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ナギ記  作者: 竜顔
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勇者の力

 ジェットさんと二人で喜んだとはいえ結局第一の街ビギに戻ってきてすぐログアウトした。色々と疲れていたためそれからプレイしようとは思わなかった。リアルの方ではしっかりやることをやったけど。


 翌日は昼からログインした。ログインするとゴブリン王からメッセージが届いていた。メッセージってNPCからも届くんだと新鮮に思いつつ、仮面をつけるために一旦人目につかないところへ移動する。移動するとき人の目線が気になったけど、昨日目立ったのでこんなものだろうと思い気にしない。


 人目につかないところについて仮面を装着、別ルートから転移ポータルへと向かう。そこからゴブリン王国の王都に飛ぶ。


 城に着き、城門の門番に仮面を取って顔を見せる。顔パスだ。誰もが一度はあこがれるであろう顔パス。…そうでもないか。


 門に入ると案内役のゴブリンが来て私を城内へと案内する。要件は王様と話すことなので謁見の間に直行だ。もし仮に別の事柄を頼んだらその時もどこかへきちんと案内してくれるのだろうか、それとも別の案内役が来るのだろうかと疑問に思いながらついていく。


 謁見の間にはいつもの通りゴブリン王と大臣、壁際に整列した兵士たち。


「おおナギ殿さっそく来てくださったか、ルージュナとの一件まことに感謝しておる」


 私が入るとゴブリン王の話が始まる。どうやら昨日のことのようだ。まだ何かあるのだろうか。


「ルージュナへの出入りを許可したらすぐさま向かう者も多くてな、行商人や各地を歩き回る冒険者と呼ばれる者達が出向いておるようで、特に冒険者は聖樹で腕試しや鍛錬ができるとすぐさま駆けつけたようだ」


 長々と話をする王様だけど、なぜ私を呼び出したのかの話がないため黙って聞く。変に突っ込むとどうなるかわからない。


「兵士たちの鍛錬にも使えるであろう、かつては聖樹で鍛錬を積ませておったのだが現在は領内だ、しかも領内に出てくるモンスターは駆け出しでは手に余る。勇者ゴブリンの村の洞窟を抜けた先ならば鍛錬にもなるだろうが、ある程度鍛錬を積むとのぅ…」


 長い! 王様の話は長い。勇者ゴブリンの村の洞窟の先…とは第二エリアのことだろう。確かにあそこで鍛錬を積んだ後ぐらいだと、戦ったことがないからよく分からないけどおそらく私でもまだ戦えないであろうゴブリン王国領内の敵には太刀打ちできないと思う。


 つまり、第二エリアで鍛えてもそこでの成長が限界に達したら急に実力が跳ね上がる敵を相手にするか、より遠くに行かなければならない。


「聖樹の下の方の階層はひよっこでも戦えるほどのモンスターしか出ぬ、それに上の階に上っていくほど強いモンスターが出てくるようになるそうじゃ」


 王様の言う、かつては聖樹で鍛錬を積ませていた、というのはそこに由来しているのだろう。


「ひよっこ兵士どもの鍛錬に付き合ってやってほしいのじゃが、引き受けてくれるかのぅ? といってもそのひよっこたちを一度ルージュナに連れて行かねばナギ殿もまだ護衛して連れて行けるほどではなかろうから今すぐにとは言わんがの」


 ゴブリン王が私を呼んだのはこのことか。前振りが長すぎてあやうくスルーして場を乗り切ろうとするところだった。


「今すぐにというわけではないのなら…引き受けますけど」


「おお! そうかそうか! さすがナギ殿だ」


「「「おおお」」」


 私は控えめに…というより遠慮がちに答えたのにゴブリン王は気にしていないし、兵士たちも「さすがです!」と言わんばかりのキラキラした目で私を見つめてくる。


 まぁゴブリンに対するカリスマはどうしようもないようだし、いっそのこと極めてみるのもいいかなと。カリスマを極めるってよく分からないけど。


「いやぁ、この度の件ではゴブリンの民達もいいことばかりと喜んでおる、最初だからということもあるかもしれんがの、ルージュナとの和解は結果的に良い物となったようじゃ、では大臣」


「はっ」


 王様がなにやら促すと大臣が一旦謁見の間の玉座の横にある扉から外に出ていく。あの扉の奥はどうなってるのだろうかという興味もある。王室? 宝物庫?


