ルージュナに向かって
ミスで本日2話目の投稿となってしまいました。
話が飛んでる、っと思った方は「前の話」でご確認ください。
マーガレットさん達が話を終えて、城の外に出ると私のところにゴブリン達が寄ってくる。何とかその包囲を抜けて転移ポータルにたどり着き、それを使ってビギに戻る。というのもビギからルージュナへ行く方が近いからだ。
各自準備を整えて北門に再び集合する。
「今度は…ホムラが護衛するんだ」
集合場所にはホムラと誰かさんがすでにいた。
「まぁな、色々大変だったみたいだから」
ホムラの言葉にあの乱戦を思い出し、少し身震いした。
それからマーガレットさんやプルートさん、ジェットさんと揃う。
「あれ? バジルさんは今度はいないんですか?」
「バジルはPvPだよ」
「そうですかぁ…」
私の質問に誰かさんが答える。誰かさんが答えたことが少し残念な感じの表情を作る。
「ナギちゃんはああいうのが好みなの?」
私の表情を見て勘違いしたのかジェットさんが不安そうな声で聞いてくる。
「違いますよ」
私が笑顔で答えると、ジェットさんは少し疑いながらも安心したような表情になる。
今度はルージュナに向かって出発。ゲームではすでに夜になっていた。いつの間にかマーガレットさんのジョンが復活し、その鼻で敵を索敵してくれるため夜道で視界が悪くてもモンスターと距離を取りながら進める。
ルージュナへは街道が通っているので、そのまままっすぐ進めばたどり着く。夜のため視界が悪くても街道に沿って行けば問題ない。
ルージュナへ向かう間にマーガレットさんがゴブリン王との話し合いの結果を聞く。
式典の開催場所はルージュナの西門の前…つまり結界が張られている門の前だ。そこでゴブリン王、ルージュナの長、私の三人が同席し、私が見る前でゴブリン王とルージュナの長が握手を交わし国交再開を宣言。そのあとゴブリンの魔道士達による結界の解除。
そのあと聖樹に行きたい者達は聖樹へ入り、そうでない者達で宴が行われる。といってもゴブリン側との約束なのでルージュナ側がどう出るかでまた変わってくるそうだ。
「式典が行われるっていうのはプレイヤーだけじゃなく色々なところに広めておかないとね、そうやって多くの人の前で宣言させることで後から勝手になかったことにできないようになると思うから」
マーガレットさんの口調はなんだか弾んでいる。これまで進まなかったことが簡単に進んだんだからこうもなるかな。
「開催はPvPの決勝終了後にする予定よ、それまでにできるだけ多くの人に教えておいてよね?」
マーガレットさんの言葉に全員が頷く。
「にしてもこれでナギちゃんは大勢の前で目立たざるを得ないってことかぁ…」
ジェットさんが感慨深そうにつぶやく。ゴブリン王国に行くときはなんだったんだというくらいにモンスターに遭遇しないために会話をする余裕がある。索敵役のジョンも暇そうだ。
「それにしても…ナギ、その服装は結構体のラインが出る恰好に思えるが、それで人前に出て大丈夫なのか?」
「ホムラの旦那!? そこは触れてはダメなところですよ! ナギちゃんは今そこに触れられると恥ずかしがるんですから!」
ホムラの言葉を聞いて顔が赤くなりかけているところ…スルーすれば何とか、と思っていたところにジェットさんが慌ててフォローに入るせいで顔が真っ赤になってしまった。
「ベリーワーカーズの服か…」
「今後ろから見るの禁止ですよ」
ホムラは私の後ろ姿を一瞬見て、何かを理解したらしい。それを見てジェットさんが注意し、私はその言葉でふと冷静になった。よく考えてみるとゴブリン王国へ向かう途中私の後ろにいたのはずっとジェットさんだけだった。つまり何が言いたいかというと…こいつ。
そんなことを考えていると誰かさんからコールが来る。
『変な趣味を持ってても俺は気にしないからな』
『変な趣味を持たないし、そっちが持ってたらドン引きしますね、は、げ、元気印さん』
『またハゲって言っただろ!』
『言ってないです』
