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ナギ記  作者: 竜顔
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エースとテツ②

 まずは作戦通り全員が無事各々の配置に着くことができた。


 配置はバッファ朗の正面にダグラスさん、ダグラスさんの右横やや後ろにホムラ。ダグラスさんの後ろにはレイさん、さらに後ろにミリィさん。リリィさんはバッファ朗の左。バッファ朗の左斜め前方にはエースさん。バッファ朗の右が私とテツさん、バッファ朗の後ろがジェットさん。スカイさんは流動的に、という配置だ。


 各役割分担は、ホムラとダグラスさんで注意をひきつけつつ動きを封じる。そこに投擲部隊がアーツによる牽制で二人のサポートをしつつ削っていき、ミリィさんとリリィさんは基本削るだけ。レイさんは回復と、状況によって強力な魔法攻撃。


 ホムラの攻撃はガードされる、しかしその隙に他のメンバーが攻撃。バッファ朗の攻撃のタイミングにはホムラは後ろに下がりダグラスさんが盾で守る。


 昨日みたいにホムラの攻撃による顔ガードに頼らないのにはいくつか理由がある。まずガードされると武器の耐久度の減りが早くなるので無駄な消耗は避けるため、そして盾のアーツ【パリィ】で攻撃を弾けばホムラにも攻撃の出番ができるためだ。


 順調に戦闘は進んでいる。みんないい緊張感で集中している…けど、


「テツ! 攻撃がくるぞ! 【カットボール】だ!」


「エースさん! 俺まだ覚えてません!」


「しゃぁねぇな、俺が投げるぞ!」


 エースさんとテツさんはなんだか楽しそうだ。ふざけているようにも見えるけど。ちなみに二人ともいつの間にか左手にグローブをはめている。


 そういえば以前ジェットさんから【投擲】の特化スキルについて説明を受けたときに【ボール】は牽制向きのアーツが多いと聞いていたけど、今まじまじとそれを見せつけられている。


 【ボール】のアーツは実際の変化球と同じ名前のアーツばかりで、今のところ見せてもらっているのは三つ。【スライダー】は攻撃を弾く【パリィ】と同じ効果ながらダメージも与えられるというもの。【シュート】は攻撃を逸らす。【カットボール】は攻撃行動をキャンセルさせる。


 楽しそうな二人のことは置いといて、スカイさんやジェットさんもアーツを好きなだけ使いまくる。ミリィさんとリリィさんも時折アーツを放ちながらせっせと攻撃している。


 ダグラスさんがパリィで弾きホムラが大斧を叩き込む。


「よし!」


 バッファ朗は大の字になって地面に伏せるような状態になる。ダウン状態だ、これから起き上がるまでバッファ朗は無防備な状態をさらすことになる。


 バッファ朗がダウン状態になったので一斉に全員がチャージ体制に入る。私もタイタンキラーを構えてチャージ。


 そしてそれぞれが思いきり強力な一撃を打ち込む――


「ああぁ!」


 テツさんの投げたボールはあらぬ方向に飛んで行った…。


「テツ!」


「すいません!」


 そういえば、二人がうまく決めてたから忘れてたけど、【ボール】のアーツはファンブルしやすいんだっけ。


 こんなところでも緊張感のない二人にあきれつつもそんなことを考えていた。


「マネージャー! 斧残ったままっす!」


 テツさんが後ろを振り返って私を見る。


 ――マネージャー? あっ私か!?


 マネージャーと言われて一瞬わからなかったけど、斧はタイタンキラーのことを言っているらしい。私の装備なので誰も回収することができない、私自身で回収に行かなければいけないのに投げっぱなしだった。どうやら私も緊張感のない二人に負けないほどねじが緩んでいたらしい。っていうかいつから私はマネージャーと呼ばれることになったんだろう?


 私が斧をとり終わった後バッファ朗が起き上がる。そしてすかさずダグラスさんが挑発を行う。そして再び先ほどまでの立ち回りに戻る。すると、


「ブレイク来るぞ! 注意しろ!」


 エースさんが真剣な声で叫ぶ。恐れていたブレイクがここで発動する。ブレイクが来た際はダグラスさんが壊れてもいい盾に持ち替え攻撃を受ける、そしてまた盾を装備する間は他のメンバーで時間稼ぎをする手はずになっている。


 ダグラスさんが盾を持ちかえて攻撃を受け、盾が壊れ――!!


