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ナギ記  作者: 竜顔
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PvP②

 レイダさんがギルド「神風」についての話をしてくれた。ギルドマスターのホークさんはβ時代からのプレイヤーらしく、その時は固定PTを組んでいて武器も弓矢だったらしい。だけど正式サービスのときに武器スキル【投擲】が導入され、ホークさんはそれを選択。それによって固定PTから抜けざるを得なくなってしまったらしい。


 β時代から友達だったジェットさんはホークさんの理解者だったそうで一緒に行動していたらしく、その時はまだ「ジェット」ではなく他の名前だったらしい。そんなときに紙飛行機の存在を知り、まだ受付期間だったということもあってわざわざキャラを作り直して「ジェット」として【投擲】を取得。紙飛行機を使うのでそれに向けた名前ということで「ジェット」らしい。


 そして二人で活動をしていく、そのさなかで「ベリーワーカーズ」の二人とも接点ができたそうだ。β時代に無く正式サービス時に追加された【投擲】を他に使う者などいないと思っていたらしい。


 そんなときにエースさんを発見。エースさんはソロで活動していたようで、エースさんは今でもその頃から仲良くしている生産プレイヤーから武器を調達しているようだ。


 同じ【投擲】メインということで一緒に行動することも増えて、もしかしたら他にも【投擲】メインのプレイヤーがいるかもしれないということでそうした人たち中心のギルドを作ろうということになったそうだ。


 ホークさん、ジェットさん、エースさんの三人でギルド「神風」を創設。その後、紙飛行機を作れそうな生産者が事情があってボッチになってたそうなので拾い、それにつられて「ベリーワーカーズ」も加入。


 私が変態と思っている人達…というか変態の方々は第一陣からのプレイヤーだそうだ。レイダさんやスカイさん、黒鉄さんみたいに第二陣以降の人は変な人はいるけど変態ではないという人ばかりだそうだ。


「だから私は変態じゃないの、それに可哀そうだと思ってくれるのはありがたいけどそんな顔されると困るからやめて」


 ギルド創設の話から始めたのは自身の身の潔白を訴えるためだったらしい。私には十分に届いた。話の途中気になった点は『変態』という二つ名の人がいるということと、エース「さん」と一人だけさん付けだったことくらいだ。二つとも突っ込んだら後戻りできなさそうな代物なのでスルー。


「ほ、ほらジェットの出番よ!」


 レイダさんは私がまだ変態ではないかと疑ってると勘違いしたのか慌ててPvPの舞台の方に目を向ける。どうやらジェットさんの試合が始まるようだ。


「セバスチャン!」


 …ジェットさんの相手が大声で叫んでいる。名前を叫んでどうしたんだという感じだけど。


 ゴングの開始とともにジェットさんが先手を取って攻撃する。相手プレイヤーのセバスチャンはホムラ同様近接のアタッカーのようなので勝負は目に見えているような気がする。


「「「セバスチャーン!!!」」」


 セバスチャンが倒されると会場の一角から集団の叫ぶ声が…なにかの宗教なのか、はたまた熱狂的なファンなのか。


 次の試合、ベスト8を決める最後の試合のプレイヤーが入場してくると会場の歓声は今までにないくらいい大きなものになった。


「な、なんですかこれ!」


 叫ばないと自分の発した声すら聞き取れない。


「今日一番の注目カード!」


「え!?」


「だから!!」


 レイダさん曰く今日一番の注目カードらしい。なんでもガイアというプレイヤーが優勝候補だそうで、お互い接近戦を得意とする者同士で、熱い打ち合いが楽しめるのでは、という予想もあって一番注目されているらしい。


「「「ライムちゃーん!!!」」」


 歓声が少しおさまったところに野太い男の人達の声が。ライムというプレイヤーは兜をかぶっていて私からだとよく分からないけど女性のようでファンも付くぐらい有名なようだ。


