ゴブリン王
王都に入った私達は、バジルさんとホムラ、…あと誰かさんとは一旦別れることになる。
すると誰かさんからフレンド申請が来たので却下。
『おいこら渚! 何拒否してんだよ!』
『はて? なんのことですか?』
そんな言い合いをしながらも結局はフレンド登録をした。
ゴブリン王国の王城は王都の中心にあり、人間より背の低いゴブリンといえどその城のサイズは立派なもので、この世界の人間の城を見たことがないけど変わらないぐらいの大きさと思われる。
王城に向かって歩いている道中、あちこちからゴブリンがやってきて握手やら何やら求められた。その騒ぎを聞きつけてか王城から馬車がやってきて私たちを乗せて城まで連れて行ってくれる。
「さすがにこれは予想してなかったわね」
「ははは…」
マーガレットさんのつぶやきに苦笑いで返す。正直こんなVIP待遇されるとは思わなかった。この馬車にしても到着するや否や御者から、馬車の手配が遅れて申し訳ない、と謝られてしまい全員目を丸くしたほどだった。
馬車に乗ったまま入城、城門を入ってすぐの広場で降りる。そこで待ち構えていたのはゴブリンの王国兵達だ。そこからひょっこり一人だけ鎧姿でないゴブリンが現れた。
「ようこそナギ様とそのお連れ様、お二人に王様からお話があるとのことでお迎えに上がりました、では王様のところへご案内いたします」
案内役のゴブリンに先導され城の内部へ。
「今二人って言わなかったか?」
ジェットさんが小声で尋ねる。確かに今二人って言った…てことは多分私とジェットさんのことだろう。
「普段私とプルートは交渉役でここにきてるから、ナギちゃんと一緒にいる見慣れない人イコール…ってことじゃないかしら」
マーガレットさんが独自の見解を述べる。
お城の内部はまず入ってから赤いじゅうたんの敷かれた大きな廊下があり、そこを一直線に進むと大きな階段があるその階段を上って二階へ、すぐ隣にまた階段があり三階へと向かう。
三階へと昇るとまた少し歩き階段、四階へと昇る。四階に上がってまっすぐ進むと大きな両開きの扉がある。
「こちらが謁見の間となっております」
案内役のゴブリンがそう告げると、ゴブリンの兵士が両開きの扉の横に立つ。それを見て案内役が扉を開けて中に入る、それについて行って私たちも中に入る。
「王様、ナギ様とそのお連れ様…それからルージュナの件での使者二名がおいでです」
「うむ、わかった、お主は下がってよいぞ」
「はっ、かしこまりました」
王様とのやり取りを終えて案内役のゴブリンは謁見の間から出ていく。これからどうしたらいいのかわからず立ち尽くしていると、マーガレットさんとプルートさんが跪いているのを見て私とジェットさんもマネしようとすると、
「むむ、ナギ殿とジェット殿はそのままでよい」
と王様に言われ、普通に立ったままの状態になる。
「此度の人間族との国交再開の件、まことに感謝しておる、にもかかわらず褒美もやらずにそちらから足を運んでもらうとは真に申し訳ない」
王様が玉座に座ったまま頭を下げる。まさか王様に謝られるとか考えてなかったのでなんといっていいのかわからない。
「い、いえ、特に褒美とか考えてませんでしたし…」
そんなことを言うのが精一杯だった。
「そういってもらえるとは有り難い、ではさっそく褒美の件の話をしようか、ナギ殿とジェット殿のお二人は何かほしいものがないかね? 用意できるものは全力で用意させてもらおう」
王様が本題に入る。そこで私はジェットさんと顔を見合わせ頷く。
「物じゃなくてもお願いでもいいんですよね?」
私が尋ねると、王様はチラリとマーガレットさん達の方を見る。
「うむ、物でなくても願いを聞き入れることもできる、ゴブリン王国領内ならあらゆる施設の利用が無料、とまではいかんでも大幅な割引とかはできるかのぅ」
王様はあえてマーガレットさん達が掠りもしない事柄に触れる。これくらいのことでは特に気にならない。
「じゃあ、私のお願いはですね…ルージュナとの仲直りです」
「「「は?」」」
ちょっとドヤ顔で決めたのが恥ずかしくなるくらい、王様とマーガレットさん達が間抜けな声を発する。
