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ナギ記  作者: 竜顔
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得する人

 一通り話がついたのかローエスさんとラズベリーさんの口論が終わった。私とクゥちゃんの二人はブルーベリーさんを待っていた。


 ブルーベリーさんは私のブーメランの修復と、クゥちゃんも何か用があるらしくそれに取り掛かってくれている。とりあえずブルーベリーさんはやることがある時はきちんとそれを一番に考えてくれてるようで、ラズベリーさんとローエスさんとの口論にもあんまり積極的に参加しなかった。


 もしかしたら、あの二人の間に首を突っ込むのは得策ではないという考えがあるのかもしれない。それくらいあの二人の水着議論は熱かった。結局はローエスさんが折れる形になったようで、私に着せられるのは水色一色の水着が有力候補に挙がっているようだ。


 もちろん着るつもりはないのでなんになっても構わないのだけど。


 議論を終えたローエスさんは私に話しかけてきた。といっても自己紹介からで自分がなぜ「ローエス」という名前にしたのか、から始まった。その紹介が暑苦しかったので私の言葉で説明させてもらうと、


 ギリシャ神話において、その黄金の矢でもって憎きモテ男ナルキッソスをついには川面に映る自身の姿に惚れさせ、自ら川に飛び込ませ溺死させるということを行ったとされる崇高なる愛を司る神、エロスの名前を並べ替えたということだ。


 これをローエスさんがやると宗教の勧誘に熱心な方かと思うほど暑苦しくなる。


 自己紹介が終わるとおもむろに何かを取り出し私の前に差し出す。それは瓶に入った透明の少し輝いているように見える液体だった。


 差し出された2本の瓶を私は受け取る。


「まぁ、急な依頼だったからこんなもんしかできなかったけどな」


 ローエスさんの言ってる意味が理解できないけど、受け取ったそれが何か確認する。



【蘇生薬】

回復アイテム

 効果:HP0のときHP1で復活する。デスペナルティは受けない。


死んだ者を生き返らせる輝く液体。輝きが弱く効果は薄い。



 蘇生薬はまだプレイヤーに出回っていないはずだ。一体これは…。


「あの、どうしてこれを?」


「いや、だから依頼で」


「私は依頼なんてした覚えはないですけど」


 私の言葉にローエスさんは少し考えるようなそぶりを見せて、


「俺の依頼だ、聖樹関連の話はエイロー中にも色々俺にも入ってきていてな、聖樹目当ての連中がジェットの彼女を頼りにしようとしているってことも同様にな」


 ローエスさんが私のことをジェットさんの彼女だと思ってることは後で訂正するとして、黙って話を聞く。


 ローエスさんは聖樹へ入るためにルージュナとゴブリン族の関係を修復しようとプレイヤー達が動いているのを知っていて、尚且つゴブリンが行商人としてその街や村でしか扱っていない物を持ち込んでくることも知っていたそうだ。そして、ルージュナにゴブリンが出入りしないからルージュナの品を行商人達が扱っていないことも。


 そこでローエスさんは、もし聖樹目当てのプレイヤーが私に接触してきたらルージュナとゴブリンの関係修復を優先してくれと、ジェットさんにお願いしていたらしい。


「まぁ、聖樹目当ての連中の中には無意味だとか言って報酬云々で嫌な顔する奴がいたみたいだが、おいそれと他の街に出向けねぇ生産者からしてみれば十分意味のあることだったんだぜ」


 そう言ってニッと笑顔を見せるローエスさん。


「まぁでも、無意味だとか言ってた連中に、どれほどの価値があったのかということを知らしめるにはその程度の蘇生薬じゃまだまだだな、それより効果のいいものができたら交換してやるから、使わなくても取っておくといいさ」


 蘇生薬なんてプレイヤーが持ってるとか聞いたことがないのに、それだけじゃなくてこれより効果のいい物をくれると言うローエスさんの顔に、何故だか胡散臭さを感じながらも蘇生薬をインベントリの中に入れる。


