増えてる
「マイクロビキニだ! 黒でセクシーさをアピールしてだな!」
「いいや、ナギちゃんにそんなものは似合わないわよ! ナギちゃんはピンクのかわいらしいビキニか、青とか白の清純な感じが出る色が似合うに決まってるじゃない!」
「いや、ここはあえて肌色にして遠目から見たら裸なんじゃ…と思わせるのもいいと思うが」
三者三様の意見を出し合う知らない人、ラズベリーさん、ブルーベリーさんの三人。私は今「Berry Workers」に来ている。
「ク、クゥちゃん、この人たちは何の話をしてるのかな」
「ナギちゃんはまだいい方だよ、私なんか来た瞬間スク水って言われただけだし」
確かにクゥちゃんの話を聞けば、私に着せる水着の話をしているということがわかる分マシなのかもしれないけど、そういう話じゃなくて…。
クゥちゃんは「ベリーワーカーズ」の二人と知り合いらしく、私がログインした時に「Berry Workers」にいると聞いて私はブーメランの耐久度の回復のこともあってここにきている。
「ええい! かわいいからなんだ! そういうかわいらしい娘が超セクスィーな格好をすればそのギャップに男どもはメロメロだろうが!」
「何を言ってるの! イメージ通りこそがナギちゃんには必要でしょうが!」
「この際全部一度着せてみるってのはどうだ?」
と私をよそに会話を続けるラズベリーさん達…ってか混乱してて気にしてなかったけど一人増えてるし。
「そうだな、それでいこう」
「ダメよ! ナギちゃんは私達『ベリーワーカーズ』専属よ、あなたなんかの水着は着せられないわ!」
「いやしかし、このままでは平行線…」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ボーっとしてるうちにこのままでは物騒な物を着せられそうになっているので慌てて止める。
「誰も水着を着るなんて言ってないじゃないですか」
「いやいやナギ嬢にはクゥと一緒にポルトマリアと海まで俺たちを連れて行ってもらおうと思ってる」
とはブルーベリーさん。
「でもポルトマリアまで人を連れて行けるかどうかわからないじゃないですか、ねぇ?」
私はクゥちゃんの方を向いて同意を求める。水着は着るつもりはない。
「え? でもポルトマリアまでの道のりって第四エリアとか第五エリアと変わらないって公式に書いてあったから私達なら大丈夫だよ」
クゥちゃんは私の言いたいことを理解してくれずに、私が公式サイトで情報を見てないと思ったのかまともな回答をしてくれる。
「でも水着を着るかは関係ないですよね?」
「いや、俺たちがポルトマリアへ向かう時は水着を着て連れて行ってもらう、宣伝にもなるだろうしな」
とんでもないことを言うブルーベリーさんを何とかできないかと考える。
「私は着ませんよ!」
「…そうか」
素直に承諾したブルーベリーさんを不気味に思いながら再びラズベリーさん達の方を見る。私の知らない人と未だに言い争いをしていた。
「あの人見たことがないですけど誰ですか?」
「あぁ、あいつはローエスと言ってな、うちのギルドのお抱えの生産者だ」
ブルーベリーさんの紹介を聞く限りは「Berry Workers」とはあまり関係がない人に思える。そして、ギルド「神風」の連中はもれずに変態ということか…と肩を落とす。
「あの人も変態なんですね…」
「まぁギルドのお抱えになったあたりから表には出てないが、変態と言えばあいつしかいないというくらいに第一陣では有名な奴だ」
そういえば以前、レイダさんからギルドの話を聞いたときに『変態』という二つ名プレイヤーがいると言っていた。その時は突っ込んだら危ないと思って詳しく聞かなかったけどこんな形で知ることになろうとは。
「変態!?」
以外にもクゥちゃんが反応した。目を丸くして驚いたような表情をしている。
「伝説の人だとか言われてもう引退したとか聞いてましたけど現役だったんですね!?」
