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ナギ記  作者: 竜顔
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嵐の前

 しばらく女性陣によるエースさんの囲み取材が行われていたけど一旦切り上げ、街に戻りクエストを完了させに行く。クエスト専用アイテムが【バッファ朗の角】、これを指定されたNPCに渡すことでバッファ朗を討伐したことを証明し、完了になる。


 クエストを完了して、そこで解散。その時にエースさんから一つ(この場合一球が適切か)ボールをもらった。



【超剛球】

 武器カテゴリー:ボール

  ATK×30

  効果:破壊(大)


 この世で硬さと重さの両方をもっとも兼ね備えたボール。ひとたび手を離れれば何であっても止めることはできない。



 ・・・どこかおかしい、いや、むしろおかしいところしかない。×30って何!? 


「あ、あ、あの、エースさんはいつもこんなボールを?」


 恐る恐る聞いてみる。


「いや、それはここぞって時に使うとっておきだ」


 そうやすやすと使える代物ではなかったみたい。ひとまずは安心する、と同時にそんなものをもらっていいのか聞くと、


「ジェットが世話になってる分だ、あいつも色々考えて情報開示に消極的なんだ、それでも仲良くやってくれるお礼…とあとは個人的なエールも込めてな」


 エースさんにも私とジェットさんの関係性は筒抜けらしい。ジェットさん普段ギルドで何しゃべっているんだろう、すごく心配だ。個人的なエールの意味も気になるけど、エースさん達とはそこで別れて、ジェットさん達との四人だけになった。


「で、ナギはどうする? 昼飯の時間…だろ?」


「・・・す、過ぎてるー!!!」


 過ぎてた! 過ぎてたよ、え? 何がって? それはもう時間が、普段のお昼よりも時間が。バッファ朗を倒した時は何ともなかった、私が座ってみんなが集まって話してるうちに、自覚がないまま時間が過ぎ去っていた。


 ――っとダッシュダッシュで帰らなきゃ!


「い、急いでログアウトするね!」


 私はできる限りのスピードで宿へと向かう。宿へ着いたらポータルを踏み廊下に出て、二人の部屋に入り共有スペースを突っ切って自室へ入ってログアウト。


 こういう時に気づいたけど、自室でしかログアウトできないって結構面倒。


 現実に戻り慌てて一階のダイニングへ…無い! お皿が無い!


「どうしたのナギ? ぼぉっとして」


「え、お母さん、お昼ご飯は・・・?」


「何言ってるのナギ? お昼の時間間に合わないかもっていうから、今日はカップラーメンでいい? って――」


 聞きたくない! これ以上聞きたくない! 忘れてた…お母さんから「カップラーメンでいい?」って聞かれて「いいよ」って言った挙句、自分で作るとまで言い放った数時間前を。


「ゲームをするのもいいけど、現実に変な影響与えるんじゃだめだからね?」


 念をされるかのように「ね」に力がこもっていた。実をいうと現実に変な影響を与えたというより夜更かしのせいで辛い朝が来ただけというか、言うまい母は恐ろしいのだ。


 自分でカップラーメンの湯を沸かし、容器にそそぐ、そして3分待つ間変なことを考えたりもしていた。


 誰かが10分あればカップラーメンが3個作れると言ってるのを聞いたことがある、私の見解では3分あればいくらでもカップラーメンは作れる、お湯さえあれば。とそれを誇らしげに語ったら、5分のやつはどうするんだ、と言われたことを思い出した。確かあれは昔雄君とお兄ちゃんと三人で食べていた時だっけ。


 懐かしい思い出にしみじみしつつ――お母さんから頭がおかしくなったと言われつつ――昼食を終えて再びログイン。


 自室から出る。と、


「ナギちゃんおかえり~」


「おじゃましてまーす」


 共有スペースにはジェットさんとスカイさんもいた。


「なぜいるんですか?」


「えっいない方がよかった!?」


 オーバーな感じでショックを受けた様子を表現するジェットさん。別にそういう意味で言ったわじゃないけど…っていうかジェットさんの言葉には変な疑いの意味も含まれてる気がする。


