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ナギ記  作者: 竜顔
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知ってるケド……誰?

 翌日――


 ログインした私はメッセージを確認する。昨日の時点でジェットさんがマーガレットさんに私が北に行ったことがないことを伝えておいてくれたので、今回は交渉役の人達と二人の助っ人が私を護衛してくれることになった。といっても今回はおそらくゴブリン王国に行くだけで、ルージュナはまた別の機会になりそうだ。


 集合場所は北門の前。到着するとすでにジェットさんとマーガレットさん…と知らない男性が二人。二人ともローブ姿だ。そのうち片方はフード付きだ。


「お待たせしました」


 私が駆け寄ると全員がこちらを向く。フードがついている方のローブの男性が近づいてきて


「初めましてナギさん、俺の名前はプルートっていいます、いわゆるゴブリン王国との交渉役の一人です」


 さわやかな笑顔で自己紹介するプルートさんに私もきちんと挨拶する。するとそれを見ていたフードがついてない方の男性がやってきて、左の手首辺りを見せる。


「どうも、俺はバジルっていうんだ、これを見ればわかると思うけどホムラとは普段一緒に行動してる、あとナギちゃんの方がこれを譲ってくれたんだって? そのお礼と、ホムラと一緒に行動したのがどんな人か気になって今回この話に乗ったんだ」


 バジルさんが見せてくれる手首にはめられているバングルは、エイローイベントで5位に入った景品だった。


 ホムラの知り合いと分かったおかげで急に親近感がわいて、バングルの使い心地なんかをしつこく聞いていたら、「やっぱり返そうか?」と言われてしまった。使い道がなくなったら、と答えておいた。


「で、まだ行かないんですか?」


 私はバジルさんとの話が終わるまで待ってくれていたのかと思い、話が終わった後マーガレットさんに尋ねる。


「うーんちょっとね、あと一人いるんだけどまだ来てなくて」


「俺と同じPTで普段行動している奴なんだけどな…ごめんね」


 マーガレットさんの言葉に続けてバジルさんが謝る。今回PvP期間中ということもあって時間が合う人がそんなに多くいなかったらしい。そういうこともあって呼びかけに応じたのがバジルさんともう一人だそうだ。


 それでも実力はあるからジェットさんと交渉役の二人を合わせれば私の護衛をしながらゴブリン王国にいくのなんて余裕らしいけど。


「まぁ盾役だからな、いないと困る」


「盾なら私の連れてる子でもできるんだけど小回りが利く子じゃないから」


 バジルさんとマーガレットさんの言い方からすると、今のメンツじゃ難しいらしい。ていうかよく見れば後衛っぽい人ばっかりだ。ローブ姿二人、ドレス一人、普通の服二人。そしてマーガレットさんの言い方だと前衛は【調教】済みのモンスターにやらせるスタイルみたいだ。