 ダグラスさんに攻撃を当てたと思った瞬間すぐさまバッファ朗は体を反転させ前足を勢いよく地面にたたきつけ、バッファ朗のお尻が浮き上がる…あれは多分蹴りだ。


「ホムラ! 横に跳べ! テツ!」


 エースさんがテツさんを呼ぶが早いか、テツさんのシュートがバッファ朗のお尻のあたりに当たり、ギリギリのところでダグラスさんたちの横、さっきまでホムラがいた場所を足が通過する。


 ジェットさんが【特攻】でターゲットをとり視線誘導でリセットしつつホムラたちの方を向かせる、そしてホムラが攻撃をして顔でガードさせ、その間に盾を装備したダグラスさんが挑発することで陣形を整える。


 とりあえず一難は去った。今ので昨日のPTがやられた原因がなんとなくわかった。多分昨日のPTはバッファ朗がブレイクを使うことを知らなかったか、ブレイクの後あのスピードで蹴りがくるとは知らなかったんだと思う。


 ダグラスさんのパリィで弾いた後、ホムラの一撃で再びダウンを引き起こす。魔法の詠唱中のレイさん以外で攻撃を加える。今度はちゃんと投げた斧を急いで回収する。


 しかし、まだ倒すことができない。どうやら昨日の逃走者PTが安定して戦えていたというのは嘘ではなかったらしい。私はまだ倒せないことに驚いていたけど、ホムラたちはそんな様子はなかった。


 そういえば昨日の四人の「安定して戦えていた」という言葉をホムラはすぐに信用していた。きっとホムラたちにはレイドボスというものがあんなに楽に終わるものではないということが分かっていたんだろう。


 四人でもなんとかなりそうとか考えていたけど、この中で一番弱い私がこの中で一番考えが甘かったらしいと反省。


「準備できました!」


 しばらくしてレイさんの魔法の詠唱が完了したらしく、レイさんの言葉を聞いてホムラとダグラスさんが少し下がる。


「【パニッシュメント】」


 上空から光の柱がバッファ朗の上から撃ち落とされる。ダウンはとれなかったけど、強烈な一撃で踏ん張るためにバッファ朗の動きが一瞬止まった。


 その隙にダグラスさんが挑発をかけるけど…様子がおかしい。変に思ったのかスカイさんも特攻でターゲットをとろうとするけど、バッファ朗は体の向きを変えない。と思った瞬間バッファ朗が跳んだ!


「レイ! とにかく後ろに逃げろ! ホムラとダグラスは左右に別れろ! ミリィも横に逃げろ!」


 エースさんがブレイクの時と比べられないぐらい慌てた様子で声を張り上げる。それを聞いてレイさんは一目散に後ろに逃げ、ダグラスさんとホムラはそれぞれ別方向に跳んで回避。一瞬遅れてバッファ朗が地面に着地、少しでも遅れればホムラとダグラスさんは体の下敷きに、レイさんはあごの下敷きになっていたところだ。


 しかしまだ終わっていない、着地の衝撃で躓いて転んでしまったレイさんにバッファ朗が攻撃態勢に入って突っ込んでいく。


 ――危ない!


 そう思った瞬間何かがバッファ朗に当たったのかバッファ朗は少し「怯み」を見せて、レイさんへの攻撃行動ををやめた。エースさんの【カットボール】が間に合ったらしい。


 陣形を戻すために一度ジェットさんが特攻でターゲットをとる。バッファ朗は逆方向に振り返りジェットさんに向かっていく、そしてテツさんが投げたボールが当たると動きが鈍る。


「マネージャー! 多分もう少しっす、陣形が戻れば勝ちっすよ」


 テツさんが振り返って伝えてくれる。テツさんが投げたボールが何なのか気になるけど、私はもう一度気を引き締め直す。


――――――――――

NAME:ナギ

 【投擲】Lv30【STR上昇】Lv10【幸運】Lv23【SPD補正】Lv30【言語学】Lv32【視力】Lv19【】【】【】【】


 SP30


称号 ゴブリン族の友

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