さらばエイロー、また会う日まで
――日曜日、午前10:00過ぎ
「ナギちゃん、どれくらいたまった?」
「相当ですよ!」
ジェットさんが確認してくるので答える。
私たちは右の森に来ている。先日受けた「欲望の果実」と「金のなる木の種」を収集するクエストを受けている。もちろんダブったやつを売ることでお金が稼げるからからで、特に幸運もちの私にとっては他にないぐらいおいしい話だからだ。
ジェットさんとスカイさんは完全にサポート要員として立ち回ってくれている。二人ともランキングにはもう興味はないらしい。そして今、先日と同様に私とジェットさん、ホムラとスカイさんで別れて行動している。
ただ、私たちのお金稼ぎは思ったようにはいかなかった。
「ホムラの旦那はまだ出てないらしい」
そう、残り時間が迫っているというのにホムラが一向に引き当てられない。かれこれ一時間以上だ。このままでは換金まで時間が足りなくなってくる。正直クエストを失敗させて、クエストアイテムを全て売り払ってもいいんだけどホムラがクエスト失敗でポイントがマイナスされたらたまらんとか言うから。そもそも所持金もホムラの推測であって実際どうかわからないわけで。
まぁお金に関しては、イベントで稼いだ分を持って帰れるのなら稼げるだけ稼いだ方がいい、と言われたから積極的なんだけど。
『やっと出た、今から街に帰るぞ、合流するのは街についてからでいいな?』
ホムラからPTチャットで報告を受け、私とジェットさんは街に駆け出す。
街に着く前に合流を果たしそのままクエストの担当NPCのもとへ向かい、クエストを完了させて、私は余ったクエストアイテム売りさばく。最終的に「バニードール」で先日のように食べても余裕があるくらいになった。
「ふぅ…」
「間に合った…」
「ホムラさん…今度からは計画的にお願いします」
「…俺もここまで出ないとは思わなかった」
全員がほっと一息つく。イベント終了10分前だった。
ぎりぎりまでと言って街の外に出ていく人を見送りながら私たちは時間が来るのを待った。
11:00になるとともにイベントの終了を告げるアナウンスが入った。
「11:00になりました、皆様、これにてイベントは終了でございます、同時にただいまから各種表彰を行わせていただきたいと思います」
まずは、すでにポイントは割り振られていて特別加算されるわけではないと前置きをしたうえでの各種行動における順位表が発表される。
《バッファ朗討伐数ランキング》
1位 エース&テツ 様
2位 リュウ&キョウ 様
3位 ロイド&マギー 様
《ビッグシード討伐数ランキング》
1位 エース&テツ 様
2位 リュウ&キョウ 様
3位 イチゴ&もっちゃん 様
《ヘラクレスキングカブト討伐数ランキング》
1位 エース&テツ 様
2位 ロイド&マギー 様
3位 リュウ&キョウ 様
《クエスト達成数ランキング》
1位 フランダート&ガンテツ 様
2位 エース&テツ 様
3位 パパン&ママン 様
戦闘系はエースさんとテツさんが1位を独占。地味にリュウさんとキョウさんの二人も全てにランクインしている。クエスト達成でもエースさんとテツさんの二人は2位につけている。
それから生産系のランキングが発表される。こっちは生産量でランク付けがなされているらしく、武器、防具、薬品、料理の四部門だった。そこに私の知っている人の名前はなかった。
《特別ミッション【夜を舞う蝶】:最高ランク「バニードール」》
ホムラ&ナギ 様
《隠しミッション【夜の案内人】:最高ランク「バニードール」》
ナギ 様 … 案内した人数 1人
メルサさんを案内したのは隠しミッションにあたる行動だったらしい。それとバニー・バーンはメンバーズカードは誰でも手に入れられるといってたけど、最高ランクはそうでもなかったらしい。なんか不正を働いた気分だ。もちろん私たちは別に何かずるしたわけじゃないけど。
次は順位に応じてポイントが加算されるものらしく、エイローイベントにおけるある意味メインとなる部分の表彰。
《ベストカップルランキング》
1位 リュウ&キョウ 様
2位 ロイド&マギー 様
3位 ブルーベリー&ラズベリー 様
《ベストフレンドランキング》
1位 エース&テツ 様
2位 フランダート&ガンテツ 様
3位 武蔵&小次郎 様
「それでは次に個人に贈られる賞に移りたいと思います、表彰された方のペアにはポイントが加算されるものとなっております、まず最も戦闘において活躍したプレイヤーに贈られる賞です」
《ベストバトルプレイヤー》