 待っていると走ってくる足音が聞こえた、そちらの方を全員が向き、走ってきた人はある程度近づいたところで止まる。


「アッキー! 参~上!」


 仮面○イ○ーの「変身」の決めポーズでそう言い放つ、軽鎧を装備し兜を身に着けておらず顔がはっきりとわかる男性。


 ………誰? あれ、なんか知ってる人の気が…いやまさか知らない人だろう。


 私がぽかんとしているとバジルさんとマーガレットさんがその男性に近づく。


「おいナギちゃんがぽかーんとしてるじゃないか…こいつはアッキー、俺とかホムラと固定PT組んでてリーダー的な奴でもある」


 ため息をつきながら男性の紹介をするバジルさん、「遅れてきて第一声があれはないだろう」と指摘するのも忘れない。


「そうよ、二つ名は『はしゃぎ過ぎ』っていって有名と言えば有名…」


「違うぞマーガレット! 『はしゃぎ過ぎ』じゃなくて『元気印』だ」


 マーガレットさんの補足説明にバジルさんが反論する。「自称元気印ね、自称」と全く相手にされていないけど。


「アッキー、参~上!」


 せっかく変な雰囲気が拭われたというのにもう一度同じことをやって見せる男性。私は全く反応できない。知っている人のはずだけど…多分知らない人だろう。


『おい、何か反応しろ、俺を殺す気か!?』


 誰かからコールが来る、やっぱり知っている人っぽいなぁでも知らない人だろう。


「は、げ、元気印さんよろしくお願いします」


「待て! 今ハゲって言っただろ!? 俺のどこがハゲだ!?」


 やっと出た私の言葉に誰かさんがひどく反応する。


「やだなぁ、ハゲなんて言ってませんよ? はしゃぎ過ぎと元気印どちらを呼ぼうか迷っただけじゃないですかぁ~」


 私は満面の笑みで答える。誰かさんは「ぐぬぬぬ」と言って何も言い返せなくなっていた。


 私達二人のやり取りを見ていたジェットさんが


「とりあえず、行かないのか…な?」


 と促すけど何となく顔色が悪い。


「ジェットさん顔色が悪いですよ?」


「え!? い、いやぁそんなことはないよ」


 私の問いかけにもジェットさんの顔はひきつっている。どうしたんだろう?


 そんなことがありながら私たちはゴブリン王国に向かって出発した。


 北のエリアは森と平原が混在した風景となっている。そして平原の方は共闘のときにはなかった道が整備されている。


 道に沿っていくと若干遠回りになるのでショートカットのため森を通る。今回の目的は狩りでもなくゴブリン王国に着きさえすればいいのでもなく、むしろゴブリン王国についてから、なので極力時間はかけずゴブリン王国に向かうという考えだ。


 この辺りに出現する雑魚モンスターは「ベア」、「キリングマン」。レアモンスターが「フォレストディアス」。ボスモンスターに「グレーグリズリー」だ。そして「フォレストディアス」以外はアクティブだ。


 「ベア」は栗毛色の熊で、「グレーグリズリー」は灰色毛の大きな熊。「フォレストディアス」は鹿で、近くにいても姿を見ることができなかったりするとか。そして「キリングマン」は人型のモンスターで黒ずくめの服装でフードを被っているため顔が分からない、しかし大きな鎌を持って攻撃してきて、たまに即死攻撃を使ってくるそうだ。


 私からすればどれも危険なモンスターであることには変わりないのでいつも以上に注意する必要がある。


「進行方向に熊、迂回するにも熊かキリングマンの二人…ってどうする?」


 マーガレットさんが索敵情報を報告。街から出てすぐに呼び出したマーガレットさんの飼っているウルフが索敵役をやっている。


「迂回が無理なら引き返すのも手だが、熊が一匹なら直進でいいんじゃないか」


 誰かさんの発言を受けてルートの変更をしないことが決まった。


「ナギちゃんは今日はおとなしく見てた方がいいかもね、何があるかわからないから」


「はい」


 ジェットさんの言うことに頷く。Lv上げがしたい気持ちはあるけど、調子に乗ってやられるのは迷惑だろうし。ジェットさんの顔色もちょっと戻ったかな?


 ベアを見つけるや否や誰かさんが突っ込んでいく、その間にマーガレットさんとプルートさん、バジルさんが魔法の詠唱。まだ敵が気付いていないためジェットさんは待機。


 マーガレットさんの魔法が当たる。ベアはこちらに気づき突進してくるけどそれを誰かさんが止める。そのうちにプルートさんの魔法が発動し削る。ジェットさんも攻撃に参加。


 魔法を受けてターゲットを変えようとするベアに挑発をしてしっかり自分から他の人に向かわないようにする誰かさん。


 しばらくして


「大っきいのいくよぉ~」


 満を持してという感じでバジルさんが魔法を放つ。


 ベアを中心に竜巻が発生し、ベアに風の刃が無数に襲い掛かっているらしく、一瞬で無数の切り傷ができ宙に舞いあがる。そしてドサッと落ちると消え去った。


「はぁ、やっぱりベアって強いんだな」


「何言ってるの? 今更…っていうかバジルはMP節約しなさいよ、あんな魔法使って」


 変なことを言う誰かさんの言葉にマーガレットさんが反応し、ついでにバジルさんに説教が飛ぶ。


「いやぁ、ベアと戦うなんて初めてだからさぁ」


 頭をかきながら苦笑いを浮かべるバジルさん。


「え! 初めてなんですか!?」


 北のエリアでの狩りもだいぶこなしてそうなバジルさんなのに初めて戦うというのは意外と思い、つい聞き返す。


「そ、ホムラがいない間は結局ゴブリン王国内で狩りしてたし」


 バジルさんはここで一度息を吐き、


「ホムラはベアを一撃で倒すし…」


 その一言に場が微妙な空気になった…。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv6【STR上昇】Lv29【幸運】Lv31【SPD上昇】Lv23【言語学】Lv32【視力】Lv35【魅力】Lv16【】【】【】


 SP30


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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