を弱体化させて掃除し、狩りをしたという達成感よりも敵を薙ぎ払ていく爽快感の方が強かった。ほぼクゥちゃんが駆け回って消してるんだけど。


 シンセさんが「もういいかな」と言ったところで聖樹から出て、ブルジョールに移る。


「海に行く前に新人の教育ができてよかったぁ、ナギちゃんありがとぉ~」


 ブルジョールにある喫茶店で私の隣に座るシンセさんは私だけにその微笑みを向ける。


「え、ええと、ほとんどクゥちゃんがやっつけてた気が…」


「そうねぇ、ナギちゃんの勇姿をもっと見たかったわねぇ」


 ずれた方で解釈するシンセさんに、何を言っても意味が無さそうだと諦めてそれ以上踏み込まない。


 シンセさんは新エリアが実装されたら普段一緒に行動しているPTで動くそうで、私とクゥちゃんに協力できるのは落ち着いてからになるとのこと。まぁ私達は私達で動こうと考えているから問題ない。


「じゃあそろそろ私水着を取りに行くね」


 しばらく話した後、シンセさんはブルジョールの街へ消えていく。


「ねぇナギちゃん」


 クゥちゃんが鋭い視線を私に向けて話しかけてくる。私もただならぬその様子に真剣な表情を作る。


「なんか周りの人から変なことされてる気がするけど、拒否するときはきちんと拒否しないとだめだよ?」


 どうやら私の周りの変態達への態度のことを話しているらしい。このゲームを始めてからその辺の心配をしてくれる人は初めてだったので、クゥちゃんがまともな人で良かったと安堵した。


「そうだね、なんかもう諦めてたけど、流されないように気を付ける」


「うん、なんか現実でも変な人に引っかけられそうで心配だよ?」


 クゥちゃんは現実の私のことも心配してくれていたらしい。でも現実ではお姉ちゃん代わりみたいな京ちゃんとか結衣ちゃんがいるから大丈夫。…だと思うけど。


 目線が同じだと思ってたクゥちゃんからもそんな心配されるとはと少しショックだったのは秘密。


「海に着いたらメンバー探しもするんだから、変な人についてこられないように引き締めておかないとね、それにナギちゃんは名前が知れてしまってるし余計にどんな人が近づいてくるかわからないし」


 クゥちゃんの言葉で、少し疑問に思っていたことを聞こうと思った。


「そういえばさ」


「ん?」


「私が仮面着けてるのに正体がばれるのかわかる?」


 私のこの言葉にクゥちゃんは首を傾げている。


 あれ?


 これまで仮面をつけているのにやけにすんなり正体がばれるもんだと思っていた。最初はこの服を着ている人が他にいないからだと思っていたけど、ルージュナの件以降似た服装の人を見かけたこともある。だから見分ける何かがあると思ったんだけど。


「まさか仮面着けてるのって…?」


 戸惑いながらクゥちゃんが話し始める。


「確認だけど、ナギちゃんってブルーベリーさん達のいう『モデル』だよね?」


「うん、そうだけど」


 確認を取ったクゥちゃんは一息ついて、


「えっと、ボクもなんだけど、気づいてなかった?」


 急に知らされたことに理解ができない。


「ボクも二人の『モデル』なんだよね」


 それは昨日「ベリーワーカーズ」の二人を訪ねた時に薄々感じていたことだけど、まさか本当にそうだったとは。クゥちゃんはどのように騙されて…。


 なんて考え始めた私をよそにクゥちゃんは続ける。


「モデルの服にはオリジナルだってわかるようになってるんだよね、よく見ないと気づかないんだけど、分かる人なら一目でわかるよ」


 クゥちゃん曰くモデルの人だということが一目でわかるように目印がどこかにあるらしく、それを知ってる人が見れば私だとすぐに気付けるそうだ。


「え、じゃぁこの仮面って…」


「意味はほとんどないと思う」


 泣いた。心の中で。


 とりあえず今夜から明日の早朝にかけて新エリア実装に向けたアップデートが始まる。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv26【STR上昇】Lv39【幸運】Lv40【SPD上昇】Lv36【言語学】Lv36【視力】Lv40【魅力】Lv30【体術】Lv18【二刀流】Lv27【】


 SP41


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

字数少な目です。

どうしても次の話までに一話(一日分)はさみたかったもので。

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