 そんなことを考えていると大臣が箱を持って出てくる。なんかこの展開を知ってるような。


「今後もナギ殿と長く付き合えたらと考えてのぅ、先ほどのお願いをさせてもらったのじゃ、そのことも踏まえて自身の褒美よりも我々ゴブリンの利益を第一に考えてくれる友人に、我々の最も大切とされる物の一つを贈ろうと思う、ぜひ受け取ってほしい」


 ゴブリン王が言い終わると大臣が箱を開ける、箱にはソフトボールくらいの大きさの青い玉が入っていた。そして大臣が私の目の前にやってきて箱を差し出すので、玉を受け取る。



【勇者のゴブリン

 特殊アイテム


勇者の力が封印された玉。伝説の勇者ゴブリンの力が封印されている。



 この【猛者の証】と似たような物かと思ったけど、こちらはイベントリ内で移動ができるし取り出して見せることもできるようだ。トレードなんかは他のプレイヤーがいないのでわからないけど。


「まだナギ殿には使えぬ代物だと思うがそのうち使えるようにもなろう、あとそれは売買はできぬ、だがトレードはできる、といっても使える者にしか渡せぬがのぅ」


 ゴブリン王の説明によると私はまだ使えないらしい。聞くとどうしたら使えるようになるかはゴブリン王もよく分からないようだ。作戦通りゴブリンからもお礼をもらえたのに使い方が分からないせいか素直に喜べない。決してお礼目的だったという後ろめたさからではない!


 スキルの選択肢に【見習いゴブリン】なるものがあるけどそれが関係しているのだろうか。Sp20も必要とするスキルだ。もしそれが意味が無いということになればSpの無駄遣いだ。誰かわかる人に相談した方はよさそうだけど、こういうのを知ってるプレイヤーはいなさそうだし。となるとNPCか。


 ――そういえばいたじゃない。勇者ゴブリンが。


 私はゴブリン王との話を終えて城を出ると、仮面をつけて転移ポータルへと向かい勇者ゴブリンの村へ飛ぶ。…登録してないままだったので飛べなかった。


 仕方がないのでビギに戻りそこから第二エリアの洞窟を通っていくしかない。【猛者の証】が通行証を作り上げてしまうので他のプレイヤーと行くのは憚れる。ロマンさんもログインしていないので案内は期待できない。


 一人でダンジョンか。【視力】のスキルで見えるとはいえ罠への対処ができるかどうか。たぶん大丈夫だろうと、洞窟へと入る。


 罠にはまりながらなんとかたどり着く、モンスターとの戦闘の方が随分と楽だと思い知らされた。今後のことも考えて【罠】のスキルを習得しておいてもいいかもしれない。


 勇者ゴブリンの村についてもそれが目的ではない。ひとまず転移ポータルの登録を済ませた。分かりづらい場所にあるせいでこの村にはないのかと思った。


 そこらにいるゴブリンにレフトさんの居場所を尋ねる。どいつもこいつもさっき見かけたばかりで知らないという。


「あんた俺に用か?」


 歩き回って聞き込みをしていると後ろから聞きなれた声、レフトさんだ。向こうは私を警戒しているので仮面を取る。


「お、嬢ちゃんだったのか、気づかなかった」


 レフトさんのその言葉の後一斉に私に気づいた他のゴブリンが押し寄せる。またか、と思っていたらレフトさんが左手を上げるとおとなしくなった。


「で、どういった用があるんだ?」


 レフトさんに促され私は【勇者の力】を取り出して見せる。


「ほぅ」


「私にはまだ使えないって言われたんですけど、【見習いゴブリン】のスキルが関係してるんですか?」


 聞きたいことをすぐさま聞く。


「いや、違うな、そのスキルがあると得られる効果がすごいってだけで使うには別の条件が必要だ」


 どうやら使うことに関してはスキルは関係ないらしい。Spを無駄にするかもしれなかった。いや、完全に無駄というわけではないようだ。


「レフトさんは使えるんですか? これ」


「ああ使える、でも嬢ちゃんが使えるようにしてあげることはできない」


 レフトさんには使えるらしい。そして私は誰かから使えるようにしてもらわなければいけないようだ。


 ゴブリンからのお礼で、また一つ迂闊に他人に話せないような厄介で不思議なアイテムが増えてしまった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv19【STR上昇】Lv37【幸運】Lv38【SPD上昇】Lv32【言語学】Lv36【視力】Lv40【魅力】Lv28【体術】Lv6【二刀流】Lv8【】


 SP28


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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