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ナギ記  作者: 竜顔
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人には人の

「なんでこんなところにいるんだ? もう新エリアには行ったのか?」


「いや、まだだ、ところでこの娘に防具を作ってやってくれないか? 素材は足りると思うが」


 ジェットさんの言葉に職人さんが、見せてみろ、というので素材を渡す。


「これだけ持ち込んでもらえりゃ、安値で作ってやれるぜ、ところでジェット、その娘はお前のなんなんだ? 彼女か?」


「まあ、そんなとこ「違います!」」


「――そうかい、まぁ君の話は聞いてるよ、悪い方の話だが」


 うっ・・・。


「VRが初めてで戸惑ってただけさ、悪意があってやってたわけじゃない、俺がストーカーして見てたんだ、これ以上の説得力はないだろ?」


「むしろお前の方が問題な気もするが・・・とりあえず他にも注文がきてるからしばらく時間がかかるぞ」


「わ、わかりました」


「できるだけ急いでやってくれ」


 ジェットさんがそういうと、わかった、と言って職人さんは店を畳んだ。


「そういやお嬢ちゃんの名前はなんていうんだい? できあがったらコールするから」


 コール?と首をかしげているとジェットさんが、あとで教える、というので、職人さんに名前を教えた。そしてコールではなくメッセージで伝えてもらうことになった。


 そのまま二人で南門の方の露店群に行き、そこから中心街へ向かう道の途中のプレイヤーが経営する喫茶店に入った。


 コールというのは、チャットや電話のような機能で、離れている相手とも会話ができるというもの。コールする側がメニュー画面を開いて諸々の手順を踏むことで相手と回線がつながり、会話ができる。コールされた側はとくに何もしなくてすみ、余裕がないなら無視すればいいので、特に迷惑になることはないが、極力戦闘してると思われるときは避けるべきとのこと。コールによる会話はわざわざ口に出す必要はなく、念じるようなイメージで十分らしい。


 メッセージは簡単に言えばメール機能で、お知らせをONにしていたり、ログを開いていれば、わざわざメニュー画面を開かずともメッセージがきているかどうかわかるらしい。ただし、内容はメニュー画面からメッセージのところを開かないと読めないらしい。


 フレンド登録したあとジェットさんとコールで会話している。


『じゃあメッセージを送ってみて』


 といわれたので空メール。というより空メッセージ? を送った。


『じゃあ次はこっちから送るから、メッセージ画面で確認してね』


 といってすぐに送られてきた。



 <ナギちゃんへ:Fromジェット>

   ナギちゃん愛してる



 説明を受けてないけどすかさず消去でき(し)て、目の前のジェットさんに視線を向けると平然とした、さも何事もないような表情だった。


『どう、届いた?』


『はい、でももうこの世にはありませんね』


『消すの早っ!』


 そのあとゲーム内での食事を済ませると、ジェットさんは行くところがあるらしく、


「お代はここに置いていくね、いろいろ連れまわす感じになったから今日はナギちゃんの分もおごるよ、あっ追加で注文したらその分は自分で払ってね」


 そういって一足先に店を出て行った。さて、何をしたらいいものか。


 現実では昼頃だろうか、そんなこと考えているとあたりがうす暗くなり、店に明かりが点く。特にやることもないし、防具ができるまで時間がかかるみたいだから、店を出て一旦ログアウトしようかな。と考えていたら


「相席してもいいですか?」


 その声に顔を上げると女性が立っていた。店を見回すとほかにも席が空いているのが見えたが、私はどうせすぐ店から出ようと考えていたので


「はい、いいですよ」


 と答えると、女性は席に着く――


「あの・・・」


「・・・・・」


「あの~、聞こえてますよね?」


「はい?」


 私の問いかけに女性は、どうかしましたか? というような感じで顔を私の方に向ける。


「どうして私の隣に座るんですか?」


 テーブルには椅子が四席あり、四角いテーブルに片側二席ずつ向かい合うように置いてある、そして相席の女性はさっきまでジェットさんが座っていた私の向かい側の椅子ではなく、隣の椅子に座っていた。