「ありがとうございます、もしものときは使わせていただきます」


「おう、それが生産者からのお礼だと思ってくれ、一本は俺から、もう一本はなんかお礼ができないかと相談してきた連中が多かったから急遽増やしたんだ、金はたんまりもらったけどな、ハハハハハ」


 ローエスさんは危険な人だと思う。でもなんか憎めない、色々問題を起こしても『変態』という二つ名で愛される(?)のはそのせいかなっと思わせる雰囲気の人だった。


「話は終わったか? ナギ嬢、修復が終わったぞ」


 ローエスさんとの話が終わると、ブルーベリーさんが近づいてきて修復の終わったブーメランを渡してもらう。


「ところで、ローエスさんがここにいるのって私が来るから…ではなさそうですけど?」


 そのままブルーベリーさんに質問する。確かブルーベリーさんの話だと「Berry Workers」とはあんまり関係ない感じだった。


「あぁ、あいつはひょっこりやってきてな、おそらく水着と聞いて燃えたんだろうが、騒動があった時に一応運営から厳重注意されてるからな、表立って動けないからうちに来たんだろう」


 …前言撤回。ローエスさんは愛されてるとかじゃなくてただの変態だ。


「後はクゥ…」


 そう言ってブルーベリーさんはしばらくおとなしかったクゥちゃんの方を向く。


「あ、ナギちゃん、ちょっと外で待ってて、もう用は済んだんでしょ?」


 何かを隠そうとするクゥちゃんを不思議に思いながら素直に「Berry Workers」の作業スペースからブティックへ出た。


「お待たせ」


 しばらくしてクゥちゃんがやってきた。特に何かが変わったようには見えない。


「じゃあ昨日のリベンジもかねて第六エリアにいこ!」


 そういって駆け出すクゥちゃんの後を追う。転移ポータルでビギに飛び、南門を出て第三エリアを駆け抜ける。そしてたどり着く第六エリア。


 第六エリアは第三エリアとほとんど変わらない荒野地帯だ。このエリアを南にまっすぐ進めば第三の街ヴォルカへ、東に進めば砂漠地帯の第七エリアへと出る。


 第六エリアに出現する雑魚モンスターは、「レオ」、「ジャッカル」、「ハイエナ」、とシンプルなネーミング。「レオ」はメスライオンで、他のモンスターの外見もいたって言う必要がなく現実に近い姿だ。ボスモンスターは「狩人殺し」という巨大な鷲。優秀なハンター揃いのこのエリアのボスっぽい名前だ。全てアクティブ。


 そしてレアモンスターは「荒野の王」という、顔の位置が人間の頭ぐらいにくる大きさのオスライオンだ。昨日私たちがやられたのも来て早々こいつにやられたからだ。


 「ハイエナ」は少し特殊でエンカウント中の優勢な方に加勢してくれる。つまりこっちが優勢ならお手伝いしてくれて、逆は…いわずもがな。ただ「ハイエナ」が止めを刺した場合、ドロップはなし。


 一方「荒野の王」はノンアクティブながら、攻撃を仕掛けてエンカウント状態になると近くにいる「レオ」とリンクし、「レオ」が配下のように集まってくる。配下化が解けないうちに、つまり「荒野の王」のエンカウント状態が解けないうちに、配下の「レオ」に攻撃してしまうと見事にエンカウントしてしまう。


 昨日の私達も、「荒野の王」に全滅させられ、消えゆくPTを見ながら私達のすぐ近くにいた「レオ」を攻撃したところ、「荒野の王」と距離があると思っていたけどどうやら配下だったらしく、ライオンの群れが…。


「オスのライオンさんはいないね、じゃあボスに気を付けながら昨日のリベンジだよ!」


 やけに威勢のいいクゥちゃんとともに、狩人だらけの荒野へ踏み出した。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv22【STR上昇】Lv38【幸運】Lv39【SPD上昇】Lv35【言語学】Lv36【視力】Lv40【魅力】Lv29【体術】Lv15【二刀流】Lv23【】


 SP34


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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