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ナギ記  作者: 竜顔
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第二エリアにて

「来週から夏休みだけどなんか予定ある?」


 ショートヘアの女子生徒が声をかける。


「う~ん、私は彼氏とあちこちにデートとかかなぁ」


 肩にかかるくらい長く、うっすらと茶色が混じる髪の女子生徒が答える。それを聞いていいなぁ、とうらやましがるショートヘアの子。


「どうせゲームでの話だから真に受けたらダメ」


 薄い茶髪の子と同じ長さの黒髪の女子生徒が、少し無愛想にショートカットに注意を促す。――


「ちょっと渚ぁ、何よその言い方~、別にVRだったらそういう表現でも間違ってないでしょ~?」


 幼い子を軽く叱るような口調で話す薄い茶髪に、少し鋭い目つきを与えながら


「っていうか、京ちゃん自分から誘ったくせに放置じゃん」


「あらあら、渚ちゃんはお姉さんが面倒見てくれないから拗ねちゃったのね」


 そう、この茶髪――京子ちゃんが私をVRに誘った友達。


 てか、お姉さんじゃないでしょ、同い年! 同い年、うん、いろいろ周りの世話とかおせっかい焼いてくれたりしてお姉さん役なところあるけどあくまで「役」だから。


「VRって、今結構話題の仮想空間で現実のように遊べるってやつ?」


 そうやって京子ちゃんに問いかけるショートカットの結衣ちゃん。


「そうよ、結衣もやる? 急がないとまた新規が締め切られちゃうから」


「VRってお金かかるんでしょ? 今は余裕が…」


 そういう結衣ちゃんに京子ちゃんも、渚の分に使ったばっかりだからこっちもねぇ、と残念そうな顔をしている。


「そういえば渚、来週また新エリアが追加されるんだって、その次の週から何週間か連続でイベントがあるみたいだし、夏休み期間も楽しめそうね」


「はいはい、彼氏と楽しい新エリアツアーではしゃいできてください、私のことを放置して」


「そんなにうらやましいなら彼氏を作ればいいじゃない」


 と堂々と言う京子ちゃん。別にそういう意味ではないけど理解してもらえなかった。そもそももうすぐ夏休みでそんな時間がある気もしないけど…


「別に現実じゃなくても、ゲームの世界で作ればいいじゃない! 性別を偽ることはダメってなってるんだから男性プレイヤーに片っ端から声かけて! 顔とか身体とかエディットでいじってる可能性があるけど…」


「京子…自分は現実彼氏と一緒のくせに……」


 私の気持ちは結衣ちゃんが代弁してくれた。


――――――――――


 第二エリアは平原が広がり、所々に木の密集した場所があるが、広く見渡せるエリアになっている。そのためどこにモンスターがいるかというのがなんとなくわかる。また、第二エリアの先の方には大きな岩山が連なっているのが見えるが、そこから先はまだ未開拓エリアで、未実装という結論が出ている。


 このエリアに出現する「ゴブリン」と「ウルフ」はアクティブモンスターで油断していると不意打ちを食らうので注意が必要。しかし、ゴブリンは視野が狭く、思ったよりこちらに気づきにくいので、戦闘を避けることは容易だ。


 このエリアの脅威は「スーパーゴブリン」で、強さが桁違いでゴブリンを楽に倒せるからとちょっかいかけて瞬殺される人が多いとか。幸いスーパーゴブリンはノンアクティブなのでこちらが仕掛けないかぎり戦闘になることはない。


 スーパーゴブリンの桁違いの強さがどのくらいかというと第六、第七エリアあたりのノーマルモンスターより少し強いくらいで、そのせいもあってβ期間中に撃破できた猛者はいないらしい。もちろんバグではなく仕様であり、運営に文句を言っても一向に弱体化する気がないとか。


 しばらくゴブリンを狩る、ゴブリンは子供の背丈と同じくらいの身長で、棍棒を手に持ち、装備は一応上半身と下半身に初心者装備を彷彿とさせる…鎧(?)なのか衣服なのか、とりあえず下半身は短パンみたいなのをはいている。