 ガイアというプレイヤーの方は全身真っ黒の重鎧で身を固め、左手は大きな黒い盾、右手は長い剣を構えている。


 ゴングの音が鳴るとともに両者一斉に間合いを詰めて打ち合う。両者まずは挨拶と言ったところだろうか。そして観客もフィーバーしっぱなしだ。


 戦いは互角…いや、動きだけを見れば互角。ライムというプレイヤーの攻撃がガイアの方にダメージを与えている気配がない。タイプ的にはライムはアタッカー、ガイアはタンカーだと思う。


 ライムは長剣を両手で持ちながら突進し、時折片手で振るなどしながら軽いフットワークで手数を増やしていく。特にうまいのはガイアが盾を構えおそらくパリィの発動をしようとした際にはフェイントを加えるなどしてタイミングをずらし、成功させない。


 しかしパリィが発動できなくてもガイアは盾でライムの攻撃をことごとく防いでいき、時折攻勢に出てはダメージを与えていく。


 ライムがついにアーツを発動。盾と剣がぶつかり合い、お互いに押し合うも結果はダメージを与えられず、その隙にガイアのシールドバッシュが直撃しライムが吹っ飛ぶ。


「「「おおおお」」」


 観客も息をのんで今の攻防を見ていたようでその結末に驚嘆の声が上がる。


 そこで大きなダメージを受けた上に、隙も作ってしまったためライムの方が後手に回り始め、攻撃を当てられる回数も多くなった。


 そして下馬評通りガイアというプレイヤーが勝利した。


 勝負が決してからもその余韻に浸るように会場がざわつく。注目カードというだけあって観客の中にも技術を盗もうと必死になっていた人もいるようだ。


 ガイアさんかぁ、まるでダメージを受けてる気がしなかったけど勝てる人なんているのかなぁ。


 なんて思っていると気づいてしまう。


「…ってあれ? ジェットさんの次の相手って」


「今の勝った人ね」


 私の質問にレイダさんは淡々と答える。そして「ジェットもここまでね」という一言も忘れない。レイダさんって意外と薄じょ…まぁ事実だけど。


「これより準々決勝を始めたいと思います、選手入場!」


 そのアナウンスとともにホークさんとその対戦相手が出てきた。


 ホークさんの相手はまたも近接系のプレイヤーだったので主導権を握ったまま無難に勝利する。


 バジルさんは惜しいところで敗戦。


 ――そしてついにジェットさんの番がくる。


 二人が入場すると大きな歓声が上がる。おそらくガイアさんに向けられたものだろうけど。


 ゴングの音とともにジェットさんが【一閃】を…。


 ジェットさんの顔が「げげっ」と言ってるような表情になった。溜めてない一閃ではガイアさんを止められない。


 出鼻をくじかれたジェットさんは距離を詰められそうになるも、素早く立て直しすぐさま距離を取る。一定の距離を保ちながら遠くから攻撃を与えていく。


 観客の中にはそんなジェットさんに面白半分でブーイングを浴びせる人もいるけど、そもそもガイアさんにダメージが通ってない感じなので消費していくタイプの武器を使うジェットさんはジリ貧。


 これまで以上に距離を取って溜めの態勢に入る。そしてガイアさんが近づいてくるぎりぎりのところまで溜めてフルパワーの【一閃】を放つ。


「「「おおおおおお!!!」」」


 歓声がこだまする。ジェットさんが【一閃】を放つ直前にガイアさんは盾を構えて、それにあたった光の筋はジェットさんに跳ね返り直撃。見事に倒された。


 応援していた二人は負けてしまった。明日は来なくてもよさそうだ…。


 今日の最終戦の余韻が冷めやらぬ会場を一足先に抜け出した。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv19【STR上昇】Lv37【幸運】Lv37【SPD上昇】Lv32【言語学】Lv35【視力】Lv40【魅力】Lv28【体術】Lv6【二刀流】Lv8【】


 SP28


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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