「えっと、二人がいることを聞いてるんじゃなくて、二人がどうして部屋に入れたのかを」


「割と普通に入れるよ、ドアを開けた状態でそのまま入るだけ」


 となんともないように話すスカイさん。話によるとイベント始まってすぐエースさん達が押しかけてきて検証したらしい。その話をするときはなんだか嫌そうな表情をしていた。


 聞けばエースさんも検証癖があってやばいらしい。どうやばいかというと【石ころ】で敵のHPがどのくらいあるのか検証を行うぐらいやばいらしい、なんでもビッグワームも【石ころ】だけで倒したりもしたとのこと。ギルドの中にはその苦行に付き合わされた方々が「被害者の会」を立ち上げるほどだったとか。


 【観察眼】のLvが上がったおかげで付き合わされることが無くなり、現在「被害者の会」は休止状態だそうだけど、会員全員が思い返すと苦い表情になるほどトラウマがあるらしい。


 【観察眼】は相手のステータスや行動予測、HPなどが、Lvが上がることによって見れるようになるらしい。HPは数値まで見れるみたいで、基本的にはボス以外ダメージを与えるとHPが可視化されるけど数値まではわからないので、「とどめを刺したら~」のアーツを使う時のHP調整に便利だそうだ。


「とりあえずこれからどこ行く? 午後はボスも空いてないみたいだし、森にも行ってみようと思うけど」


 ジェットさんが仕切る。ちなみにボスは掲示板なんかに挑戦時間を書き込み募集をかけて、集まった面子で挑むというシステムになっているらしい。戦闘が長引けばその分ずれ込む。もちろん今から募集に乗っかって超大人数で挑んでもいいわけだけど、草原と違って森は広いスペースが取れないため却って戦いづらくなるだけだ。バッファ朗は今日はもういいし。


「エイローから出て右と左どっちがいい?」


「右と左ってどう違うの?」


 ホムラの質問に私は質問で返す。私は自慢じゃないけど情報を見ていない。森があるだけということとボスが違うということしかわからない。


「左は虫系モンスターの宝庫、右は植物系モンスターの宝庫」


「虫…いやだなぁ」


「右にいくか」


 ジェットさんの説明を聞いて嫌そうな顔をした私に配慮してもらい右の森に行くこととなった。


 そうと決まればと準備へ向かう。その最中に私がお昼に行っていた間レイドボスの特徴を調べていたらしく、どうやらバッファ朗以外は詳細な情報が報告されていたみたい。


 左の森のボス「ヘラクレスキングカブト」は名前の通り大きなヘラクレスオオカブトだ。防御力が高く衝撃反射持ち装甲のため近接武器だと反射ダメージを受けてしまう。一定量のダメージを与えると羽が開き、その晒されたボディは反射をしない上にダメージが通りやすいけど羽が閉じられるときに取り残されると、早く脱出しないとそのままイベントから姿を消してしまうらしい。要するに死ぬ。という近接アタッカー殺し。


 右の森のボスは「ビッグシード」といって大きな種みたいなモンスターだそうだ。クルミのような見た目で割れ目を口のように使い「ベビーシード」という小さい種モンスターや技を口から吐き出す。クルミの下には根が生えているけど、地中にあるため基本的に目に見えるのはクルミみたいな種ボディで根は地中から攻撃を仕掛けてきて、遠距離攻撃するプレイヤーに襲い掛かるうえ、挑発が効かないモンスターだそうだ。そのため飛び道具殺しと言われている。


 といっても今回はボスと戦わないので特にどうでもいい話。私達は準備を終えて森へ行くべく街の外に出た。


――――――――――

NAME:ナギ

 【投擲】Lv30【STR上昇】Lv10【幸運】Lv24【SPD補正】Lv30【言語学】Lv32【視力】Lv19【】【】【】【】


 SP30


称号 ゴブリン族の友

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