 ゴブリンを狩りながら、木々の生い茂るところなんかを散策し、スミフさんに売り渡すため石を採集する、もちろん限度をわきまえて。


 そんなことをしているとちょくちょくスーパーゴブリンと出くわす。スーパーゴブリンはゴブリンより少し背が高い、そして何より持っている棍棒にとげとげがついているので、服装(?)は大体同じだけど見分けることができる。「彼ら」の不思議な所はノンアクティブとはいえ第一エリアのモンスターとは違い、確実にこちらに気づいていて、その上であえてスルーしている感じ。なんか――


 おっ、また会ったな、じゃ、俺こっちだから。


 そんな風に言っているようにすら見えて、こちらもすかさず会釈する。だれか見ている人がいたら不思議ちゃんと思われてるかも。


 また、「彼ら」はどうやら三匹いるらしい、というのも見た感じ、純粋にゴブリンがとげとげの棍棒を持ってるやつ、そいつとまったく同じように見えて実は左手に指輪をしているやつ、そして左利きなのか左手に棍棒を持つ「彼」、とくに左利きの「彼」はよく目立つ、なんてたって「彼」以外のこのエリアにいるゴブリンは皆、棍棒を右手に持っているから…。


 私の行く先々で「彼」とよく会う。なぜ「彼」かって? 今私は「彼」と対面している。


 さっきまでは少し遠い距離だった。おまけに私に気づいた後、こちらに近づいてくることはなかった。しかし今度は私の方に向かってきていた、だから身構えたら、向こうもそれに気づき身構える。


 お互い睨み合いのまま時間が過ぎる。見方によってはゴブリンと見つめあっている…。しばらくして私は何をやってるんだと我に返る、スーパーゴブリンはノンアクティブだから襲ってくることはないのに。このまま、はいさよならはできなかったので、そぉ~っと近づきポーションを見せて渡そうとすると、「彼」も警戒を解き近づき、いらない、と言うかのように首を横に振る。そして――


 〈スーパーゴブリンが100Gを要求しています〉

       与えますか?

       Yes / No  


 というウインドウが目の前に現れた。のでYesの方を押す。すると私の所持金から100Gが減る。そして目の前の「彼」は何かを取り出し私の前に差し出す。私がそれを受け取ると「彼」は、嬢ちゃんありがとよ、というように立ち去った。



【猛者の証】

 特殊アイテム


 幾多の戦闘を戦い抜いた者の証明



 どうやら扱うことができずイベントリでも移動ができない代物だった。


 他のスーパーゴブリンではどうなのか、試したくなり探すと、指輪をしたスーパーゴブリンがいたので、100Gを渡そうとすると、さっきの「彼」と同様の仕草をした後


 〈スーパーゴブリンがポーションを要求しています〉

        与えますか?

        Yes / No


 なのでYesを押しポーションを渡すと今度は


 

【モンスター図鑑:ゴブリン】

  図鑑

  ゴブリンの生態が詳しく書かれている。



 こんなものが渡された。そして「指輪」は去っていく、私としては指輪が気になったのであれがもらえるとよかったんだけど…。


 図鑑は全く読めず、もしかして【言語学】のスキルが必要になるのかと思いSP5を消費して言語学を習得するも、読めなかった。


「Lvが低いからかな…」


 図鑑に気を取られていると背後からゴブリンが現れて驚く、そして何もされなかったことにさらに驚く。


「スーパーゴブリン達と接触したから…?」


 色々気になることができたので街へ向かう、その帰りにもまた左利きの「彼」と目が合い、軽く会釈した――この時「彼」の表記が「スーパーゴブリン」から「勇者ゴブリン」に変わっていた――


――――――――――

NAME:ナギ

 【投擲】:Lv14 【STR補正】:Lv10 【幸運】:Lv8 【SPD補正】:Lv6 【言語学】:Lv1 【】 【】 【】


 SP9

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