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ナギ記  作者: 竜顔
50/276

魅力

10万PVを突破いたしました。

これからもよろしくお願いします。

 イベント終了後、元のサーバーでは夜だったので、ビギの街に帰った後すぐにログアウトし、午後から活動を再開し、その日はそのまま昼の間に第三エリアで狩りまくった。というのも少しばかり慣れなければならないことがあったからだ。


 勇者ゴブリンの村から帰る時、【視力】のスキルがあるので夜間行動ができて便利だと思っていたら、とある問題が発生したことに気づいた。


 それは禁断の果実によって習得させられた【魅力】のスキルの影響だ。特に【魅力】スキルによって習得するアビリティが厄介で、自分より実力が劣る相手を無条件で「釘付け」状態にするというものなんだけど、これによってアクティブ、ノンアクティブ関係なくモンスターを「釘付け」状態にしてしまい、それが攻撃判定されるようで何かの拍子で解けた際に一斉に攻撃を仕掛けてくる。


 そのせいで街に帰る時、その気になればトレインできるほどのモンスターが襲いかかってきた。所詮第二エリアと第一エリアのモンスターなので大きな問題はなかったけど、その時は原因が分からなかったこともあって不意打ちを何回も受けてしまうことになった。


 【魅力】はLv1の時点でアビリティ以外にもアーツを覚える。【誘惑】といって、このアーツは魅了系の状態異常にかけるとともに、すでにかかっている場合は異常の段階を上げる効果がある。スキルのLvが低いこともあって「釘付け」の上、「親衛隊」までしかできないけど。


 そしてこの「親衛隊」状態がまた何とも言えない。私の敵となるモンスターを攻撃してくれるんだけど、私の言うことを聞くわけじゃないから好き勝手に攻撃を仕掛けていって、わざわざ「釘付け」状態で動きが止まっている奴を攻撃して状態を解き、そいつに殴られて自分も我に返って襲い掛かってくるので非常に厄介だ。もちろん、アビリティの範囲外のノンアクティブに攻撃を仕掛けて余計に敵を増やすこともある。


 そういうこともあるので、アクティブモンスターが多い第三エリアで慣らしを行っている。ただ「釘付け」で確実に一発分は動きを止めることができるので、戦いやすくはなった。…1対1なら。


 スキルのLv上げの方は【誘惑】のアーツを使うことで上がるらしい。称号の効果もあって耐性無効ということなので、使える時に乱発できるいうのは強みだ。


 ――ただ、誤算もあった。


「嘘でしょ!?」


 私はつい大きな声で叫んでしまう。


 「親衛隊」状態の荒野ウルフがエリアを駆け抜け次々と攻撃を仕掛けていき、そのモンスターを私がしとめるという飼い犬に振り回される飼い主のような戦い方をしていたんだけど、まさかそのままボスに突っ込んでいくとは思わなかった。


 といっても「親衛隊」状態を維持するため荒野ウルフが攻撃を仕掛けたあとの始末をすぐに済ませていたので、駆け抜ける勢いを殺すであろう障害がないまま荒野ウルフをボスに近づけてしまった私が悪いんだけど。


 第三エリアのボスと言えば、「ビッグワーム」。言うまでもなく、私が一人で勝てる相手ではない。…かっこつけたけど内心どうしようか焦りまくりだ。


 どうせやられるならとあがいてみることにした。助けを呼ぶことも考えたけど近くに挑めそうな人がいない。いや、もしかしたらいるかもしれないけど。


 ビッグワームが荒野ウルフを一瞬のうちに始末する。君はよくやってくれた…最後以外は。


 一応アビリティの範囲外のモンスターは、親衛隊の攻撃で私をターゲットしてきても、範囲内に入った時にアビリティの効果を受けて「釘付け」状態になる。ただ、今回は私の方が格下なので効かない。


