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ナギ記  作者: 竜顔
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街の外へ

「おお! お待たせしました! ホムラさんに会えるなんて!」


 ジェットさんの相方がやってきた。髪は黒髪でちょっとつんつんしている。おでこの上に青いフレームのゴーグルがかかっている。服装は布の軽装、上は蒼い色を基調としていて袖口が少しブカブカだ。下は薄い黄土色の長ズボンといったところだろうか。


「ああ、で…」


 言葉を詰まらせるホムラを見て、ジェットさんの相方はハッと何かに気づき、


「あっ、すいません、俺の名前はスカイって言います」


 スカイさんを見てホムラは、こいつか、とジェットさんに聞いていた。ホムラも知っている人なんだろうか。


 全員揃ったところで酒場へ、街の外には雑魚モンスターとレイドボスと言われる巨大なモンスターがいるらしい。普通レイドボスといえば、複数PTで戦っても苦戦するようなモンスターだけど、今回のイベントは二人PTが基本なので基準がよくわからない。


「とりあえずこの辺の雑魚なら俺たち四人で問題はない、正直俺たちついて行っていいのか?」


「ああ、多いほうがスムーズに進むだろうからな」


「ホムラの旦那ならたぶん一撃だと思うが」


「だから俺はそっちに集中するつもりだ、お前たちはナギのサポートをしてほしい」


「了解」


 酒場で、おそらく討伐系のクエストを見ながらホムラとジェットさんは会話をしている。スカイさんはそれに反応したり、時折会話に混ざったりしている。私は置き去りだ。


『どうも、ナギちゃん、つまらなそうだねぇ』


 一瞬誰からかわからずびっくりした。スカイさんからだ、でも今スカイさんは何の操作もせずにコールしてきた気がする。


『いやぁ、ホムラさんとナギちゃんが二人で歩いてるのを見たときからジェットに元気がなくてさ、助かったよ』


 コールをしながらもスカイさんは器用に他の二人と直接の会話を繰り広げている。


『えっと…スカイ、さん? 操作しているようには見えませんでしたけど』


 スカイさんの雰囲気は軽い感じでフレンドリー、でももしかしたら聞いてはいけないことかもしれないので、恐る恐る聞いてみた。


『ああ、これは【ターゲット】のスキルのおかげだね』


 ターゲットスキルはターゲットサークルとターゲットポイントの二つのアビリティを習得できるもので、ターゲットサークルはその範囲内の場所を狙えるらしく、ターゲットポイントは「その一点」を狙えるらしい。


 つまり、ターゲットサークルを使えば広範囲のアーツをサークル内の範囲に抑えることもできるし、またどういった状況下でもその範囲内に向かってホーミングできるらしい。その分サークルの範囲内という大雑把なターゲッティングしかできないので、ピンポイントで狙うなら使えない。


 ターゲットポイントは、簡単に言うと普通は敵を狙って攻撃してもよけられれば当たらないけど、ターゲットポイントを使い照準を合わせればほとんど確実に当てられる。たとえばウルフの鼻に照準を合わせれば、ウルフが動き回ってもファンタジー補正でホーミングしていくとのこと。あくまで「ほとんど」確実、ホーミング速度より敵の動きが速ければ狙ったところからずれるらしい。


 スカイさんから【ターゲット】の説明を受けているうちに、ホムラとジェットさんで受けられる限りのクエストを受けたらしい。


 街の外へ向かう途中、スカイさんからの提案で今まで何やってたのかの詮索は控えることになった。私たち側からしてみればホテルのことは話しづらいのでよかった。おそらくジェットさんたちペアも言いたくないことがあるのだろう。さっき私に教えてくれたこともホムラには言いづらいだろうし。


