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ナギ記  作者: 竜顔
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リベンジ

 日が明けて、最近毎日のようにゲームをしてるな、と思いつつログイン。


 クゥちゃんは用事で夕方からしかインができないというメッセージが来ていた。とりあえず私はビギでぶらついていた。


 ブルジョールへ向かう人達も大分目的を達成したらしく、西門の近くは人が減り落ち着き始めていた。


 西門近くの露店にマキセさんの露店を発見した。何やら背の高い男性と会話している。


「お、ナギちゃんじゃねぇか」


 マキセさんは私に気づき、手を振ってくる。私もそれに軽く会釈をして返す。


 マキセさんに声をかけられて近づいていくと、背の高い男性……エースさんだった。


「あれ? エースさんですよね?」


「ああ、久しぶりだな、スコアラー」


 上から見下ろされるその顔は確かにエースさんだった。しかしいつものユニフォーム姿ではなく、ポロシャツに丈の長いズボンを穿いている格好で、そこら辺にいるお兄さんだった。


「どうしてそんな恰好で?」


 私が聞くと、今日はオフだそうだ。なにがオフなのかいまいちよく分からないけど、オフの日はユニフォーム姿ではなく私服姿で街をぶらついたりするらしい。意外とユニフォームを着ていないとばれないようで、のんびり街を散策できるそうだ。


 街を散策する理由は色々あるらしいけど、一つにマキセさんのところで会話をしたり、ボールの補充をすることが主な目的だとか。


「マキセさんってボール作れるんですか?」


「そりゃ、革のボールならな」


 あっさりと答えるマキセさんにどうしてボールを私に売ってくれなかったのかと尋ねたら、特に何も言われなかったからだそうだ。それに、エースさんとは長い付き合いだそうでそういうのもあるらしい。


 そういえば以前レイダさんが「神風」創設時の話をしてくれた時に、エースさんは元々ソロで活動していて、そのころから付き合いのある生産者から武器を調達しているとかいってたっけ。


「あっ、そうだスコアラー、ジェットから話は聞いたぞ、今からちょっと行くか」


 マキセさんとボールのことで話していると、思い出したかのように提案するエースさん。ジェットさんから話を聞いたということはカッタリー関連の話だろうか。


「えっと、どうしてか教えてもらえれば別にわざわざ行かなくても」


「聞いた話じゃカッタリーにコテンパンにされたんだろ? 負けっぱなしは嫌だろう?」


 そう促されて私服姿のエースさんとともに第四エリアへ、人が減ったとばかり思っていたけど予想よりも多くの人が第四エリアからブルジョールに向かっていた。


 その人達の戦っている横を通過しながら平原まで出る。そこから街道を外れて一番近くのカッタリーに近づく…前に、


「いいかスコアラー、カッタリーはウィキじゃノンアクティブとされてるけどあれは間違いだ、あいつらをジッと見つめてると魅了系の技をかけてきて釘づけにされてしまう」


 エースさんが種明かしをしてくれる。通りで狙いを定めようと目を向けると体が動かせなくなるのか。


「一応投擲使いだから範囲外から投げるという手もあるし、カッタリーを見ないで投げつけるという手もある、耐性のある防具をつけるというのもあるが簡単なのは前の二つだな」


 対処方法も教えてくれる。これだけ聞けばわざわざ来なくても気が向いたときに一人で何とかできそうだけど。


「その他のモンスターに気を取られているうちに、視線にカッタリーが入って釘付けにされると厄介だからな、その他は俺が対処しよう」


 なるほど、一対一での戦いの場を用意するから勝て、と。ならばお言葉に甘えて釘付けにならない距離からカッタリーを狙って投げる。


 ちょっと距離的に無理をした分コントロールが悪くなるけど無事に命中、こちらに向かって走ってくる。


「攻撃を受けると魅了系の状態異常にされるから気を付けるんだ」


 エースさんのアドバイスが耳に届くよりも早く攻撃を回避。そのまま走って、軌道がずれて帰ってくるブーメランを迎えに行く。


 第四エリアの、特に平原部分のモンスターは直進攻撃が多く、第六エリアのように軽快なフットワークで攻撃を仕掛けてきたりするモンスターがいない分楽に回避できる。


 ブーメランを取った私は振り返りカッタリーの方を見る。するとカッタリーの目がぐるぐる回って…。


「目を見ちゃだめだ! 混乱状態になるぞ!」


 エースさんの怒号で私はカッタリーから視線をそらす。そしてブーメランを投げ、当たると同時に目の回転が止まったのを確認しダガーを投げて削る。


 すると今度は体を揺らし始めたので、近づいて顔を殴るとスタン状態になったので集中砲火。


 最後は【パワースロー】のアーツでダガーを投げて撃破した。


「初勝利おめでとう」


 カッタリーを倒し終えた私にエースさんが駆け寄る。そして飲み物を差し出す。


「ありがとうございます」


 私は二重の意味でお礼を言って、差し出された飲み物を飲む。知らないうちに渇水度が著しく低下していた。


「カッタリーはあんまりじっくり見てると、精神系の状態異常をかけようとしてくるから、視線に入れるのは一瞬、それで大体何しようとしてるのかを確認する必要がある」


 エースさん曰く、通常攻撃は魅了系、目をぐるぐる回したら混乱系、体を揺らし始めたら幻想系だそうだ。


「でも目で見ちゃいけないって前衛職の人って戦いづらいんじゃないんですか?」


「最初の釘付け以外は発動まで時間がかかる、その間に攻撃を当てれば中断させることも可能だからな」


 ん? 私は最初の釘付けのことも含めて言ったつもりだったけどエースさんの答えはそこを含めていなかった。


「その、最初の釘付けのことなんですが」


「ジッと見つめなければ問題ないだろ?」


 エースさんはそんなに気にすることじゃないみたいに言うけど…。前回やられたときはカッタリーを見過ぎてたのかなぁ。それとも称号の問題でもあるんだろうか。


 それと初めてカッタリーにあった時のことを思い出し、


「そういえばカッタリーってバトルハッピーにしてくるときがありますよね?」


「ああ、一度聞いたことがあるがスコアラーもそういう目にあったのか? 俺は遭遇したことがないから何も言えない」


 物知りなエースさんでも知らないことがあるそうだ。


「さぁ、もうじき夜が来るから帰ろう」


 エースさんに促されビギの街に帰る。最初の釘付けが称号の影響があるのか検証してもらいたかったけど、そのために釘付け状態になってくださいとか言える図太さはまだ持ち合わせてない。その間の敵の排除とかできる気もしないし。


 ビギの街に戻ってからエースさんとは別れて、私はログアウトした。





 夕方からはクゥちゃんと一緒に聖樹や第四エリアで狩りを行った。この時にカッタリーの検証を行い、どうやら釘付け状態になる時間は私の方が少しだけ早いようだった。とはいえ何が関係してるのかまだわからないので、結論は出さない。


 結論を出してしまうと私にとってカッタリーが天敵に…。それだけは認めたくなかった。


 検証がすんでからは第六エリアでちょびっと狩りを行った。人が少ないことをいいことに、囲まれそうになったら第三エリアに退避、そしてまた第六エリアに戻って…を繰り返した。


 当然、思ったより捗らなかった…。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv26【STR上昇】Lv39【幸運】Lv40【SPD上昇】Lv36【言語学】Lv36【視力】Lv40【魅力】Lv30【体術】Lv18【二刀流】Lv27【】


 SP41


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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