 だから【誘惑】で足止めし、その隙に攻撃を加え先手を奪う。ん? 足止めしてるうちに逃げればよかった。有効範囲外に出たら効果が切れるから一緒かと切り替える。


 ビッグワームが上半身(?)を持ち上げ振り回す。当たらないところまで走り抜け、回避。そのあと目元を狙う。顔近辺はどんなモンスターでも「怯み」が起こりやすい仕様になっている。ただ威力の問題か動きは一瞬たりとも鈍ることはない。


 ダガーでちまちま攻撃を加えるけど、ぜんぜんダメージを与えてる感触がない。削っているのかもよくわからない。


「あれを使うか」


 私は【タイタンキラー】を取り出す。元々投擲用の武器ではないので耐久度の減りが早まるため、負けてもいいと考えてる今積極的には使いたくはない。ただ勝てるならば勝ちたい。耐久度が倒すまで持てばいいけど。


 パワースローを使ってビッグワームの上半身めがけて投げつける。見事にヒットし重たい一撃が加えられたことがわかる、さらに当たり所が良かったのか持ち上げられた上半身が後ろに倒れる。その隙に大斧を回収に向かう。


 しかし、上半身が後ろに倒れたことで、下半身(?)が薙ぎ払いのような軌道で前に放り出される。その下半身が私の頭上ぎりぎりをめがけ、これなら問題ないと思ったのも束の間、うようよと動く足の先っぽが…。


 掠った。とっさに右腕で頭をかばい急所判定を免れる。しかし吹き飛ばされた挙句HPの6割が持っていかれた。


 ――っちょ! 掠っただけで6割!


 これではどちらが攻撃した側なのかわからない。ホムラとか黒鉄さんとかが普通に倒してたけど、やっぱり私にとってはとんでもない強敵らしい。


 ポーションを飲み回復しながら斧の回収に向かう。ちょうどダウン状態らしく、ビッグワームの方も仰向けから起き上がるのに悪戦苦闘しているようだ。


 起き上がる前にチャージスローで攻撃。出し惜しみしないのは単純に使いどころを見極めていられるほど余裕がないからだ。無謀ともいえる挑戦だけど、勝つ可能性はありそうだ。


 ビッグワームが起き上がったところで一度後ろに下がり、ビッグワームの攻撃が届きにくい位置からダガーでちまちま削る。


 直撃すれば終わりという緊張感の中、なんとか直撃は免れるも、ビッグワームが暴れることで飛んでくる小石の類でダメージを受ける。


 パワースローのクールタイムが終了したのを確認し、【誘惑】で動きを止めてパワースローを使い大斧を投げつける。さっきと同じ高さのところに命中する。今度はひっくりかえらなかったけど痛がる様子を見せている。


 様子を見ながら斧の回収に向かう。回収作業が一番危険だ。何とか回収に成功し、そのままその場から走り去る。少し遅れて私がさっきいたところにビッグワームの上半身が振り落された。衝撃波で吹き飛ばされ、これだけでも3割ほど持っていかれる。


 立ち上がろうとした瞬間、ビッグワームの上半身を鞭のようにしならせる攻撃がもう目の前に迫ってきていた。


 ――あ、やっぱり負けた。


 そう思った瞬間、目の前に小さな……紙飛行機が現れビッグワームの攻撃を受けて散る。


 とりあえず攻撃範囲外まで逃げて、戦闘を再開。それからは私がビッグワームの攻撃を受けそうになるたびに紙飛行機の盾(?)で守られることもあって、強気でガンガン攻めて、タイタンキラーも壊れることなく、ついにビッグワームを倒した。そして光の粒子が胸に吸い込まれていく。


「お疲れ様、見た感じ勝てるなんて思わなかったからびっくり」


 そういって私をサポートしてくれた男性が近寄ってくる。ジェットさんでもスカイさんでもない紙飛行機使い。ジェットさん達のギルドマスターさんだろう。そうして私の目の前に立つと


「じゃあ、今のレアドロップくれ!」


――――――――――

NAME:ナギ

 【投擲】Lv30【STR上昇】Lv25【幸運】Lv28【SPD上昇】Lv18【言語学】Lv32【視力】Lv33【魅力】Lv12【】【】【】


 SP30


称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者

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