コールの内容は変な話だった。私の中で8割「知らない人」認定されてるのにしつこいなぁ。もう少しで完全に「知らない人」だというのに。
誰かさんのおかげで顔の赤色も治る。
私はジェットさんの後ろに回ろうとするも一番後ろは危険だからとジェットさんが最後尾を譲らない。…こいつ。
『ジェットさん…最初顔色悪かったのに随分と楽しそうですね』
私はふてくされた表情が分かるような口調でコール。
『ああ、あれはね、はしゃぎ過ぎを見た時のナギちゃんの様子を見て、ああいうタイプは嫌いなのかと思ってね、自分のことを振り返ってみると…アカウント的な意味でやばい気がして』
ジェットさんはそんなことを考えていたらしい。でもジェットさん、あれは別にそうじゃないの。そもそもジェットさんに関しては今更だし。
『ジェットさんは問題ないですよ、もうちょっとセクハラ紛いのことを何とかしてほしいですけど』
そういいながらジェットさんの方をチラッとみるとちょっと照れくさそうな表情だった。
そしてまた前を向こうとすると、ジェットさんの視線がやや下がり始めたので睨み付ける。視線を逸らしたことを確認し、前を向く。その時何かに躓き体が投げ出される。
「うわぁ!」
「――っと」
前に投げ出された私の体は丁度誰かさんのところまで到達し、倒れこむ直前に誰かさんが受け止め顔を地面にぶつけずに済む。
『ありがとうお兄ちゃん』
「お、おう」
「「「お兄ちゃん!?」」」
「あっ」
どうやら咄嗟のことでPTチャットとコールを間違ったらしい。それに思わず「お兄ちゃん」と言ってしまったために、知らない誰かさんは知ってる人になってしまった…。
「どどどど? どういうこと!?」
ジェットさんがおかしい。
「まさか、そんな…あのはしゃぎ過ぎに妹がいただと!」
プルートさんも驚きを隠せないらしい。
「ま、まさかナギちゃん、最初会った時に変な感じだったのって…」
「そうですよ、自分のお兄ちゃんが変態だなんて知られたくないじゃないですか」
「「確かに」」
「おい! ちょっと待て! いつから俺は変態になったんだ!」
ジェットさんの質問に答えるとプルートさんとマーガレットさんは納得してくれた様子。お兄ちゃんは納得できないらしい。
「いえ、お義兄さん! 僕は素敵な方だと思っておりました!」
「お前は誰だよ!」
ジェットさんの素早い変わり身にお兄ちゃんが突っ込む。その素早さには全員がぽかんとなった、あ、ホムラは普通だ。
「お前ら…ジョンが急げって言ってるぞ」
「なんであなたはそんな冷静なのよ!」
ホムラがいつの間にかジョンと会話を成し遂げている。そこには食いつかないけど冷静なホムラに突っ込むマーガレットさん。それから続けて、
「確かに嫌よね…ホモ疑惑がある兄なんて」
「え!? ホモ!? お兄ちゃんにそういう趣味があったなんて…私はドン引きだけど大丈夫だから」
「いやそれ大丈夫じゃないし、ホモじゃないから! 俺達の固定PT全員、ホムラもバジルもホモってことにされてるんだよ!」
マーガレットさんの発言に驚く私、そして最後は泣き叫ぶかのような声で突っ込む兄。
そのあとはマーガレットさんとプルートさんから色々と聞かれ、ホムラはジョンと戯れ(?)、ジェットさんは一人別方向に突き抜けてお兄ちゃんに取り入っていた。
ルージュナに着いた頃、私の心は何か大切なものが失われたかのような虚無感に襲われていた。というか心身ともに疲れていた。
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NAME:ナギ
【ブーメラン】Lv19【STR上昇】Lv37【幸運】Lv37【SPD上昇】Lv32【言語学】Lv35【視力】Lv40【魅力】Lv28【】【】【】
SP43
称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者
アッキー=お兄ちゃん
兄の名前が「秋人」ってチラッと出てきてるので気づいた人もいるのではないでしょうか?
気づいていてもいなくても思惑通りって感じですけどね。