「え? ダメですか?」


 さすがに知らない人が隣に座って落ち着いていられる人はいないと思いますが・・・。


 女性の口調はややのんびりとしている。というより何かを押し殺して冷静に声を出しているという方がいいような感じがする。さらに、壁寄りのテーブルで私が壁側なので出るに出れない状況になってしまっている。


「やっぱりかわいい娘の隣は落ち着きますね」


 直感で危ないと感じるには十分だった。急いで席を立とうとしたら、止められた。


「そんなに急がないでいいじゃないですか~、その大きい胸は天然物ですか?」


 ――大きい!? あ、あるにはあるけどそんな大きいなんて――と思って隣の女性の胸のあたりを見て、察した。スキャナーだから天然になるのかな、というと残念そうだった。


 その女性はコンプレックスがあるらしくてせめて仮想空間だけでもと思っていたけど、現実と違う風にしてしまうとどうなるのかが怖くてできなかったらしい。それで、自分が好きなタイプの女の子――その辺は元々らしい――で、自分よりサイズのある女の子に聞いて回ってるらしい。今のところ全敗らしい、でも仮想空間だからと体を偽ってる女性はそこにコンプレックスがあるだろうから、知らない人に真実を伝えるか怪しいと思ったけど、口にはしない。


 コンプレックスは誰にもあるよね。見た目とか性格とか…。


 その後ちょっとしたガールズトークに花が咲き、店を出て別れたところで現実の昼時だということを思いだし、慌ててログアウトした。


「ちゃんと時間には気をつけなさい、VRだっけ? それはこっちから話しかけても気づかないんでしょう?」


 母に叱られながらお昼を食べる、今度からあなたたちがゲームをやめてからご飯を作ろうかしら、と結構ご立腹のようだ。


 お昼を食べてログインした。夜間しかプレイできないプレイヤーのことを考えた時間設計なので、休日の昼間でもゲーム内では夜で、モンスター狩りに積極的になりづらい時間帯が訪れてしまう。ただ、その間現実の方に費やすことに抵抗感がなくなることを考えると、デメリットばかりではないなと感じる。


 さて、何をしたものかと思っていたら「防具ができた」のメッセージがきてたので革職人さんのところへ行く


「おっ、来たか」


 私はお金を渡した後、防具を受け取り、さっそく装備してみる。


「今回は特にオーダーがなかったからオーソドックスな感じの皮鎧になるな、で、着心地はどうだ? 胸のあたりも一応配慮したが・・・胸に限らず合わないなら言ってくれ、採寸するから、俺が嫌なら知り合いの女生産者に頼んでやる」


 特に着心地が悪く感じることはなかった。が


「この耐久度ってなんですか?」


 今もらった防具には耐久度35/35の表記があった。


 耐久度は0になるとロストするらしく、0になる前に修復することで回復するとのこと。でも装備には寿命があるようで、寿命が来ると修復ができなくなり、ロストするまで使い潰すか、ばらして使えるところをリサイクルか、NPCに売ってデータごと消すか、好きにすればいい。といわれた。


「あと、昨日迷惑やってたのは右も左もわからない新人ちゃんで、ジェットが面倒見てるから、そう冷たく接してやんなよって俺から周りのやつらに言っといたから」


 職人さんの名前は「マキセ」さんといって、第一陣のプレイヤーで、贔屓にする冒険メインのプレイヤーも多い、凄腕な生産プレイヤー。ということで顔が広いとか。


 お礼を言うとマキセさんは


「よくわからないうちに悪い噂が立って、ハブられてやめるなんて同じゲームをやる身として悲しいしな」


 と言ってニッと笑った。それから、ナギちゃんもあんまり人見知りしてたらだめだ、と注意されて、そのあとフレンド登録した。


――――――――――

 NAME:ナギ

  【投擲】:Lv9 【STR補正】:Lv6 【幸運】:Lv3 【】 【】 【】


  SP10

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