エース 様
「次に、最も生産で活躍されたプレイヤーに贈られる賞です」
《ベストメイキングプレイヤー》
ヘパイストス 様
「次に、最も街の一員として活動したプレイヤーに贈られる賞です」
《ベストシビリアンプレイヤー》
フランダート 様
「そして、最後に、イベント期間中最も多様な体験をしたプレイヤーに贈られる賞、MVPの発表です」
《MVP》
ナギ 様
MVPの発表があったとき、私は驚きのあまり言葉を失った。正直MVPなんて考えてなかったし、もらえるとは思えなかったからだ。ただ時間が経つとともに、イベント期間中に起こった様々な出来事を運営の人たちに覗かれ、特に【心酔】関連では笑いものにされたのかと思うと複雑な気分になったのは内緒。
「それでは、以上のことを踏まえまして、褒賞のある第5位までの最終的な獲得ポイントのランキングを発表いたします」
《恋の試練の街エイロー:最終結果》
1位 エース&テツ 様
2位 フランダート&ガンテツ 様
3位 リュウ&キョウ 様
4位 ロイド&マギー 様
5位 ホムラ&ナギ 様
「これにて表彰は終了です、各種表彰の褒賞は元のサーバーに戻った後、該当者様に授与されることになっております、では皆様、一週間のイベントお疲れ様でした、これからも『○○記』をよろしくお願いします」
そのアナウンスを最後に、私たちは光に包まれ、気づけばエイローに行く際の集合場所である勇者ゴブリンの村の横の平原にいた。それと同時に褒賞が授与されたことを知らせるメッセージが届く。
夜を舞う蝶、夜の案内人、MVP、総合5位のそれぞれの褒賞。まずは夜を舞う蝶。
【バニードールの制服】
装備カテゴリー:セット装備
DEF:+320
効果:回復効果増加(中)
セット効果:DEF2倍、魅了効果付与
エイローの伝説の店『バニードール』の制服。普通のより一回り大きくもふもふのしっぽ飾りが自慢。
「セット装備って何?」
近くにいたホムラに質問する。
「全身の装備で一つってことで、それを装備しようと思ったら、鎧だけ変更とかできないって意味だ」
「じゃあセット効果と効果ってどう違うの?」
「指定の装備が全身一式揃って初めて発動するのが『セット効果』で、部位ごとが『効果』ってところだな、セット装備の場合は意味は一緒だ、何故なら『効果』がどの部位のものかわからないからな」
ただ、セット装備は解体が可能で、強力な効果を持っている部位なんかは分離させて使うこともあるらしい。
気を取り直して褒賞を確認。次は夜の案内人。
【ウサギのぬいぐるみ】
特殊アイテムアイテム
効果:「バニードールの制服」の耐久力∞化、および破壊無効化
発動条件:イベントリ内に所持
不思議なウサギのぬいぐるみ、持っているだけで意味がある。
能力的側面ではいいけど、バニードールの制服を着るつもりがないので封印確定。次はMVPの褒賞。
【禁断の果実】
食材アイテム(トレード不可)
効果:魅力が上がる
異様な魅力を持つ食べてはいけないとされる果実。でももったいないので食べてね。
何ともコメントしづらい。トレード不可ということであとで生で食べるとして、次はホムラが気にしていたランキングの褒賞。
【ペアルックバングルNo.5】
装備カテゴリー:腕輪
DEF:+20
効果:チェインアタック(強)、両者装備時番(つがい)の位置情報可視化
ペアルックの腕輪。No.5は二人行動に有効な最低限の機能が搭載されている。
「これって、私達じゃ使いづらいよね?」
「まあ、そうだな」
「じゃあトレードできるみたいだし、元々ホムラの固定PTの人が気になってたみたいだからあげる」
「いいのか?」
「イベント中心配かけたりしたから、それに常に一緒に行動する人とか私には今いないし」
「わかった」
ということでペアルックバングルをホムラに渡す。それから確認作業を待ってくれていたジェットさん達も含めて全員解散。
私は一人になって【禁断の果実】にかぶりつき、食べ終わると、
<sp5消費して【魅力】のスキルを習得しました>
――!!
「うげ、変なのを、しかもSP消費して勝手に習得するなんて!」
こうして私の初めてのイベントは終わった。
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NAME:ナギ
【投擲】Lv30【STR上昇】Lv20【幸運】Lv28【SPD上昇】Lv11【言語学】Lv32【視力】Lv31【魅力】Lv1【】【】【】
SP29
称号 ゴブリン族の友 恋に惑わされる者