「えっ? 仲直りですよ? 聞いた話によるとルージュナとゴブリン王国の関係は悪いんですよね?」
「う、うむそうじゃが…てっきり西の門の結界を解除してほしいといわれると思っておっての…」
私の発言に戸惑った様子を見せる王様。昨日マーガレットさんから聞いた話だと、プレイヤー達は門の結界さえ解除してもらえればいいというスタンスだと聞いていたので、予想外だったのだろう。
「さすがにナギ殿の願いでもルージュナの連中と仲良くするなどできぬ、民も反感を覚えるだろう」
冷静に戻った王様は淡々と告げる。
「私が間に立つので大丈夫です」
待ってましたとばかりに私は王様に告げる。元から仲直りに応じてもらえるとは思っていなかった。
実は昨日ジェットさんと打ち合わせして立てた作戦を実行している。
ジェットさんの調べによるとルージュナは仲直りに前向きな姿勢らしく、またゴブリン王国も門の結界の解除は別に問題ないと思っているらしい。問題は結界を解除するにはルージュナまで足を運ばなければならないということだそうだ。
おそらく私が結界の解除を願い出ればゴブリン側も協力してくれるだろう。しかしそれでは意味が無い。だからルージュナとゴブリンを仲直りさせる。私の顔を立ててルージュナと仲直りしたとなればゴブリン王国の民も王様一人を責めることはないだろうし、行商人や冒険稼業のゴブリン達は行動範囲が広がることを却って喜ぶだろうということだ。
そうすればルージュナから、あわよくばゴブリン王国からも褒美がもらえるかもという作戦だ。
名付けて「お願いは聞いてもらうけど褒美の物もしっかりもらいます作戦!」。
「うむ、そこまでいうのならばナギ殿の顔を立てよう」
しばらく黙っていた王様が口を開く。思惑通りと言ったところか。
「しかし、それで願いが一つだ、結界の解除はまた別なるがよいのか?」
意地悪な王様だ。だがこれもある程度は考えていたこと、
「それでは王様、俺の願いが門の結界の解除、ということでもよろしいのですか?」
「ぬぬ、ジェット殿、そこの者達に言わされておるのではないのか?」
「俺にとっても聖樹が解放されることはいいことなんですよ」
ここはジェットさんのお願いで結界の解除と言うことになる。
私達二人のお願いを聞いてくれるとわかってから私達の思い通りに事が進んで行ってる。
「うむぅ、確かにジェット殿ならばそちらの方がよいのかも知れぬな…わかった、恩人の願いを聞き入れよう」
「おおぉぉぉ」
王様の玉座の前に立つ大臣みたいなゴブリンや謁見の間の壁際に立ち並ぶ兵士たちがどよめきの声を上げる。そしてなぜか私の方を見て拍手する。
「さすがはナギ様ですなぁ」
「いやぁーうわさに聞いておりましたがなんと素晴らしきお方であるか」
なんかあちこちから私をほめたたえるお言葉が聞こえる…。
「王様…そうとなれば式典を催し大々的に知らしめねばなりますまい、ナギ様が間に入って仲を取り持ってくれたと伝えねば」
「うむ、そうであるな…さてその準備ができるか」
大臣と王様が話し合う姿を見ていたマーガレットさん達が入り込む。
「その式典…ルージュナの西の門、つまり結界が張られているところで行うのはどうでしょうか? 式典の一環として結界解除を行い…」
マーガレットさんとプルートさんが交渉役としての仕事をしているようなので私とジェットさんは遠くに立つ。
「聞かなくていいのかなぁ」
「いいんじゃないですか…なんか色々な目線が気になりますし、集中して会話ができる気がしません」
ジェットさんのつぶやきに答える。さっきから兵士たちが私とジェットさんをちらちら見てくる。
そのあと、式典に関する会議が終わるまで私とジェットさんは兵士たちに囲われて質問攻めにあうのであった。
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NAME:ナギ
【ブーメラン】Lv19【STR上昇】Lv37【幸運】Lv37【SPD上昇】Lv32【言語学】Lv35【視力】Lv37【魅力】Lv28【】【】【】
SP39
称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者