なんでも変態さんは生産系のプレイヤーでは最高の腕を持つとされるプレイヤーらしく、ブルーベリーさんが言うように最近は表で見ることがなくなったために引退説がささやかれるほどだという。クゥちゃんもそんなすごい人がいるんだぁくらいにしか考えてなかったらしいけど今目の前にいるとなれば違ってくるようだ。
「初めのころは布系の装備を買う客はあいつの独占状態だったんだよなぁ」
そうしてブルーベリーさんが昔話を始めた。
『変態』ことローエスさんは当初布の装備を作り、最初にスカートを作った人らしい。それから全国すべての高校の制服、中学の制服を完全に網羅しようとして、夏服や冬服、学校によっては中間服に歴代のデザインはどうするのかという問題で挫折。
しかし、その頃スカートの中が見える、正確には視覚阻害が入って見えてはいないわけだけど、それが分かって男性陣は大喜び。女性陣はスカートをはいてる側なので特に気づかず、しかもローエスさんの物はブランドみたいな風潮があったために喜んで穿いていたらしい。
スカートの中が見えるということが男性陣に広まると、気になるあの娘や彼女に穿かせようとプレゼントしたりする男性が増えたそうだ。そしてローエスさんは、その女性プレイヤーがどんな戦闘スタイルなのかとか、どういう瞬間にチラリしてほしいのかと詳しく聞き、その希望にこたえる物を見事に作り上げたらしい。
それと並行して、木工でフィギュア制作を行いひそかに販売。金属でも作ろうとして鍛冶のスキルを取得するもうまくいかず、鍛冶のスキルは糞と言いまわったため鍛冶プレイヤーから袋叩きにあったこともあるらしい。
しかし、あるとき後衛の女性プレイヤーが前衛の女性プレイヤーのローエスさん作スカートが度々チラリすることで見せてるのかと悪口を言い、喧嘩になり、それでローエスさん作のスカートはそれ目的で作られプレゼントされることがばれてしまい、ローエスさんは女性の敵として認定される。
それで、それからはドレスのようにロングスカートを作ることに決めるも、とある事故でローエスさんの作ったスカートをはいていた人が中を見られてしまい、そのとばっちりでローエスさんはスカートの製作を禁止されたらしい。
それからおとなしく普通の服を製作。ちゃっかりひそかにフィギュアは販売していたそうだ。
あるとき、とあるイベントで魅了系の状態異常技を使うモンスターが出現し、釘付け、親衛隊、心酔…と段階があることが判明。それで心酔を使えば女性が抱き着いてくれると、調合のスキルを取得し惚れ薬の作成に取り掛かる。
なんとか心酔状態にする薬の開発に成功し、女性プレイヤーにPvPを申し込み飲ませようと「能力上昇系」の薬だとか説得するも実験ならばそもそもPvPをする必要もないこともあって説得に応じてもらえず瞬殺される。
それからはひっそりと暮らし、ギルド「神風」にスカウトされ、紙飛行機を作る日々を過ごしているそうだ。
「何か…想像以上に危ない人な気がしますね」
「それでも当時紙飛行機を作れるプレイヤーはあいつしかいなかった、今でも『デコイ』の効果もちの紙飛行機はあいつにしか作れないからな」
ブルーベリーさんの紹介を聞く限り、生産系のスキルをほとんど取得しそれなりに極めているであろう人物に違いはないようだ。生産系最高という噂も本当のようだ。
「で、私達はいつまでここにいればいいんですか?」
「さぁな」
未だ言い争いを続けるラズベリーさんとローエスさんを眺めながら、私達はそれが終わるまでぼーっと立ち続けた。
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NAME:ナギ
【ブーメラン】Lv22【STR上昇】Lv38【幸運】Lv39【SPD上昇】Lv34【言語学】Lv36【視力】Lv40【魅力】Lv29【体術】Lv15【二刀流】Lv23【】
SP34
称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者




