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ナギ記  作者: 竜顔
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作戦失敗?

 私は戸惑いを隠せない。そんな私を見て申し訳なさそうな顔をする二人。一人はマーガレットさんでもう一人は聖樹に関する報告会の議長をやってるという男性だ。プルートさんは訳があっていない。その訳が私を戸惑わせている原因だ。


 それは少し前にさかのぼる。


 私がログインすると、マーガレットさんから話があるとのメッセージが届いていた。そこには集合場所も記されてあり、フレンドでもあるのでメッセージを読み終わるとほぼ同時にマーガレットさんからコールもかかってきた。


 集合場所は喫茶店。そこにはマーガレットさんとその隣に知らない男性がいた。私は着いてすぐにプルートさんがいないことを疑問に思い口にすると、


「そのことに関して話があるんです」


 とマーガレットさんの隣に座る男性が口を開く。


 第四の街とも呼ばれるルージュナ。ゴブリンとの共闘後に発見され、当初は結界が張られていて街に出入りすることはできなかったらしい。しかしエイローイベントに参加できる見込みのない方々が荒ぶった結果、イベント開始前にその結界の解除に成功したとのこと。検証組のように色々な可能性を一つ一つ検証したわけではないので何が原因で解除されたかはわからないとのこと。


 しかし出入りできるようになっても今度は聖樹へと続く森に入るための門に結界が張られていたそうで、ルージュナの人曰くそれはゴブリンの秘術によって結界が張られているので解除の仕方が分からず、だからゴブリンに解除してもらうしかないということだったらしい。


 ルージュナは門の開放に乗り気、ゴブリンが結界解除さえしてくれればいいということでプレイヤー達はゴブリン王と交渉を始めた。しかしゴブリン王はその要請を拒否し交渉は難航。


 その結果私にお願いしてきたということだ。


 しかし昨日、私が仮面のことで動いている間に結界の解除の方法が判明したらしい。それは至ってシンプルで、結界解除の術をそれを知るゴブリンから教えてもらえばいいということだった。教えてもらえるのは魔法が一定以上使えるプレイヤーだけらしく、プルートさんは現在そっちで教わっているそうだ。


 つまり、私達の必要性はゼロになった。


「…報酬は出せないかもしれない」


 この言葉が私が戸惑う決定打となった。


「だ、出せないって私…褒美を無駄にしてるんですよ! いや、そこに執着しているわけではないんですが……」


「報告会では君に報酬を渡すことを渋ってるやつも多いんだ、君よりもジェットに渡すべきだってやつばっかりでね」


 私に答える男性は申し訳ないという表情のままだった。


 男性によるとそもそも私がゴブリンとルージュナの仲直りをお願いしたことが、報告会の人々に不信感を募らせたらしい。元々そうするつもりだったのに報酬が出るなんてラッキー、と思ってるのでは? と考える人がいるとのこと。


 報告会の人々は結界を解除してほしいだけ、そのためにはゴブリンとルージュナとの和解が必要と考えて一生懸命だっただけで、つまりはゴブリンとルージュナの和解は「+α」であり今までその「+α」を通過しないと目的が達成できないという考えのもと動いていた。そして、私のお願いはその「+α」にあたる部分であり、結界の解除とは直接関係のないことだ。


 そのせいで直接結界の解除をお願いしたジェットさんに、というかむしろジェットさんだけに報酬を与えるべきでは、という声が強まったらしい。しかし結局は私のゴブリンに対する影響力の強さを考えればどちらも大して変わらないということになったそうだ。


 しかし、結界の解除方法が分かるとジェットさんにそのままゴブリンからの褒美を受け取ってもらおうということになったらしい。それで私への報酬に難色を示す声が一気に強まったとか。


 元々ジェットさんの話では、プレイヤーがゴブリンの褒美にとって代わるようなものを用意できるとは思わない、ということだったので報告会の人々も変なものを用意するより可能ならばジェットさんにはそのまま褒美を受け取ってほしいということだろう。


 それに初めから結界を解除した人に報酬を与えるみたいな風潮があったらしく、今回解除法を発見した人にも出すのに、という心理もあるようだ。


 マーガレットさん達の表情は自分たちの依頼に応えようとした結果私が損することを申し訳ないと思っている様子だったけど、狡賢いことを考えていた私もなんか申し訳なく感じる。


「まぁお金でよければ出すという連中に頼めば何とかなるだろう、あとはこちらでゴブリン王に褒美の件をできる限り交渉するということくらいならやるつもりだ」


 男性は私をまっすぐ見て話す。そこまでしてもらえるなんてと後ろめたく感じてしまう気持ちの方が強い。


「そうですね…今回は直接依頼された内容とは関係ないお願いをしたことになりますし、それよりも式典とかはどうなるんですか」


 自業自得なのだからと特に文句を言うつもりはないので男性の言うことを了承し、話題を式典の方に切り替える。


「安心して、それはそのまま行うつもりよ、ただ結界の解除がゴブリンの魔道士によって行われる予定だったのがプレイヤーで行うってだけで大きな変更はないわ」


 私の質問にはマーガレットさんが答える。式典も協力しないとか言われると困るところだったけど、そこはきちんとやってくれるらしい。おそらくプレイヤーもこんなに苦労したんだからと聖樹へ行けるということを一大イベントとして盛り上げたいという気持ちもあるのかもしれない。


「それならこっちからいうことはもうないです、きちんとこうやって話をしてくれてありがとうございます」


「そう言ってもらえると助かる、正直申し訳ないという気持ちでいっぱいだ、こんなシンプルな方法だとは完全に想定外だった…いや冷静にしっかりと考えていれば」


「それ以上言ったってもう遅いでしょ」


 反省の弁を述べる男性をマーガレットさんが窘める。


 そのあと私は喫茶店を後にした。正直ジェットさんに相談するべきだったのかもしれないけどジェットさんはいない。


 PvP会場へ向かう途中にジェットさんがログインしたのでコールでさっきのことを話した。すると


『分かった、でもまだルージュナからお礼をもらえるかもしれないし、ゴブリンに関してもまだ可能性はある、それと聖樹関連がお金をくれるというならもらってやれ、あと…まぁとにかく最高の結果になることを祈ろう』


 ジェットさんからそう言われると、後ろめたさも全てジェットさんのせいにすればいいや、と気持ちが軽くなった。うん、ごめんねジェットさん。


 気持ちを切り替えてPvP大会の会場へ入る。PvP会場はこのイベント期間中に設置された特別会場で、外からはただの小さなテントにしか見えないけど、その中に入ると闘技場のエントランスに通じていて観客用と選手用の通路があり、私は観客用の方へと向かう。


 初戦は確か…楽しみなホークさんとホムラの試合だったはずだ。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv19【STR上昇】Lv37【幸運】Lv37【SPD上昇】Lv32【言語学】Lv35【視力】Lv40【魅力】Lv28【体術】Lv6【二刀流】Lv8【】


 SP28


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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