 エイローを出てすぐには草原、そして草原を挟むように森林が二つある。草原の雑魚モンスターは鹿みたいな「ガゼリン」、やぎみたいな「カプラ」の二種類。


 討伐クエストは二人×2PTということで主に草原の雑魚モンスターを狩るタイプのものを受けている。


「俺はカプラを狩る、ナギはそいつらとガゼリンの方を狩れ、動きもそっちの方が素早いらしいから」


 ホムラに言われて私はガゼリンを狩ることとなった。


「どこを狙えばいいですか?」


 ガゼリンを狩れと言われたのはおそらく、動く相手にも当てられるように、ということだろう。


「足、足に当ててこかすことができれば、時々頭打ってスタン、つまり気絶状態になる」


 気絶状態を「スタン」、こけたり転んだりした状態を「ダウン」というらしい。どちらも「怯み」より長く敵の行動を封じることができるもので、それぞれ少し違う物みたい。


 狩りは順調に進む。私も足に当てることはできるようになってきた。ただこかすことまではできない。ジェットさんによるとタイミングの問題らしい。


「じゃあ、休憩しようか」


 ホムラが声をかけて休憩。みんなで地面に座り、食事をとりながら話をする。


「にしても、お前たちのメイン武器が気になるな」


 ホムラがジェットさんたちに質問する。狩りの間ジェットさんたちは、投擲武器はダガーを、しかしほとんどは投擲武器以外の物を投げて攻撃していた。


「ホムラの旦那でも秘密さ」


 いたずらっぽい笑顔でジェットさんが答える。


「あっそういえばホムラさん、使わない武器とかないですか? 寿命が来た武器とか俺たちが引き取りますよ」


 手をすり合わせながらスカイさんがホムラに言い寄る。


「買ってくれるならいいぞ? 高いがな」


 ホムラにそういわれて、悔しそうな顔をするスカイさん。


 そういえば来週のイベント内容がPVP大会ということが公表されている。噂では第一陣と第二陣向けで、第三陣にとってはつらいものになるとか。


 もしかしたら三人とも参加するつもりで、今は少しでも情報を得ようという戦いが三人の間で行われているのかもしれない。


 とりあえず和やかに時間が過ぎ、狩りを再開しようかという時だった。


「たぁすけぇてくれぇーーーーー!!!」


 どこからか助けを求める大きな声が聞こえる。


「なんだ?」


 声のする方をよく見ると四人のプレイヤー、何かに追われているらしいけど、草原にもかかわらず土煙を上げているためその姿がよくわからない。


「まじかよ!?」


 ジェットさんは何かの正体に気づいたらしい。


 一番速く逃げてきたプレイヤーがやってくる。


「おい、あれレイドボスだろ!?」


「あ、あんたら助けてくれ! クエスト受けてないからって感じで誰も助けてくれねぇんだ――っやば!」


 ジェットさんの質問に答えた後、追手が迫ってると見るやすぐさま走り去っていった。


 レイドボス――「バッファ朗」、草原と二つの森林にはそれぞれ一体ずつレイドボスが配置されている、そして草原エリアのレイドボスが「バッファ朗」。身体は二階建ての家ぐらい大きく、正面から見るとその大きな体のほとんどが見えないほど大きく四角い顔。角は上を向き、アンバランスな体形から考えるとおそらく角による攻撃はできそうにない。


 この辺のレイドボスはノンアクティブ。そして、エンカウントが切れるとHPが全回復する。


 プレイヤーが追われているということはエンカウントは切れてないと思うけど、彼らがどれほどHPを削っているのかわからない。


「助けてって、俺たち盾もヒーラーもいないんだけど」


「ホムラの旦那の意見は?」


「牛なら顔ガードがあるはずだ、それで動きを制限して、お前たちがいれば…勝算はあるか? 助けるぞ!」


「……レイドボスとなると出し惜しみできないな、ホムラの旦那には見せたくなかったんだが」


「俺はむしろホムラさんに俺たちの全力を見せつけたいけどな」


 ジェットさんは少し嫌そうに、スカイさんはウキウキしながら、どうやら戦うと決めたらしい。


――――――――――

NAME:ナギ

 【投擲】Lv30【STR上昇】Lv4【幸運】Lv20【SPD補正】Lv24【言語学】Lv32【視力】Lv16【】【】【】【】


 SP26


称号 ゴブリン族の友

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